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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
879/953

第879話

「それで、セスさんとかに働かせて領主様は休憩か?」


「ジーク、言葉に棘があるよ……普通に休憩」


シーマからの評価に納得が行かないジークは原因とも言えるカインにこの場にきた理由を聞く。

彼の態度にカインは苦笑いを浮かべると食事を中断して1つ咳をする。

その様子にカインが真面目な話をするのではないかと考えた面々は息を飲むがカインは本当に休憩しに来たようで困ったように頭をかいた。


「……おい。勿体付けておいてそれかよ」


「それ通って言われても元々、休憩のつもりでここに来たんだし、言われても困るよね。後、食事休憩はセス達には交代で先に済ませて貰っているよ。俺が最後」


「休憩のつもり? ……やはりそうですか」


何もないと聞いたジークは大きく肩を落とすがカインは自分のせいではないと言った後、セス達の事も簡単に話す。

セス達の休憩が無事に終わっている事にノエルはほっとしたのか胸をなで下ろしているが、その隣でシーマは何かあるのかカインを睨み付けた。


「……だから、どうして、俺を睨むのかな?」


「あなたのような性根が腐った人間の休憩と言う事は手に入れた私の弱みを使って私をからかって遊ぶと言う事でしょう?」


「それは被害妄想が大きすぎませんか?」


彼女に睨みつけられる理由に心当たりがないカインは大きく肩を落とすがシーマは自分の弱みを握られた事を屈辱と思っているようでカインを指差して言う。

その言い分には無理があり、ミレットは困ったように笑うと彼女を落ち着かせようとするがシーマは完全に卑屈になっているようで首を横に振っている。


「何度も言うけど、俺は料理ができる事を弱点だとは思ってないよ。苦手だったら、努力して覚えたらくらいは言うけど」


「フィーナさんの時もそうでしたね」


「そうだな……ノエル、そう言えば、フィーナはどうした?」


カインは言いがかりだと肩を落とすとノエルはフィーナが料理を覚える以前のカインの言葉を思いだしたようで苦笑いを浮かべた。

ノエルの言葉にジークは同意するように頷いた時、フィーナがいない事に気が付く。


「フィーナさんなら、食事ができてすぐに他の場所で食べるって言ってどこかに行ってしまいましたけど」


「そうか……飯を食ったからすぐに逃げないと後片付けを手伝わされると思って逃げたな」


「その可能性はあるかもね……」


ジークの疑問にノエルが答えるとジークはフィーナが逃げたと考えて頭をかいた。

カインもジークと同様にフィーナが逃走したと判断したように困ったように笑うが何かを思いだしたのか首を捻る。


「どうかしましたか?」


「えーと、シーマには言い難いんだけど、フィーナが夜食を作ったのは誰と聞かれてシーマって答えていたような」


「シーマさん、少し落ち着きましょうか。深呼吸は大切ですよ」


彼の様子に何かイヤな予感がしたようでノエルは恐る恐る聞く。

カインはバツが悪そうに鼻先を指でかくとここに来る途中で見たフィーナの行動を思いだしたようで苦笑いを浮かべた。

彼の口から聞かされたフィーナの行動にシーマは奇声を上げて顔を真っ青にした後、怒りが込み上げてきたようで顔を真っ赤にすると杖を握り締めてゆっくりと立ち上がる。

彼女の様子にこのままでは惨劇が起きてしまうと考えたミレットはシーマの腕をつかむ。


「……放してください」


「今、放すのは危険だと思うのでその言葉には頷けません」


「シーマも落ち着きなよ。何度も言うけど悪い事じゃないんだし、それにここまで知られちゃうと全員の口を塞ぐ事はできないからフォルム内にはすぐに広がるよ。正直、もう手遅れだし、諦めた方が良いよ」


シーマはミレットへと視線を向けて放すように言うが、その瞳は笑っておらず、さすがのミレットも今の彼女を野放しにするわけにはいかないと思ったようで首を横に振った。

ジークとノエルは不味い事になったと考えてカインに助けを求めるような視線を向ける。

原因が妹であるフィーナと言う事もあり、カインは頭をかくとシーマを落ち着かせようと声をかけるが、それは実質、弱みが知られてしまった彼女への死刑宣告にも聞こえた。

その言葉にシーマは膝から崩れ落ちてしまい、呆然としている。


「……お前、ひどい奴だな」


「そんな事を言われたってどうしようもないよ。それに思いだしたんだけど、シーマはシュミット様の屋敷にメイドとして潜入していた事もあるんだから、ある程度の事はできるだろ」


「そう言えば、そうだったな……シーマさんのメイド姿か」


膝から崩れ落ちてしまったシーマの様子にジークは止めを刺したカインを責めるように言う。

カインは責められる理由がわからないとため息を吐いた後、彼女がシュミットの屋敷に潜入していた事を思いだしたようで不思議な事ではないと答える。

彼に言われてジークは思いだしたようで苦笑いを浮かべるとシーマへと視線を移すが、シュミットの屋敷に潜入していた彼女の姿が想像できなかったのか首を傾げた。


「ジーク、鼻の下」


「伸びていないから、想像できないなと思っただけだよ……ちょっと、待ってください!? 俺、おかしな事を言いましたか?」


カインは彼をからかうように笑うとジークがため息を吐くがそれはシーマにとっては追加攻撃と変わらなかったようで彼女の顔からは血の気が引いて行く。

彼女の様子にジークは慌てるがシーマの反応は弱々しく、ふらふらと立ち上がると半泣きで部屋から出て行ってしまう。

意味がわからずに驚きの声を上げるジークだが、非難の視線は彼に集まっており、どうしていいかわからないジークは乱暴に頭をかいた。


「ジークがシーマをいじめた」


「お、俺が悪いのか?」


「とりあえず、悪いかどうかは置いておいて、シーマを送ってきてよ。あのままだと怪我しそうだし、ノエルとミレットも今日は帰って大丈夫だよ。後片付けは他の人に頼むから」


カインはわざとらしく、シーマが落ち込んだのはジークのせいだと言うものの彼女を1人で帰すのは危険と判断したようで3人に今日はもう帰って良いと指示を出す。

その指示にミレットはすぐに頷くとジークとノエルの手を引っ張ってシーマを追いかけて行く。


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