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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
853/953

第853話

「……なんで、私がこのような事を?」


「文句しか出てこないの? 黙ってやりなさいよ」


「……フィーナの口から聞くと違和感のある言葉だな」


ノエルとフォトンに拉致されてきたシーマは文句を言いながら、先代までの領主の遺品整理をしている。

彼女はラミア族であり、人族よりは体力があるとは言え魔術師のため、荷物を出すためにジークとフィーナが手伝っているがフィーナは文句を言いたいのは自分だと声を上げた。

2人の様子にジークは小さくため息を吐くとフィーナの耳にはしっかりとジークの言葉が届いたようで彼を睨む。


「何よ?」


「そのままだろ。文句言ってないで働けよ。現領主の妹様」


「あいつが領主だろうと私には関係ないわ!! だいたい、私はあのクズを兄だと認めてない!!」


ジークはフィーナにもこの場を片付ける責任があると言う、フィーナはカインと実の兄妹と言う事を全力で否定する。

流石に度の超えたバカな発言にジークとシーマは顔を見合わせた後に大きくため息を吐き、それが納得のできないフィーナは大きく頬を膨らませた。


「まぁ、思い出のあるものだって見つかるかもしれないし、探して見てくれよ」


「……思い出、あるとは思えませんけどね」


「そうとは言っても何かしらあるでしょ」


フィーナと遊んでいるヒマもないため、ジークは苦笑いを浮かべながらシーマに少し我慢して作業を続けるように言う。

シーマは首飾りを1つ手に取ると覗き込みながらため息を吐き、フィーナは頬を膨らませたまま荷物を運ぶ。


「……血が繋がっているとは言え、ほとんど顔を合わせた事もありませんからね」


「……本気で言っているの?」


「そうですが、文句でもありますか? だいたい、忌み子が領主の娘を名乗れるわけがないでしょう」


シーマは自分には父親の記憶などほとんどないとため息を吐いた。

その表情は少し寂しげに見え、ジークは気持ちがわかるのかバツが悪そうに頭をかくがフィーナは気づく事なく、眉間にしわを寄せて聞き返す。

シーマはバカな質問をするなと言いたいのか眉間に深いしわを寄せると自分が領主の血族だと語れなかった理由を思い出せと言う。


「……名乗れないの?」


「フィーナ、お前は今まで何を聞いていたんだ?」


「だって、フォルムのみんなの反応を見てればどこからどう見たって領主の一族でしょ? 気にしすぎじゃないの?」


フィーナはシーマが言っている事の意味がわからないようでジークに視線を向けた。

ジークは彼女のバカさに大きく肩を落とすとフィーナはフォルムの人達のシーマへの対応の仕方を見ろと主張する。


「……あれはどちらかと言うとジオスの年寄連中と同じ反応だろ」


「……それも少し思ったけど、フォルムはジオスより、子供も私達と同じ世代もいるでしょ」


「そう言われるとそうかも?」


ジークはフォルムの人達がシーマを可愛がるのは領主の血族だからと言うのとも違うと首を振った。

彼の言葉にフィーナは頷きかけるが自分達とは違うんじゃないかと言い、ジークは彼女の言葉に納得する部分もあったようで首を捻る。


「……なぜ、説得されかけているんですか?」


「あ……悪い」


「シーマ様の場合、先代の領主様の事もありますから」


シーマは2人の様子に肩を落とすとジークはバツが悪そうに笑う。

その時、休憩でもしてはどうかとノエルとフォトンが紅茶を運んでくる。

フォトンは話が聞こえていたようで苦笑いを浮かべると彼の言いたい事が理解できたジークは小さく頷いた。


「先代領主? ……バカだったんだっけ?」


「……フィーナ、もう少し、言葉を選べ」


「何でよ? 事実でしょ」


カインの前の領主はシーマとは血縁ではあるが直系ではなかったためか、フォルムの人達には認められていなかったようである。

そして、彼自身もフォルムの民を大切に扱うような人物ではなく、フィーナは良い話も聞いた事が無いようでバカと言い切った。

ジークは大きく肩を落とすがフィーナは文句を言われる筋合いはないと言いたいようで頬を膨らませる。


「……確かに事実ですね」


「フォトンさん、言って良いのか?」


「事実ですから、それで何か見つかりましたか?」


フォトンは眉間にしわを寄せて、フィーナの言葉を肯定するとジークは執事をしていたフォトンが言って良い事ではないと思ったようで大きく肩を落とす。

彼も先代領主に仕えているのは納得が行かない部分もあったようで苦笑いを浮かべると3人に進捗状況を尋ねる。


「特に何もありません。こんな事をやっても時間の無駄です」


「それなら、シーマさんの母親の思い出話で出てきた物とかないのか?」


「……お母さんからですか? 別にないです。お母さんの形見は身に付けていますし」


シーマは無理やり自分を連れてきたフォトンを睨み付けると時間の無駄だとため息を吐いた。

ジークは彼女の反応に困ったように笑うと母親から話を聞いた事がないかと聞く。

その言葉にシーマは少し考え込むと胸を両手で押さえて首を横に振る。


「身に付けているのか?」


「ええ、確かお母さんがあの人から貰ったと言っていました。あの人には何の思い入れもありませんが、お母さんが大切にしていましたから、これだけはフォルムを出て行く時に持って行きました」


「シーマさんのお父様とお母様の思い出の品ですか?」


ジークは首を捻るとシーマは母親の事を少しだけ思いだしたようで小さく笑みを浮かべた。

その話にノエルの目は輝き始め、彼女の変化にジークとフィーナは気が付き、後ずさりをする。


「ジーク、不味い事になったわね?」


「……そうだな。タイミングが悪かった」


「ジーク、フィーナ、どうかしたんですか?」


フィーナはノエルがシーマの両親の恋愛話に食いつくのが目に見えたようでジークの服を引っ張った。

彼女と同じ事をジークも考えたようで小さく頷くと2人の様子にフォトンは首を捻る。


「……フォトンさん、ノエルはシーマさんに任せて俺達は居間に戻りませんか?」


「どういう意味でしょうか?」


「シーマさんはお母様からお父様とのお話も聞いているんですよね? どんな話だったんですか?」


ジークはフォトンに居間に移動しないかと言うが、彼は意味がわかっていないようで眉間にしわを寄せた。

その時、目を輝かせたノエルがシーマとの距離を一気に縮める。

シーマは突然の事に意味がわからずに怯むとノエルはまくし立てるように質問を始め、彼女の様子にジークとフィーナは眉間に深いしわを寄せた。


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