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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
850/953

第850話

「……アーカスさんの幻が見える。疲れているのかしら」


「兄妹そろって同じ反応するな。本物だから」


ジークがアーカスとともに屋敷に戻るとすでに仕事を投げ出して屋敷に戻って居間のソファーでだらだらしていたフィーナがアーカスの顔を見て、見間違いだと思ったようで目じりを押さえる。

先ほどのカインとフィーナの反応が同じであり、ジークはため息を吐くがアーカスはフィーナの相手をする事無く、物置代わりになっている部屋へと一直線に向かう。


「……本物だわ」


「見たらわかるだろ」


「だって、わざわざ、フォルムに来るなんて思わないでしょ」


アーカスの様子にフィーナは本物だと判断したようで小さくつぶやくとジークは眉間にしわを寄せた。

フィーナはアーカスの性格を考えればフォルムになどくるわけないと思っているため、当然の反応だと主張する。


「それに関して言えば、言いたい事もわかるけどな」


「それで、アーカスさんは何しにフォルムきたの? ……また、おかしな魔導機器の実験をさせる気じゃないでしょうね?」


「今回は魔導機器の実験じゃない。それより、遊んでいるなら手伝えよ」


彼女の言い分は一理あると思っているためか、ジークは眉間にしわを寄せた。

フィーナは彼の反応に自分の考えは正しいと胸を張った後、アーカスの目的を聞く。

その質問の途中でアーカスの実験に付き合わされた時の事を思いだしたようで眉間には深いしわが寄った。

ジークは首を横に振るとフィーナを遊ばせておくのはもったいないと考えたのか彼女に手伝えと言う。

その言葉にフィーナは面倒だと言いたいのかあからさまに嫌そうな表情を見せる。


「前の領主がため込んでいた魔導機器を見て貰うんだよ。フォルムの土地を豊かにする事ができる可能性がある魔導機器があるかも知れないんだ。それに、もしかしたら、他にも使える物があるかも知れないぞ。アーカスさんの事だ。どんな能力があるかだってわかるぞ」


「それは……あのクズをブッ飛ばすのに使えそうな魔導機器が有るかも知れないわね」


「……こう単純だと扱いやすいよな」


フィーナが乗り気でない様子にジークは彼女が興味の湧くように話をする。

カインを倒せるかも知れないと考えたフィーナは小さく口元を緩ませるとアーカスの向かった場所へと駆け出す。

彼女の背中を送り出したジークは頭をかくと2人の後を追いかけて行く。


「……やっぱり、私は居間でだらだらしているわ」


「逃がすと思っているか?」


「この部屋は何なのよ? なんで、こんなに荷物が積み上げられているのよ!!」


物置代わりの部屋のドアを開けると荷物が隙間なく積み上げられており、フィーナは眉間にしわを寄せた。

ジークは当然のように回り込むとフィーナは部屋の中の荷物を指差して叫ぶ。


「……俺とカインの努力の結果だ」


「そんな無駄な努力は要らないわ」


「仕方ないだろ。元々、屋敷にあったものを人が増えたから無理やり詰め込んだんだから、ここをこのままにしておきたくないなら、少しお前の部屋に持って行くか?」


ジークはこの部屋に荷物を詰め込んだ時の事を思いだしたようでどこか遠い目をして言う。

彼の反応にフィーナはイライラしているようで舌打ちをするが、ジークはため息を吐くと部屋の手前の荷物から出して行く。

フィーナはノエルと同室のため、部屋は片付いているのだが余計な荷物を運び込みたくはないため、ぶつぶつと文句を言いながら、ジークが部屋から出した荷物を運ぶ。

アーカスは荷物運びを手伝う気はないよう運ばれた荷物だけを確認して行く。


「……納得が行かないわ」


「良いから働け、肉体労働はお前の仕事だろ」


「絶対に違うわ。なんで、女の子の私が力仕事をしないといけないのよ」


荷物を覗くだけのアーカスの姿にフィーナは納得できないようであり、眉間に深いしわを寄せる。

ジークは自分よりフィーナの方が腕力があると思っているため、文句を言うな言って荷物を渡すが、フィーナの不機嫌そうに頬を膨らませた。


「……ほう」


「アーカスさん、何かあったの?」


「おい。フィーナ!?」


その時、アーカスが小さく驚きの声を上げるとフィーナは持っていた荷物をジークに押し付けて逃げるように覗き込む。

彼女の突然の行動に驚きの声を上げるが何とかバランスを保つと手にしていた荷物を持って、2人の後ろに移動すると荷物を下ろす。


「アーカスさん、何、貴重な物? あの性悪をブッ飛ばせる?」


「……そこから離れろよ。アーカスさん、それって目的の魔導機器ですか?」


「そうだ。ただ……」


フィーナの目的は完全にカインを倒す事になっており、アーカスにつかみかかるように聞く。

彼女の様子にジークはため息を吐きながら、フィーナをアーカスから引き離すと見つかった魔導機器が目的の物か尋ねる。

アーカスは頷くが何かあるようで言葉が続いてこない。

その様子にジークとフィーナは首を傾げながら、アーカスの手にある魔導機器を覗き込んだ。


「これって、壊れているの?」


「本当かよ」


アーカスの手の中にある魔導機器は首飾りの形をしているが、中央にあったはずの魔力を宿していたと思われる石はひび割れて光りを失っているようで真黒である。

魔導機器について詳しくないジークとフィーナにもこの魔導機器を使う事ができないと解り、ジークは乱暴に頭をかいた。


「……話は最後まで聞け」


「壊れてないの?」


「壊れてはいるが、問題はそこではない」


アーカスは早とちりをするなと言いたいのか小さくため息を吐くとフィーナは魔導機器を指差しながら聞く。

その言葉にアーカスは魔導機器が壊れている事は否定する事はなく、彼の言葉に2人は意味がわからずに首を捻った。


「アーカスさん、何をするんですか!?」


「……魔導機器自体が生きているかより、不釣り合いの物が装着されているのが問題なのだ」


その時、アーカスは首飾りの中央にはめ込まれていた石を取り外すとひび割れていた石は崩れ落ちてしまう。

石が無くなってしまった事に驚きの声をあげるジークだが、アーカスは気にする事はない。


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