第864話
「……なんで、こんなところに」
「……この間、罠を解除したばかりではなかったですか?」
アーカスに指定された日にジーク、ノエル、フィーナはフォトンとシーマを連れてジオスの外れにあるアーカスの家に向かう。
2日前に罠をすべて解除したにも関わらず、アーカスの家の前の一本道は罠で溢れかえっており、フォトンとシーマは理解できないと眉間に深いしわを寄せている。
「いつも、こんな物だから気にするな。それより……フィーナ、お前は何しについてきたんだ?」
「決まっているでしょ。あのクズが私にだけ使えないようにした魔導機器を渡して、私をバカにしているんだから、アーカスさんにこの魔導機器を修理して貰うのよ!!」
「……そうか」
ジークは深く考えるなと首を横に振ると近くにあった罠を解除して行くのだが、背中越しに不機嫌そうなフィーナの気配を感じており、彼女に同行した意味を聞く。
フィーナは2日経ったにも関わらず、未だにカインに渡された魔導機器を発動させる事ができないでおり、最終的に魔導機器が壊れていると判断したようである。
彼女の出した答えにジークは何かを言うのも諦めたようで言葉を飲み込んでしまい、ノエルはどうして良いのかわからずに苦笑いを浮かべた。
「……なぜ、そのような答えに行きつくかがわかりませんわ」
「それがフィーナなんですよ」
「……あの性悪の残りかすですね」
シーマは彼女の耳に届いては面倒な事になるのは理解しているようで小さな声でつぶやくとジークの手元を覗き込む。
耳元から聞こえた声にジークは小さくため息を吐くとシーマは兄妹そろってどうしようもないと言いたげにため息を吐いた。
「思っていても口にしない方が良いですよ。兄妹そろって悪口は聞こえる耳を持ってますんで聞かれると面倒ですよ」
「わかりました。心に留めておきます」
「そうしておいてください」
ジークは言いたい事もわかると言いたげに苦笑いを浮かべるが、面倒事に巻き込まれないように忠告をする。
シーマは普段、フィーナやカインに振り回されているジークの言葉に頷くとジークは罠の解除を終えたようで立ち上がった。
「ジークさん、アーカスさんとの約束の時間に間に合うんですか?」
「そうだな。大丈夫だと思うけど……問題は魔導機器が修理できているかどうかだな。せっかく、魔力が貯められても魔導機器の修理が終わってなかったら、無駄足だろ」
「確かにそうですね……噂をすればと言う奴ですね」
ノエルは罠に手間取っているため、アーカスを待たせているのではと心配になったようで首を捻る。
ジークは道の先のアーカスの家へと視線を向けると道の先からはアーカスがこちらに向かって歩いてきており、彼を見つけたフォトンは苦笑いを浮かべた。
「……今日は奥には罠が無いのか?」
「ジーク、それ、本気で言っている?」
「いや、絶対に俺達が足を踏み入れると死にそうになる」
アーカスが歩いていても罠は何も発動しない。
その様子にジークは罠がもう無いのではと希望的な推測を話すとフィーナはそう思うなら行ってみろと言いたげに道の先を指差す。
ジークは気の迷いだと首を横に振るとアーカスがこちらに向かってきているため、立ち止まり、彼を待つ。
「……遅い」
「そう思うなら、罠を外しておいてください。時間の無駄じゃないですか」
「お待たせしてすいません」
アーカスはジーク達の前まで来ると時間くらい守れと言いたげである。
しかし、ジークにも言い分があり、大きく肩を落とすと彼の代わりにノエルが迷惑をかけた事を詫びようと頭を下げた。
「……行くぞ」
「……人の話を聞かない人ですね。説明くらいできないのですか」
「それに関して言えば同感ですけど……アーカスさん、どこに行くんですか? それくらい、教えてくださいよ」
ノエルの謝罪に目もくれる事無く、アーカスはジーク達が来た道を進んで行く。
その様子にシーマは眉間い深いしわを寄せるとジークは苦笑いを浮かべて、アーカスに目的地を尋ねる。
「……遺跡だ」
「遺跡? なんで、わざわざ」
「あの遺跡はそれなりに精霊や妖精がいるだろう」
アーカスは振り返る事無く、村の外れにある遺跡が目的地だと告げるとフィーナは怪訝そうな表情で聞く。
フィーナの言葉にアーカスは振り返る事無く、彼女を小ばかにするように答えた。
彼の態度にフィーナの眉間にはぴくぴくと青筋が浮かび始め、フォトンはフィーナを落ち着かせようと声をかけ始める。
「そう言えば、あそこって妖精がいたな」
「そうですね。私の杖の魔石もあそこで作ったんでしたね」
「……すっかり忘れていたな」
ジークはすっかり忘れていたようで気まずそうに頭をかく。
ノエルは持ってきていた杖の先に付いている白い魔石を覗き込むと2人で顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
「そう言えば、最近、あそこに行ってないけど……石人形、復活しているのかな? この剣で倒せる?」
「どうだろうな……アーカスさん、俺の魔導銃は? これだけだと石人形が出た時に面倒なんですけど」
フォトンが何とかフィーナをなだめてくれたようで彼女は頬を膨らませているものの、アーカスの後ろをついて歩く。
歩いているなかで、徐々に遺跡で会った事を思いだしたようで魔法剣ではなく、普通の剣を持ってきているため、大丈夫かとため息を吐いた。
彼女に言われて、先日、魔導銃の1つをアーカスに預けたままだった事を思い出したジークはアーカスの隣に並んで手を出す。
しかし、アーカスは何も言う事無く、進んで行ってしまい、ジークは魔導銃の行方が気になったようで眉間にしわを寄せる。
「あ、あの、追いかけなくて良いんですか?」
「あ、ああ……フォトンさんもシーマさんもいるし、今回は攻撃魔法があるから大丈夫か」
「すいません。役立たずで」
フォトンは先を進んで歩くアーカスの背中を指差して苦笑いを浮かべるとジーク魔法を使える人間が多いため、大丈夫だと判断したようで苦笑いを浮かべた。
彼の言葉はノエルの耳に届いていたようで攻撃魔法の苦手な彼女は申し訳なさそうに肩を落とす。