第858話
「剣を使うイメージでやれば良いよ」
「うっさいわね。言われなくたってできるわ……」
「……何も起きないぞ」
カインはセスの言葉に苦笑いを浮かべるとフィーナに魔力を通すように言う。
フィーナは言われるまでもないと悪態を吐くとなぜか魔導機器を両手で持ち、剣を振るように動かす。
当然、何も起きず、フィーナは首を傾げると何度も何度も魔導機器を振るが魔導機器が発動する事はなく、アノスは彼女をバカにするように笑った。
「これが壊れているのよ。だいたい、あんただってできないでしょ!!」
「こんな物、簡単だ……壊れているな」
「そうでしょ」
フィーナは魔導機器が反応しないのは魔導機器が壊れているせいだと言うとバカにされたのが悔しかったようでアノスに向かい、魔導機器を投げつける。
アノスは魔導機器を落とす事無く、手に取るとフィーナを挑発するように笑みを浮かべると目を閉じて集中し始めるが魔導機器は反応する事無く、フィーナと同様に魔導機器が壊れていると言う判断を下した。
フィーナはアノスも魔導機器を発動させる事ができなかったため、自分がおかしいわけじゃないと胸を張るが、2人の様子にカインは眉間に深いしわを寄せるとアノスに魔導機器を渡せと彼の前に手を出す。
差し出された手にアノスは魔導機器を乗せるとカインは料理を並べているジークへと視線を移した。
「ジーク」
「あ? いきなり、何するんだよ!?」
「それに魔力を通して」
カインに呼ばれてジークが視線をカイン達の方向へと視線を向けるとカインの手から魔導機器が離れて、ジークの元に投げられる。
ジークは慌てて右手で魔導機器を捕まえると文句を言うが、カインは気にする事無く、魔導機器に魔力を通すように指示を出した。
その言葉にジークは不満げだが言われた通り、魔導機器に魔力を流して行き、右手の中にある魔導機器は青い光を放つ。
「問題なく、発動するね」
「……で、何がしたいんだよ?」
「小僧、こっちにこい」
カインは青い光を眺めながら、フィーナとアノスに聞こえるように言う。
ジークは状況が理解できていないため、魔導機器を光らせながらため息を吐くとアーカスはジークを呼ぶ。
フォトンもその様子を見ており、行って良いと言ってくれたため、ジークは申し訳なさそうに頭を下げるとアーカスの前に移動する。
「で、何なんですか?」
「小僧、魔力を通したまま、手を開け」
「……何なんだよ」
ジークは文句あり気にアーカスの前に立つとアーカスはジークに指示を出す。
意味が理解できないジークは眉間にしわを寄せながらも彼に指示に従い、手を開く。
魔導機器のコアにされた冷気の魔石は青い光を放っているが、魔導機器へ魔力はしっかりと供給されていないようで魔導機器の所々から青い光が漏れている。
「ふむ……小僧、動くなよ」
「動くなよって……怖いですって」
「動くと危ないよ」
アーカスはジークの手を覗き込むと彼の手の上の魔導機器の分解を始め出す。
ジークはアーカスの手が動くたびに魔導機器から漏れる青い光が多くなって行く様子に顔を引きつらせる。
彼の様子を見てカインは楽しそうに笑い、セスはカインを責めるように肘で腕を突く。
「問題ないよ。現状で言えば魔力が暴走してもいつものフィーナみたいになるだけだから、死にはしない」
「そうか……待て。安心するには微妙に納得できないぞ」
「アーカスさんの魔導機器の知識と技術を信用しなよ」
セスに怒られ、カインは小さくため息を吐くとジークに問題ないと言う。
頷きかけるジークだがフィーナが氷漬けになっている姿を思い出して眉間にしわを寄せた。
その様子にカインは苦笑いを浮かべるとフィーナとアノスは危険な目に合わなくて済んだと判断したのか胸をなで下ろしている。
「とりあえず、2人が魔導機器を使うのはまだ早いって事がわかったね」
「別にそんな物を使えなくても困らないわ」
「騎士に魔導機器など必要ない」
カインは2人の様子に気が付き、大きくため息を吐くと2人とも強がりなのか魔導機器になど頼らないと言い切った。
「……負けを認めないと後ろから追いかけてくる人間に抜かされて行くよ」
「負けてなんかいないわ!!」
「そうだとしても、成長しない人間には未来はないよ」
2人の強がりにカインは眉間にしわを寄せる。
フィーナは彼の言葉が納得いかないようで声を上げるとカインは呆れたようにため息を吐くとフィーナの横にあった剣を手に取った。
「何するのよ?」
「しばらく、この剣は没収かな? その代り、フィーナとアノスにはこれを貸してあげるよ」
「何よ。これ?」
フィーナはカインの手から剣を奪い返そうとするがその手をカインはひらりと交わす。
カインの行動の意味がわからずにフィーナは彼を睨みつけるとカインは魔導機器の扱い方を2人に覚えて貰おうと言いたいのか懐から小さな魔導機器を2つ取り出すとテーブルの上に置く。
フィーナは頬を膨らませながら魔導機器の1つを手に取り、覗き込む。
「見ての通り、魔導機器。フィーナは素早さ、アノスは力かな? 逆でも良いけど」
「……フィーナはなんとなく扱えそうな気がしてイヤですね」
「そうかもね。これはあまり強力な魔導機器でもないから、これが発動させられないとしたら……鼻で笑いたくなるよね」
カインはフィーナの手から魔導機器を取り上げるともう1つの魔導機器を手に乗せる。
彼女から取り上げた魔導機器をアノスも前に置くとくすりと笑った。
2人は魔導機器を眺めているとセスは感覚で魔剣を機能させているフィーナには成長につながるかわからないと言う。
カインは小さくため息を吐くとこれくらいの魔導機器は誰でも簡単に使えると言いたげに鼻で笑った。
その笑みは明らかな挑発であるが、怒りの沸点の低いフィーナとアノスの眉間にはぴくぴくと青筋が浮かび上がる。
「こんな物、簡単に発動させてやるわよ!!」
「……俺をバカにした事をすぐに後悔させてやる」
「……カイン、どうして挑発するんですか?」
フィーナとアノスは魔導機器を手にすると互いにも敵対心を持っているためか睨み合った後、居間を出て行ってしまう。
2人の背中をカインは笑顔で見送るがレインは挑発する理由がわからないようで大きく肩を落とす。