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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
866/953

第866話

「上手く行ったんですか?」


「とりあえず、なんか、光った後に魔吸石に力が流れた感じだったわよ」


ノエルはゆっくりと目を開けると精霊達が見えなくなっている。

キョロキョロと周囲を見回してフィーナに状況を確認するのだが、フィーナは何かあったのか懐から魔導機器を取り出して考え込んでいる。


「……フィーナ、お前、見ていたんじゃないのかよ?」


「うっさいわね。ちょっと、黙ってなさいよ」


「アーカスさん、魔吸石に精霊達の力を込める事はできたんですか?」


ノエルとフィーナの会話が聞こえたため、ジークは目を開くとフィーナの言い方にため息を吐く。

しかし、彼女には彼女なりの何かがあるようでジークに黙るように言うと真剣な表情で魔導機器を手に唸り声を上げており、フィーナの様子に追及してはいけないと思ったのかフォトンはアーカスに声をかける。


「……」


「……話を聞かない人ですね」


「すいません」


フォトンの声を聞く事無く、アーカスは部屋の中央に置いてあった魔吸石の元に歩き出す。

彼の様子にシーマは大きなため息を吐くとノエルがなぜかアーカスの代わりに頭を下げる。


「……ふむ」


「どうなんですか?」


「……わからないのなら、無理は止めてはどうですか?」


アーカスは魔吸石を拾い上げて覗き込む。

ジークはアーカスの隣に移動するとアーカスの手の中にある魔吸石を見るが、良くわからないようで首を捻った。

彼の様子にシーマは呆れたように言うとジークは気まずそうに笑う。


「長くなりそうですから少し休んでいましょうか?」


「そうしましょうか」


「そうするか。フィーナ……あいつ、何をやっているんだ?」


ノエルはアーカスが考え込む姿に長くなると考えたようでジークの服を引っ張る。

フォトンも同意するように頷き、ジークはフィーナにも声をかけるが彼女は真剣な表情で魔導機器を睨み付けており、彼女が何をしたいかわからないジークは頭をかいた。


「魔導機器を覗き込んでいるようですけど」


「……あの程度の魔導機器を扱えないと言うのはどうなんでしょうね」


「見て、見て、光ったわ。これであのバカを見下せるわ」


彼女の様子にシーマは信じられないとため息をついた時、フィーナの手の中の魔導機器が淡い光を放ち始める。

その姿にフィーナはよほど嬉しかったのか、ジーク達を呼ぶが彼女の言葉からはアノスを小ばかにできる事へと喜びが強いように聞こえた。


「できたのは良いけど……それはどうかと思うぞ」


「何よ? あの男には思い知らせないといけないのよ。私の方が上だってね」


「くだらない……何ですか?」


彼女の言葉にジークは大きく肩を落とすとフィーナはジークを睨み付ける。

フィーナの言い分はシーマにはどうでも良いようで呆れたようにため息を吐くが、彼女の言葉にジークとフォトンは首を横に振った。

2人の反応を見て、シーマは怪訝そうな表情で聞き返す。


「……いや、シーマさんのカインへの反応を見ていると変わらない気がするんだけど」


「ジークの言う通りですね」


「そんな事はありません。私はむきになどなっていませんし、あの悪徳領主の性格が悪い事に問題があるのです」


ジークとフォトンは普段のシーマのカインへの対応から言う資格はないのではないかと答える。

シーマは悪いのは自分ではなく、カインだと言うと頬を膨らませた。


「それより、フィーナ」


「何よ?」


「まぐれじゃないのか? もう1度、やってみろよ」


ジークはフィーナが魔導機器を発動させたのは偶然だと思っているようで1度、やり直して見ろと言う。

フィーナはその言葉に不機嫌そうな表情をするが、ジークを納得させればアノスを言い負かせると考えたようで大きく頷いた。


「見てなさいよ」


「見ていてやるから、早くしろ……間違いなく失敗するな」


「……ジーク、わざわざ、あおる必要はないと思いますよ」


フィーナは魔導機器への魔力供給を切った後、ジークを指差して見ていろと叫ぶ。

ジークはおざなりに返事をするが、彼女の様子から失敗が目に見えたようで小さくため息を吐くとフォトンはジークがフィーナをあおったように聞こえたようで大きく肩を落とした。


「そんなつもりはないけどな」


「フィーナ様の場合、少しでも集中力がそれてしまうとできなくなると思いますけど」


「そ、そうですね。フィーナさん、落ち着いてくださいね」


ジークは苦笑いを浮かべてフォトンの言葉を否定するが、フォトンはジークの発言でフィーナは必ず失敗すると確信しているようである。

彼の言葉にノエルもなんとなく、納得してしまったようで妙に力がこもっているフィーナに向かい落ち着くように言う。

しかし、フィーナの頭には完全に血が上っているため、集中しきれないようで魔導機器が光を灯す事はない。


「……なんで?」


「まぐれだったな」


「ジーク、あんた、何かやったわね!!」


フィーナは先ほどと同じように魔導機器に魔力を通したつもりだったのに何も起きない事に呆然とした様子を言う。

彼女の様子にジークは楽しそうに口元を緩ませるとフィーナはジークが邪魔したと答えを出したようで彼を指差して叫ぶ。


「……なんで、俺のせいになるんだ?」


「ど、どうしてでしょうね」


「やったと言えば、やったのかも知れませんが、これは酷い……」


彼女の言葉は予想外だったようでジークが眉間にしわをよせるとノエルは苦笑いを浮かべた。

フォトンはジークがフィーナの集中力を切らしたのは正しいのだが、そこを理解できない彼女の様子になんと言って良いのかわからないようで眉間に深いしわを寄せている。


「あんたが、やり直せって言わなければ、魔導機器は発動したままだったのよ!! どうにかしなさいよ!!」


「1度、発動させたら、まぐれじゃないかを確認するのが当然だろ」


「……ジークの言い分の方が正しいのですが、今までのやり取りを見ていると納得できない物がありますね」


フィーナはジークのせいだと声を上げ出し、彼女の様子にジークは大きく肩を落とす。

2人のやり取りにフォトンは呆れたように肩を落とし、ノエルは申し訳なさそうに頭を下げる。


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