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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第874話

「……入って行き難いな」


「そうですね……でも、他の方に迷惑をかけるわけにもいきませんから」


ジークとレインはノエル達のいる人だかりの中を覗き込むと5人は酔っぱらいに絡まれており、フィーナとシーマの額には青筋が浮かんでいる。

ここで彼女達に声をかけると2人に絡まれる事は目に見えており、ジークは人だかりの中に入るのをためらったようでため息を吐いた。

レインも同じ事を考えたようだがケンカになる前に場を収めようと考えたようでため息を吐いた後、人だかりをかき分けて進んで行き、ジークは面倒だと言いたげに頭をかくと彼の後を追いかける。


「……」


「フィ、フィーナさん、落ち着きましょう。怒ってはダメです」


「フィーナ、そこまでにしろ。セスさん、カインが調べたい事があるから手伝ってくれって」


ジークとレインが中央に到着する前にフィーナは我慢に限界がきたようで剣へと手を伸ばす。

それに気が付いたノエルは彼女に声をかけるがフィーナの目は完全に座っており、ノエルは助けを探そうと周囲を見回し、ジークと目が合う。

ノエルの視線に気が付いたジークは人だかりをかき分けてフィーナの手をつかみ、フィーナは怒りが収まらないため、ジークを睨み付ける。


「ジーク、レイン」


「セスさん、ジークが言った通り、カインから応援要請が出ています」


「そうですか。酒宴も始まりましたし、精霊達を楽しませるのはこのままでも問題ないと思いますね。私達も撤退しましょう」


ジークの後からレインが付いてきた事に気が付いたセスは2人に声をかけた。

レインはフィーナから睨まれているジークを見て苦笑いを浮かべた後、カインから新しい指示が出ている事を話す。

セスも民達のバカ騒ぎにはうんざりしていたようですぐに撤退の指示を出し始める。

女性陣が居なくなってしまう事に酒盛りをしていた者達は不満の声を上げるが、セスは聞く耳など持つ気はなく、酒盛りに混じる事無く儀式の手伝いをしてくれていた民達にも礼を言う。


「ジーク、レイン、私はこちらの撤退指示を終わらせてから戻りますから、フィーナとシーマさんをお願いします」


「わかりました。フィーナ、シーマさんも行きますよ。ノエル、ミレットさん? ……ミレットさん、1番最初に連れ出すべきだったか?」


「お姉ちゃんは大丈夫ですよ。帰りましょうか」


セスはフィーナとシーマがキレる前にこの場所から2人を連れ出せと指示を飛ばす。

ジークはフィーナの手を引っ張り、他の3人にも声をかけようとした時、ミレットで視線を止める。

彼女はすでに酒宴に混じっていたようでミレットの足元には酒樽とともに男性が5人ほど転がっており、ジークは眉間に深いしわを寄せた。

ジークに呼ばれてミレットは笑顔で手を振りながら彼へと駆け寄って来はじめ、普段、見る事の少ない彼女の様子にフィーナは少しだけ冷静になったようで眉間にしわを寄せる。


「……お姉ちゃん?」


「……言うな。シーマさんも行きましょう」


「わかりました。ここに居るよりは悪徳領主の手伝いをした方がマシですから」


フィーナは戸惑いを隠せずにジークへと視線を向けた。

ジークも自分では対処しようがないため、首を横に振るとシーマにもう1度、声をかける。

シーマも先日、酒を飲まされた事で酒に対する抵抗があるため、カインの指示に従うと頷く。


「ジークさん、行きましょう」


「そうだな」


ミレットはジークの前まで移動すると楽しそうに彼の顔を見上げた後、ジークの腕に抱き付いた。

その様子にノエルは慌ててミレットを引き離すと彼女が抱き付いていた腕にノエルが抱き付き直すとジークの腕を引っ張る。

彼女の様子にジークは苦笑いを浮かべるとミレットは不満そうに口を尖らせた後、ノエルが抱き付いている腕とは反対側に抱き付く。

ミレットの様子にその様子を見ていた男どもは不満の声を上げ、ノエルは驚きの表情をするがジークはため息を吐くと2人を腕に付けたまま、人だかりから出て行こうと歩き出す。


「……ジーク、あんた、良い身分ね」


「そんな事を言われたってどうしようもないだろ。それより、早く行くぞ。ここも面倒だけど、あんまり遅くなるとカインに何を言われるかわからない」


彼の背後にフィーナは移動するとジークの今の状況を見てからかうように笑う。

その言葉にジークは面倒だとため息を吐くが、彼のため息が周囲の男連中の不満の声を大きくする。

周囲に文句を言われようが、ジークにはどうにもできないため、眉間にしわを寄せるとカインの名前を出す。


「……そうですね。シーマさん、フィーナさんも行きましょう」


「……レイン、あんたも良い身分ね」


「フィーナさん、レインさんは良い身分ですよ。ファクト家の跡取りなんですから」


レインは賛成だと手を上げるが、彼はフォルムの若い女性達に囲まれており、助けを求めるように言う。

その様子にフィーナは大きく肩を落とすとミレットは仕方ないと言いたいようでくすくすと笑っている。


「確かに……面倒だから、さっさと身を固めなさいよ。そうすれば私も変にケンカを売られる必要も無くなるし」


「ま、待ってください。フィーナさん、助けてください!?」


「フィーナさんが助けてくれないのはレインに問題があると思いますけどね」


フィーナはフォルムの若い女性陣にレインの事で絡まれる事が多いため、彼を取り囲んでいる女性陣から伴侶を選んでしまえば良いと言うと人だかりをかき分けて行く。

彼女の背中にレインは慌てて手を伸ばすが、彼を囲んでいた女性達に完全に捕まってしまったようで浚われて行ってしまう。

レインの悲鳴にも似た声が響くとその声にミレットは楽しそうに笑っており、その言葉にシーマは呆れたような表情で頷いた。


「ミレットさん、シーマさん、それってどういう事ですか?」


「ジークはノエルだけ見てないでもう少しいろいろな物を見た方が良いですね」


「自分で考えなさい……放してください」


ミレットとシーマの様子に意味がわからずに首を傾げるジークだが、2人は自分で考える事だと言うとミレットはジークの腕から手を放すとシーマの腕に抱き付く。

彼女の行動にシーマは呆れたような口調で言うが、払う事はなく、2人はジークとノエルを置いて先を行ってしまう。


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