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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
871/953

第871話

「特等席だな」


「そうですね」


ジークがカインに指定された場所に移動したジークは首位を見回すとテッドの言っていた通り、ノエル達女性陣が集まっている儀式の中央と思われる場所が良く見える。

ノエルはジークとテッドに気が付き、大きく手を振るとジークは少し照れくさそうに手を振り返し、2人の様子にテッドは優しげな笑みを浮かべた。


「ジークさん、テッド先生」


「えーと、確か……タニアさんでしたっけ?」


「そうです。それで、今回は何の騒ぎなんですか?」


視線の先のノエルはミレットとシーマに呼ばれたようで2人と話を始め出してしまったため、ジークがテッドへと視線を戻した時、2人を呼ぶ声が聞こえる。

その声にジークが振り返るとそこには以前、リアーナに紹介して貰ったタニアと言う名の青年が立っているのだが、記憶があいまいのようでジークは気まずそうに笑って名前を確認する。

タニアは頷くと中央にいるノエル達へと視線を向けた後、騒ぎの原因を知らないようで彼女達を指差して聞く。


「今回はって言うのが引っかかりますね」


「カイン様は皆さんがバカ騒ぎをしても別に止めませんからね」


「それは酒を飲ませられてくたばっているんじゃないですか?」


タニアの質問に答えるより先にフォルムの住人がいつもバカ騒ぎしているように見られていると思ったようでジークは眉間にしわを寄せる。

テッドはカインが民を弾圧するような人間では無いと笑うがジークは巨大蛇の騒ぎの時に酒を飲まされて潰れている彼の姿が目に浮かんだようで大きく肩を落とした。


「領主様はお酒が苦手なんですか?」


「自分では飲まないな。無理やり、飲まされてたまにくたばっている」


「それは領地運営に問題が出てくるんじゃないですか?」


自分の質問が無視されているのだがタニアは怒る事無く2人の話に耳を傾けており、カインの弱点を聞いて苦笑いを浮かべる。

ジークは困ったように笑って答えるとタニアは領地運営が心配だと思ったようで眉間に深いしわを寄せた。


「セスさんとかシーマさんもいるし、その辺は心配ないと思いますけど」


「領主様でお酒をたしなむ方は多いですから、そこまで気にする事ではないと思いますよ」


「それもそうですね。ザガードにもそのような領主はいましたね」


ジークはカインがつぶれていても彼が復活するまでくらいなら、どうにでもなるのではないかと首を捻る。

テッドは心配し過ぎだと笑うとタニアは苦笑いを浮かべて頷いた。


「それで、この騒ぎは何なのですか? 領主様が懇意にしている方達で何かするんですか?」


「ああ、ちょっと、便利な魔導機器が見つかって試して見ようって話になって……人が集まってきた事に関しては俺に言われても困る」


「便利な魔導機器ですか? どのような物なんですか?」


会話の話題が少し途切れてしまい、タニアは中央にいるノエル達を指差してこの騒ぎについて改めて聞く。

ジークは首にかけてある首飾りを手に取り、怪訝そうな表情で質問に答えるとタニアは魔導機器に興味があるようで首を傾げた。


「土地を豊かにできるらしい」


「そんなすごい物があるのですか? ……あまり信じて居なさそうですね」


「俺は魔法の事はよく解からないから、本当にそんな事ができるか半信半疑なんですよ」


ジークは誰が聞いているかわからないためカインに指示された通りに答えるのだが、そこまでやる必要を感じていないため怪訝そうな表情をしている。

彼の表情に苦笑いを浮かべながらもタニアはこれから行われる事が凄い事だと言う。

ジークは魔吸石に魔力がしっかりとため込まれているか、魔導機器の修理が終わっているかなど今回の儀式が結果を出せるか疑わしく思っているようで怪訝そうな表情のまま、首飾りを見つめている。


「ジークくん、始まるみたいですよ。準備をした方が良いんじゃないでしょうか?」


「へ? は、はい。ちょっと、離れて貰っても良いですか?」


その時、カインの指示を受けたのか、ジークの顔見知りの住人が現れて準備に移るように言う。

考え事をしていたためか、ジークは話が聞こえていなかったようでそれに気が付いたテッドは彼の肩を叩く。

肩を叩かれたジークは慌てて中央へと視線を向けるとノエル達は5人が向かい合うように立っている。

その中心には本命の魔導機器が有ると推測されるが、ジークは周囲に真実がばれないようにとテッドとタニアに下がって欲しいと頼む。

2人は儀式の邪魔をしてはいけないと思ったようで頷くとジークの背後に下がり、ジークが再び、ノエル達がいる中央へと視線を向けた、夜空に小さな光が舞い始める。

その様子に住民達は歓声を上げるがこれはまだ儀式の最初であり、オクス達が儀式の邪魔をしないようにと指示を出している声が響く。


「今日はオクスさん達、ちゃんと働いてくれているな……問題は終わってからだろうけど」


その声にジークが苦笑いを浮かべた時、首飾りが緑色に輝き始める。

首飾りは偽物と聞いていたため、ジークは怪訝そうな表情をするが、また、カインが何か仕掛けているのだとすぐに考え直し、目を閉じると精霊達の声に耳を傾け出す。

彼が行動に移ると緑の光を放っていた首飾りの光は強く光りを上げて、ジークの足元からは小さな魔法陣が浮かび上がり、光の柱が彼の身体を包む。

この光の柱はジークだけではなく、カイン、アーカス、レイン、フォトンにも起きているようで空には5つの光の柱が浮かび上がった。


「……ジーク、もう目を開けて良いよ」


「そうか? これ、何だ?」


光の柱が浮かび上がった事でジーク達の仕事は終わったようでカインの使い魔である小鳥が彼の頭の上に降り立つ。

カインの声を聞き、ジークは目を開くと自分の身体を光の柱が包んでいる事に気づき、驚きの声を上げた。

その時、ジークの足元に有った魔法陣に地面を伝って光が流れ込んで行き、ジークの足元の魔法陣でしばらく光は止まった後、中央に向かい光が伸びて行く。

他の4カ所でも同様の現象が起きているのか中央にいるノエル達に光が集まり、輝きを放ち始めるがしばらくすると光は弾け飛び、光は雨のように大地に降り注ぐとすぐに大地の中に溶け込んで行ってしまう。


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