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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
868/953

第868話

「……カイン、1つ聞いて良いか?」


「時間がないから、後にして欲しいかな」


「何で、こんなに人が集まっているんだ?」


魔導機器の実験を行う場所はカインとセスが候補を立てており、その中で経過観察がしやすい町外れを選んだ。

実験と言う事でジーク達は今日である必要はないと考えていたのだが、アーカスが言うには今晩は精霊達の動きが活発らしく、すぐに準備を始めるとジーク達が何かをやっているのを見て民達が集まり始める。

領主であるカインが動いている様子に積極的に手伝ってくれる人間も多いが、それを見世物にしてお酒を飲もうとしている人間も多いようでちょっとした騒ぎになり出す。

その様子にジークは眉間にしわを寄せるとカインに場を収めさせようとするが、カインは酒の席に近づきたくない事もあり、手伝いに来てくれている人達に指示を飛ばしている。

それでも、ジークは言わないといけないと思ったようでバカ騒ぎをしている人間達を指差した。


「俺に聞かないでよ。それより、遊んでいる時間は無いよ。これに合わせてアーカスさんも精霊達の力を魔吸石に込めてきたんだから」


「それなんだけど、精霊達が活発に動く時間があるなら、その時に魔吸石に魔力をため込めば良かったんじゃないのか?」


「場所によってわずかに時間に差があるんです。フォルムより、ジオスの方が早く精霊達の動きが活発になります」


カインはため息を吐くと時間がないと言い、ジークに急ぐように言う。

精霊達の動きが活発になる時間があると聞いたジークは、首を傾げならふと頭によぎった疑問を口に出すと彼の疑問に背後から近付いてきていたセスが答えてくれる。


「そうなんですか? ……」


「……どうして、黙るんですか?」


「いや、セスさんがそんな格好するとは思っていなかったので」


彼女の言葉にジークが振り返るとセスはなぜか生地が少なめの踊り子のような服装をしており、普段、見る事の無い彼女の姿にジークは眉間にしわを寄せた。

セスも自分の格好が恥ずかしいようで顔は少し赤らんでおり、ジークは彼女の反応に困ったように笑う。


「仕方ないでしょう。私だって、こんな格好などしたくはないんですが、精霊に力を借りるのであれば簡易的な術式でやるよりはしっかりとした物でやった方が良いですから」


「そうなんですか? ……カイン、お前、セスさんをだましてないよな?」


「だましてないよ。人族や魔族は精霊達に力を借りる時は踊りや歌をささげるのは昔からある事だよ。俺の趣味じゃないよ」


セスはこの衣装には意味がある事は理解しているのだが納得はできていないようでカインを睨み付ける。

彼女の様子にジークはカインがろくでもない事を企んでいると思ったようで彼へと疑いの視線を向けるとカインは必要な儀式だと言いながらも、彼女の衣装は自分の趣味ではないと強調して言う。


「……嘘くさいな」


「別に嘘くさくても、役得だし、良いんじゃない?」


「それに関して言えば、否定しない」


強調された事が逆に胡散臭く聞こえたようでジークの大きく肩を落とす。

彼の様子にカインは苦笑いを浮かべた後、ジークの後ろ側を指差し、振り返るように言う。

ジークが振り返るとセスと同様な衣装に身を包んだノエル、フィーナ、ミレット、シーマがこちらに向かって歩いてきており、ノエルはジークとカインの視線に気が付くと慌てて、フィーナの後ろに隠れてしまう。


「なんで、私がこんな格好をしないといけないのよ?」


「人手が足りないから」


「それはわかりましたけど、ノエルとシーマさんはわかりますけど、私もフィーナも魔法を使えないですよ」


フィーナはカインを見つけるなり、彼を睨みつけるがカインは軽い口調で流す。

2人の様子にミレットはくすくすと笑った後、自分とフィーナは人選的に間違っているのではないかと首を捻る。


「大丈夫だよ。そう言うのは周りで補うから、必要なのは若くて可愛い女の子」


「……そう言い切られると精霊ってただのスケベだって聞こえるな」


「確かにそうね」


カインはまったく問題ないと言い切るとジークは何か微妙に納得が行かないのか眉間にしわを寄せた。

フィーナは可愛い女の子と言われた事で気分が良いようだが、ジークと同様に何かが引っかかるようで大きく肩を落とす。


「とりあえず、納得は出来ました。ですが、歌や踊りが必要とセスさんから聞きましたけど……踊れるんですか?」


「……そこが問題だよね」


「わ、わたし、そんなに鈍くないです!?」


ミレットは魔法が使えなくても問題ない事は納得したようで小さく頷くが、踊りと聞き、ノエルの運動神経の無さが気になったようで彼女を指差して聞く。

彼女の質問にカインは大きく肩を落とすとノエルは声を上げて自分は鈍くないと主張するが、彼女を見守る人達の視線は生温かい。


「ノエルはとりあえず、歌で頑張りましょうね」


「だ、大丈夫です。踊りでも頑張ります!!」


「……その恰好でひっくり返りでもしたら、大変ですから止めてください。巻き添えはごめんですから」


ミレットはノエルに向かい事実上の戦力外通知を出すとノエルは踊りも頑張ると拳を握り締める。

しかし、シーマは彼女に足を引っ張られて、醜態をさらしたくないようでため息を吐くと相手をしていられないと言いたいのか歩いて行ってしまう。


「ジークさん、わたし、踊りもできますよ!?」


「無理しなくて良いから、それより、踊りって練習しなくて良いのか?」


「別に合わせて踊れって言うわけじゃないしね。フィーナは剣を持って演武でも良いわけだよ。必要なのは精霊達を楽しませてこの場に集める事だからね。その間に俺達は魔法陣を引いて精霊達から力を貸して貰うんだからね。ジーク、そっちの打ち合わせもしないといけないから、こっちに来て」


ノエルはジークにだけは味方して欲しいようで彼に詰め寄るが、彼女の運動神経の無さをこの中で誰よりも知っているジークは目をそらすとカインに話を振る。

カインは2人の様子に楽しそうに笑うとあくまでやって貰うのは余興であると言うとジークについて来いと言って歩き出し、ジークは彼の後を追いかけて行く。


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