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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第877話

「ジークさん、お疲れ様です」


「ああ……なんか良い匂いがするな」


「みなさん、忙しく働いてくれていましたから、ミレットさんが夜食を作ろうって」


土を集め終えたジーク達は前領主の屋敷に向かった。

玄関のドアを開けるとノエルが出迎えてくれ、ジークは笑顔を見せると彼の鼻には食欲をそそる匂いが届き、お腹が鳴る。

その音にノエルはくすくすと笑うと着替えを終えてから夜食を作っていたと言う。


「確かにお腹減ったね」


「そうですね」


「……ノエル、ミレットさんは大丈夫か? 結構、酒を飲んでいただろ。手とか切ってないか?」


カインとセスだけではなく、土をここまで運んできてくれた領民達も遅くまで働いてくれた事もあり、空腹のようでノエルの言葉に笑顔を見せる。

しかし、ジークはミレットが飲酒をしていた事もあり、不安な事があると眉間にしわを寄せた。


「だ、大丈夫ですよ。ミレットさんですよ」


「……それなら、どうして声が震えているんだ?」


「何か問題が起きたんですか?」


ジークの言葉にノエルは心配ないと首を大きく横に振るが、彼女の声は震えている。

ノエルの様子にキッチンで何かあったと感じ取ったジークの眉間のしわはさらに深くなり、セスは追及するように彼女との距離を詰めた。


「セス、落ち着く。ノエルはミレットには問題ないって言っているんだから、問題は他にあったんでしょ」


「他に問題? ……想像がつかない」


「本当に? いるでしょ。俺達が実力を知らない人が1人」


ジークとセスの反応は手伝いに動いていてくれた領民達の不安をあおり、彼らは家に帰ろうかと言う相談を始め出す。

その様子にカインは小さくため息を吐くと状況がジークやセスより理解しているようで2人に落ち着くように言うと彼女の腕をつかみ引き寄せる。

他の問題と聞いて予想がつかないようでジークは頭をかくとカインはもう1度、考えてみるように言う。


「……シーマさんって料理できるのか?」


「……私は見た事がありませんね」


「シーマさんって今、1人暮らしだよな?」


しばらく考えたジークの頭は1つの答えを導き出し、周囲の人間達に問いかけるように聞く。

セスを皮切りに領民達は声を上げるが誰もシーマの料理の腕を知らないようで大きく首を横に振っている。

誰からも正確な情報が得られない事にジークの不安は大きくなって行くがその不安を振り払うように彼女が1人で生活している事を根拠にして良い方向に捉えようと大きく頷いた。


「1人じゃないよ。一応は捕虜扱いだからね。フォトンに監視して貰っているよ」


「……今更だけどずいぶんと緩い監視だな」


「そんな事を言っても、誰もシーマにぎちぎちの監視をしたいって言わないだろ。お人好し勢ぞろいなんだから」


カインは彼女の監視にフォトンを付けていると言うが、それは実際監視とは言えない物であり、ジークは眉間に深いしわを寄せる。

彼の反応にカインは小さくため息を吐くとジークに向かい、シーマを完全に敵として認識できるかと聞く。

その質問はジークには答えにくい物であり、困ったように笑うが彼の態度からはシーマを敵として見られない事は一目瞭然である。

カインはそれを責める事無く、キッチンの様子を見に行こうと思ったのかセスと領民達に指示を出した後、歩き出す。

ジークもキッチンが気になるようでセスに頭を下げるとノエルと一緒にカインの後を続いて行く。


「……これは予想していなかったな」


「何だろうね。この空気」


「良い匂い。ノエル、ミレットさん、お腹減った……何この光景? 偽者?」


キッチンのドアを開けるとジーク達が想像していた惨劇とは真逆の光景が広がっている。

シーマは可愛いエプロンをかけ、鼻歌交じりでミレットとともにキッチンに並んで料理を作っており、ジークは眉間にしわを寄せ、カインは苦笑いを浮かべた。

その時、カインの口車に乗せられたフィーナが着替えを終えてこの屋敷に到着したようで匂いに釣られて一直線にキッチンに顔を出す。

ジーク達の背後からキッチンの中を覗いたフィーナは今まで見た事の無いシーマの様子にすぐに怪訝そうな表情をしてジークの肩をつかみ、聞く。


「フィーナさん、失礼ですよ。シーマさん、とてもお料理が上手です……ただ、この空気には少し耐え切れませんでした」


「ノエルがここまで言うなんてよっぽどの破壊力だったんだね」


「……ミレットさんもお酒飲んでいるからな。いつもより、テンション高めだからな」


彼女の質問にどこか遠い目をしたノエルが答えるとカインは苦笑いを浮かべる。

ジークは目の前で繰り広げられている光景にどうして良いのか判断しかねているようで眉間にしわを寄せるとどうにかしろと言いたいようでカインへと視線を向けた。


「フィーナ行け」


「私? 何でよ。あんなところは無理よ。巻き込まれたくないわ」


「良いか。フィーナ、耳を貸せ」


カインもこのキッチンに突撃するのは若干ためらわれたようでフィーナに押し付けようと考えたようで彼女を呼ぶ。

すぐにフィーナは遠慮したいと首を横に振るがすでにカインには彼女に押し付けるまでの道筋ができているようである。

カインの表情に怪訝そうな表情をするフィーナだがキッチンの空気をどうにかしなければ食事にはありつけないため、警戒しながらもカインに近づく。


「……何を話しているんでしょうね?」


「気にするな。どうせ、ろくでもない事だから」


「行ってくるわ」


カインとフィーナの内緒話にノエルは不安しか感じないようで眉間にしわを寄せる。

ジークは気にするだけ負けだと考えているようでため息を吐くとカインに何かを吹き込まれたフィーナは笑顔でキッチンに入りシーマの背後に近づいて行く。


「……お前、何を吹き込んだ?」


「吹き込んだなんて聞こえが悪い事を言わないで欲しいね。ただ、周りが見えなくなっている時に冷静な人間に指摘されるとすごく恥ずかしいだろうねって、特に今まで俺達が見てないって事はシーマは見せないようにしていたって事だから、言い方を変えればこの姿はシーマの弱みだって、俺が指摘しても良かったんだけどフィーナが相手の方が屈辱的かなと思って」


「そうか……」


楽しそうにフィーナの背中にジークはカインへと視線を向ける。

カインが楽しそうな笑みを浮かべて言い、ジークが大きく肩を落とした時、フィーナがシーマの肩を叩き、彼女が振り返った。

彼女の視線にはフィーナだけではなく、ジークとカインの姿も映り、見られたくない姿を見られたくない人間に見られたシーマは悲鳴を上げる。


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