第87話
「って事になりました」
「そうか」
ジーク達はリックの診療所に顔を出して、アズとの間で交わされた話をする。
「何か、反応が薄いですね」
「あぁ。お前らが来る前に領主様の使いがきてたからな」
「……説明損じゃないか」
すでにアズのところから使者が来ており、ジークの説明は無駄であり、ジークは眉間にしわを寄せた。
「それで、良い鉱石は見つかったのか?」
「まぁ、無難な所って感じですね。本当はミスリル銀とかが欲しかったけど」
「……そんなものはルッケルでは採掘できん。それにお前はそんな加工するのに手間のかかる鉱石を使って魔導銃を修理できるのか?」
ジークの求めている鉱石はかなり貴重な上、加工するにも手間がかかるようであり、リックは呆れ顔で聞く。
「いや、ミスリルは合金にするといろんな力を付加できるとも聞いたことあるし、アーカスさんなら、何とかなるんじゃないかなって、それに一般的な鉱石を使ってまた壊れたじゃ、面倒ですしね。と言うか、無い物をねだっても仕方ないんですよね」
「確かにそうだ」
ジークは希望を語っても仕方ないと頭をかき、リックは頷く。
「それじゃあ、話は伝わってるみたいだから、俺とノエルは行きますよ。大口の取引なんで、材料集めに精を出さないといけないですしね」
「リックさん、失礼しました」
「待て。これは連れて行かないのか?」
ジークとノエルは診療所を出て行こうとするが、リックはフィーナが頭数に入っていない事に首を傾げた。
「フィーナがいると貴重な材料とかも平気で踏みつぶしそうだから、採取に付いてこられても困る」
「それは納得するが、こんなのを置いて行かれても邪魔だ。連れて行け」
「いや、元々、俺達はフィーナと別行動なんで」
ジークとリックはフィーナがいると仕事の邪魔でしかないようでお互いになすりつけ合いを始め出し、2人の様子にフィーナのこめかみにはぴくぴくと青筋が浮かんで行く。
「あ、あの。ジークさん、フィーナさんにも手伝って貰いましょう。ほら、わたしもジークさんも後衛ですし、やっぱり、前衛で戦える人がいないと」
「ノエル、良いか。ジークは後衛だと言っているだけだ。実際、1人でこの近辺で薬の材料を集めて回ってたたんだからな。フィーナのような足手まといはいない方が良い」
フィーナの表情にノエルは慌てて、話をまとめようとするが、リックは彼女の気づかいを平然と払いのけた。
「あ、あの。ジークさん、フィーナさんの扱いってこれで良いんですか?」
「前も行っただろ。基本的に口先だけで連携も何もできたものじゃないから、当然の評価だ。ノエル、時間もないから、行くぞ」
ノエルはどう対応して良いのかわからないようで顔を引きつらせる。しかし、ジークは気にする事はなく、診療所を出て行こうとする。
「先生、お父さんを助けて、ふぇっ!?」
「っと、大丈夫か?」
その時、小さな女の子が診療所の診察室に勢いよく駆け込んでくるが、前のめりに倒れそうになり、ジークは女の子の身体を支える。