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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第851話

「……そこが問題なの?」


「アーカスさんなりのこだわりじゃないのか? アーカスさん、石が合っていなかったから、土地を豊かにすることができなかったんですか?」


「違うな。先ほどまではまっていた石は魔力がこもった魔石や精霊石の類のものではない……」


石が取り外された首飾りを覗いているアーカスの姿にフィーナは眉間にしわを寄せる。

ジークは小さくため息を吐くと魔導機器を上手く発動させる事ができなかった原因が気になったようでアーカスの手の中の首飾りを覗き込む。

アーカスはジークの言葉を否定するとしばらく考え込んだ後、突然、歩き出す。


「ちょ、ちょっと、どこに行くんですか?」


「使える石があるかは別にして、中を見ようと思っただけだ」


「……完全に壊れたりしないわよね?」


アーカスがどこに行くかわからないため、ジークは驚きの声を上げる

その声にアーカスはくだらない事を聞くなと言いたげにため息を吐くと居間の中に入って行く。

フィーナは魔導機器が分解されて完全に使えなくなる可能性を考えたようで眉間にしわを寄せるとジークの顔は小さく引きつった。


「そ、それはないだろう。アーカスさんだぞ」


「……アーカスさんだからでしょ?」


「……そうとも言う」


顔を引きつらせているジークだが、フィーナの言葉を否定するように首を振る。

フィーナは現実を見ろと言いたいのか首を横に振るとジークの眉間には深いしわが寄った。


「見に行く?」


「……そうしたいけど、ここも片付けないといけないからな」


「そうね……だけど、面倒よ」


フィーナは完全に魔導機器を壊されてはいけないと思ったようで居間の方を指差して言う。

ジークは見に行きたいようだが廊下に溢れだした荷物を見て大きく肩を落とした。

フィーナは部屋から引っ張り出した荷物を見て、片づけをしたくないと言いたいのか視線をそらして頭をかく。


「だけど、このままにしているわけにもいかないだろ。もう少ししたらきっとフォトンさんも来るし、それにアーカスさんが何かしていても俺とお前で何かわかるのか?」


「……わかるわけがないわね」


「それなら、少しでもこっちを片付けた方が良い」


ジークは自分達の知識では何もできないと思い直したようで床に遭った荷物を持ち上げると部屋の中に戻し始める。

フィーナは眉間にしわを寄せると観念したようであり、床に置いた荷物を持ち上げると廊下に戻ってきた、ジークに荷物を渡す。


「……」


「アーカスさん、何かわかりましたか? ……」


「……バラバラになっているわ」


2人が荷物を物置部屋の中に戻して居間に戻るとアーカスはソファーに腰を下ろしている。

ジークはソファーの前にあるテーブルの上を覗き込むと先ほどのも首飾りはバラバラになっており、ジークとフィーナの顔は小さく引きつった。


「アーカスさん、これは直るんですよね?」


「……石が無理やり、取り外されたせいか、魔力を本体につなげる経路に破損が見えるな」


「ダメだ。聞こえてないわ」


ジークはアーカスに任せた事が失敗だとは思いたくないようですぐに魔導機器の状態を聞く。

ジークが慌てていようがアーカスには関係ないようで彼は解体された魔導機器の部品を覗き込みながら口元を緩ませている。

その様子にフィーナはため息を吐くとここに居ても仕方ないと思ったようでキッチンに向かう。


「……しかし、この魔力回路の部品はかなり古い物だな。現状で代用できるものはあるにはあるが」


「とりあえずはアーカスさんに任せた方が良いのかな?」


「アーカスさん、集中していますね」


ジークとフィーナの心配を余所にアーカスは口元を緩ませたまま、ぶつぶつとつぶやいており、ジークは何もできないと思ったようで頭をかく。

その時、入口の方からレインが顔を出した。

レインはアーカスの様子を見て苦笑いを浮かべるとジークは困ったように笑う。


「レイン、ずいぶん早いな」


「カインがジークの方を手伝って欲しいとフォトンさんには別の用事を任せているので物置代わりの部屋を弄るには人手が足りないかも知れないと言っていましたけど、アーカスさんの様子だと終わりましたか?」


「……ああ、思っていたより、速く見つかったよ。ただ、壊れているみたいなんだよ。フィーナ、レインが戻ってきたから、1人分追加」


レインが戻ってくる時間にはまだ早いため、ジークは首を捻るとレインは苦笑いを浮かべたまま、カインの指示だと話す。

ジークは頷くと魔導機器の状態を説明するとキッチンの中にいるフィーナに声をかけ、中からはすぐに返事が戻ってくる。


「良いんですかね?」


「良いんじゃないか……昔は出来なかったんだし、成長したよな」


「ジーク、私の悪口を言ってなかった?」


フィーナからの返事にジークはソファーに腰を下ろすとレインはキッチンを指差しながら苦笑いを浮かべた。

ジークは以前にはキッチンにフィーナが入る事など考えられなかったため、苦笑いを浮かべると4人分の紅茶を持ってフィーナが居間に戻ってくる。

彼女は時折見せる鋭すぎる勘で自分への悪口を感じ取ったようでジークを睨み付けるとわざとらしく音を立ててジークの前に紅茶を置く。


「別にバカにしたつもりはないな。だよな。レイン」


「そ、そうですね。誉めていたと思いますよ……とらえようによっては」


「そう……」


ジークは悪びれる事無く、悪口などないと言い切るとレインに視線で合図をする。

言葉自体はどちらとでも受け取れる言い方だったため、レインは苦笑いを浮かべながら頷き、フィーナはレインの顔色から嘘はないか読み取ろうとしたようで彼の顔を覗き込んだ。


「ち、近いですよ」


「……怪しい」


「怪しがってないで飲めよ。温かいうちの飲んだ方が美味いだろ」


レインは目の前の彼女の顔に飛びのき、彼の反応を見たフィーナは疑いの視線を向けてレインとの距離を詰める。

フィーナが近づくとレインは逃げ、また、フィーナはレインを追いかけて行く。

2人の様子にジークはため息を吐くと紅茶へと手を伸ばす。


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