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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
881/953

第881話

ジークが資料を見始めてからしばらくするとシュミットからの定期連絡の任務を受けたアノスとカルディナが屋敷を訪れた。

定期連絡はそれなりに時間がかかるようでクーと遊びたいカルディナはフォルムを訪れるなり、そわそわしている。

彼女の様子にアノスは眉間に深いしわを寄せており、カインはこのままではアノスとカルディナとの間でケンカになると考えたようでジークとフィーナにカルディナを連れて先に屋敷に戻っているように指示を出した。

屋敷に戻るなり、カルディナはクーを探して屋敷中を駆け回っているなか、ジークはカインから預かった資料をテーブルに広げてミレットを呼び、フィーナはもう働く気がないのかソファーに寝転がる。


「先日の儀式は成功したって事なんですよね?」


「そうみたいですけど、調べてみるとこの間の白い花の群生地とは成分が違うみたいなんですよね。カインがいろいろ画策した土地も成分はバラバラ、ただ……」


「土を入れ替えたところにも成分には変化があったみたいですね。でも、儀式の範囲内よりは小さいですね」


ミレットは資料を覗き込むと土地の成分に変化があった事を理解したようで表情をほころばせる。

ジークは森の奥で見つけた白い花が群生していた場所と成分が違う事を話し、今回の土地の成分が書かれた資料と並べた。

並べられた資料にミレットはすぐに状況を理解したようで小さいた後、首を傾げる。


「そうみたいなんですよ」


「それでカインは私とジークに今回の儀式で豊かになった土地で育てられる食物や薬の材料を探して欲しいと言う事ですか?」


「そうみたいです。それで、俺もいくつか考えたんですけど、フォルムで取引するとなるとガートランド商会の関係で難しいですし、ジオスでは取り寄せる事もできないと思うんですよね」


ミレットの疑問にジークは頷くと彼女は確認するようにジークに聞く。

ジークはいくつか考えている物があるようだが、ミレットの意見も聞きたいようで苦笑いを浮かべる。


「そうですね。ジークの言いたい事もわかります。レギアス様の伝手を使いたいって事ですね」


「はい。それで種とか見に行きませんか? 土地もいつまで持つかわからないなら、1回、2回くらいはしっかりと収穫したいですからね」


「それは良い考えですね」


彼の考えている事はミレットも理解できているようであり、笑顔で頷く。

彼女から賛成して貰えた事にジークはほっとしたのか表情を緩ませるとミレットをワームに誘う。

ミレットはその言葉に賛成すると資料を閉じた。


「……何をバカな事を言っているのですか?」


「何よ。ワームに行くくらい。良いじゃない。クーに嫌われているからってジークに当たるのは止めたら」


「別に当たっているつもりなどありませんわ」


その時、カルディナから逃げてきたクーが部屋に飛び込んでくると彼女から距離を取るためにフィーナの膝の上に乗る。

カルディナはクーを追いかけて部屋に入ってくるとジークとミレットの話が耳に入ったようで2人の考えは甘いと言いたいのかため息を吐いた。

彼女の言葉にフィーナは変な言いがかりは止めろとため息を吐くとクーの鼻先を指で撫でる。

フィーナからクー奪おうと考えているカルディナは彼女の言葉を鼻で笑うとフィーナとクーの隙をうかがうようにじりじりと距離を詰めて行く。


「カルディナ様、とりあえず、落ち着きませんか? 紅茶を淹れてきましたから」


「とりあえず、座りますか?」


「そうですね」


その時、人数分の紅茶とお茶菓子を運んできたノエルがカルディナに座るように言うとテーブルに紅茶を並べる。

ジークはカルディナの話が気になるようでミレットに視線で合図を送ると彼女は賛成したようで小さく頷くとソファーに腰を下ろす。

フィーナより、ジークの膝の上の方が良いようですぐに膝の上に飛び乗った。

クーを奪い取りたいカルディナはクーをじっと見つめながらソファーに腰を下ろし、彼女の様子にジークは困ったように頭をかく。


「それで、俺とミレットさんがワームに行かない方が良いって言うのはどう言う事だ?」


「答えてあげても良いですが、それには条件があります」


「クーの意思は俺にはどうしようもできないからな」


膝の上で鼻を鳴らし、クーはジークにかまって貰おうとする。

その様子にジークは苦笑いを浮かべてクーの鼻先を指で撫でるとカルディナがジークとミレットを止めた理由を聞く。

カルディナは視線を鋭くすると交換条件を出そうとするが今の彼女が考えている事など手に取るようにわかるようでジークはため息を吐いた。

クーはカルディナの相手などしたくないようでそっぽを向いてしまい、クーの態度にカルディナの表情は泣きそうになってしまう。


「ジークさん、あの……」


「言いたい事はわかるけどな。相手の気持ちも考えないから嫌われるのは俺にはどうしようもない」


「ジークは何度も、おっさんの娘に同じような事を言っているしね」


彼女の表情の変化にノエルはカルディナの気持ちもわかるようでジークの服を引っ張った。

ノエルの様子にジークは困ったように頭をかくとフィーナはカルディナの事など興味がないようでお茶菓子を頬張っている。


「そうなんだよな……俺もここまで嫌われるとは思っていなかった。フィーナでも嫌われてないのに」


「それ、どういう意味よ?」


「フィーナはクーちゃんの意思を尊重してくれますからね。カルディナ様もラース様になんでもうるさく言われたらイヤですよね?」


フィーナの言う通り、ジークも何度もカルディナとクーの関係改善に動いているのだが関係は悪化しているようにしか見えず、苦笑いを浮かべた。

彼の言葉にフィーナは何か引っかかったようで眉間にしわを寄せて、ジークの言葉の真意を聞こうとするとミレットが割って入り、彼女をいさめるとカルディナに言い聞かせるように声をかける。


「それはそうですけど……」


「これって、俺も前に言ったよな?」


「ジークさん、今は余計な事を言わない方が良いと思います」


ミレットに言われてしゅんとするカルディナだが、ジークはミレットと同じような事を言った記憶があるため、ノエルに確認するように聞く。

ノエルはカルディナの事はミレットに任せた方が良いと考えているようでジークに静かにするように言い、面倒事はミレットに任せようと決めたようでジークは小さく頷いた。


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