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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第88話

「お兄ちゃん、ありがとう」


「いや、気にしないで良いよ。それより、急いでても、周りには気を付けないとケガするぞ……ぐえっ!?」


ジークは女の子に注意をするとそのまま診療所を出て行こうとするが、ノエルは女の子の様子に何か感じたようでジークの服をつかみ、ジークの首が絞まった。


「いい気味」


「お兄ちゃん、大丈夫?」


その姿にフィーナは怒りが収まったようで楽しそうに笑い、女の子は心配そうな表情をする。


「ジ、ジークさん、すいません!?」


「ノエル、謝る前に手を放してやったらどうだ?」


ノエルはジークに慌てて謝るがその手は彼の服をつかんだままであり、ジークの顔色は青くなって行く。そんな2人の様子にリックはノエルにジークの服を放すように言う。


「す、すいません。ジークさん」


「……いや、良いよ。それより、時間もないから、行くぞ」


「待て。ジーク」


女の子がリックに話をしているなか、ジークは息を整えると診療所を出て行こうとするがリックが彼を呼び止める。


「何ですか? 俺は忙しいんですけど」


「こっちも忙しいんだ。どうやら、手が放せなくなりそうだからな。人手が必要だ」


「ジークさん」


女の子が持ってきた話は余程の事なのかリックは乱暴に頭をかくが、その表情は真剣そのものであり、ノエルは不安そうな表情でジークの服をつかむ。


「……で、俺達は何をしてきたら、良いんですか? と言うか、状況を話してください」


「そうだな。簡単に説明すると鉱山でまた、崩落があった。その中から毒ガスが出て、そのガスを吸い込んだ者が多数出ている。だから、それを解毒する治療薬になる薬草を取ってきて、直ぐに調合に入ってくれ」


「……簡単に毒ガスって言わないでくれます。わかってると思いますけど、毒系はそれに合ったものを使わないといけないんですから、大変なんですよ。それに調合するにしたって機材だってここにはないんだし」


リックは簡単な説明をするが、ジークに取ってはそんな説明では状況は理樹できないと眉間にしわを寄せた。


「無理は承知だ。取りあえず、患者の症状を確認してくるから、頼む」


「えーと、リックさん、今、ルッケルにいる冒険者で神聖魔法を使える人間はいないのかそれで解毒魔法を使える人間が居れば、持って来た精神力を回復させる薬を全部使う勢いで協力して貰おう。解毒魔法なら、毒の種類が特定できなくても時間が引き延ばせる」


リックは荷物をまとめると診療所を出て行こうとするが、ジークは現状では治療薬を扱うより、魔法で症状を抑えるのがベストだと提案する。


「それもわかっている。フィーナ、お前は領主のところは鉱山から誰かが言っていると思うから、ジルのところで冒険者に声をかけてこい」


「う、うん。わ、わかったわ」


リックはフィーナに指示を出すと、フィーナは状況が緊迫している事は察しているようで慌てて診療所を出て行く。


「ジ、ジークさん、わたしは何をしたら良いんでしょうか?」


「とりあえずは1度、鉱山に行くしかないだろ。無作為に薬草を集めて治療薬を調合する余裕なんかないだろうからな。リックさん、これとこれ、追加で持って行きますよ」


「あぁ。カギは任せるぞ。俺は先に行く」


ノエルは何をしたらいいのかわからないようで慌てているが、ジークは冷静に積載量を増やすと言い、薬品棚から必要かも知れない治療薬をカバンに詰めて行く。リックは診療所のカギを机に置くと女の子と一緒に診療所を出て行った。


「ノエル、言っておく。解毒魔法、使うなよ」


「ど、どうしてですか?」


ジークはリックと女の子の気配が診療所から消えるとノエルに魔法を使わないように釘を刺す。しかし、ノエルはその言葉の意味がわからずに驚きの声を上げる。


「決まってるだろ。魔族と人族では神聖魔法を聞きいれる神が違う。バレたら、ノエルが危ないのはわかるだろ」


「そうだとしても、助けられる人がいるんです。それなのに何もしないなんてわけにはいきません。わたしはドレイクです。ジークさん達人族に比べて魔力も多く身体に宿してます。その分、多くの人を助ける事が出来ます!!」


ジークはノエルの正体がばれてしまう事を危惧するが、ノエルは真っ直ぐとジークの瞳を見返して言い切った。


「多くの人を助けたいって言うノエルの考えは立派だよ。だけど、その一言で置いて行かれて犠牲になる人間だっている。理想を追いかけるまでにはいくつもの犠牲だって払わないといけない。その犠牲を払うのがノエルなら、ノエルの理想は叶わない。仮にノエルの魔法で多くの人間が助かったとしても、ノエルがドレイクと言う事実は、ノエルがドレイクだと知っている人間や知らなくても村で同じ時間を共にした人間達にもその矛先を向ける。極論だけど、ノエルは鉱山の人間を助けるために、村の人間を皆殺しにしても良いと言っているんだ」


「それは、それなら、わたしはどうしたら良いんですか? このままだと、あの子のお父さんだって死んでしまうかも知れないんです。それなのにわたしは何もできないんでしょうか?」


しかし、ジークはノエルの考えを甘いと言い切り、ノエルは顔を伏せてしまう。


「……ノエル、良いか。1人で抱え込もうとするな。俺達がやらないといけない事は毒ガスを吸った人間の治療だ。言い方は悪いけど、過程は後回し。魔法でも治療薬でも助かれば問題なし。って事だ。領主のアズさんには話が言ってるんだ。領主の私兵団も出てくるなら、神聖魔法の使い手だっている。それ以外にも鉱山の前は混乱しているだろうからな。他人の移動やケガの簡単な治療なら、神聖魔法ではなく、精霊魔法でも治療ができる。ノエルの仕事はそっち、わかったな」


「は、はい」


ジークはやる事なら他にもいくらでもあると捲くし立てるように言うとまとめた荷物を担ぎ、ノエルはジークの勢いに慌てて頷く。


「行くぞ。カギをかけるから、早く出ろ」


「わ、わかりました」


ジークは診療所にかけると2人で鉱山に向かって歩き出す。


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