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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第848話

「シーマさん、大丈夫ですから安心してください」


「そ、そうよね」


「……あなたの方が大丈夫に見えないですわ」


テッドの診療所に運ばれた人達はテッドとミレットの治療を受けており、診療室に入れる人数も限られているため、ノエルとカルディナは待合室で治療の行方を見守っている。

治療が始まってしばらくすると巨大蛇捜索の指揮官をしていたシーマが駆け付けたのを見て、ノエルは彼女に心配ないと声をかけた。

ノエルの声に返事をするシーマだが指揮が上手く行かなかった事で協力者を傷つけてしまった事に自信を失っているようで声を震わせている。

彼女の声にノエルの不安は煽られたようで顔からは血の気が引き始めており、2人の様子にカルディナは呆れたようにため息を吐いた。


「そ、そうですね」


「まったく、だいたい、ケガをしたとは言え、生き死に関わるような物でもないでしょう。腕や足が吹き飛んだと言う物でもないんですから」


「……顔が青くなっているわよ。大丈夫?」


ノエルは何とか意識を引き止めようとするが、カルディナは情けないと言いたいのようで呆れ顔で言う。

その言葉は何とか意識を引き止めようとノエルの精神力をゴリゴリと削って行き、彼女の様子にシーマはため息を吐いた。

シーマは自分よりもテンパっているノエルの姿に落ち着いてきたようであり、落ち着きを取り戻そうと大きく深呼吸をする。


「そ、そんな事はないです。大丈夫です」


「自分より、下の人間を見て、落ち着くなんてたかが知れていますわ」


「……」


ノエルは大丈夫だと言いたいようで笑顔を見せるが、カルディナはノエルに言う事はないと言いたいのかシーマを侮蔑するような視線を向けた。

その視線にシーマは自分より、年下の娘に言われた事が悔しいようで彼女を生意気だと言いたげに睨み返す。

2人の視線の間には火花が散り始めそうであり、2人の間に挟まれたノエルはどうして良いかわからずにオロオロしており、3人の様子を待合室に残っていたフォルムのお年寄り達は生温かい目で見守っている。


「ノエル、何をしているんですか?」


「ミ、ミレットさん、大丈夫なんですか?」


「はい。フォルムの人達は生命力が強いですから、この程度のキズならそこまで慌てなくても良いと思いますよ。後、シーマさんはこの場所から逃げない」


その時、診察室のドアが開き、治療を終えたようでミレットが顔を覗かせると3人の様子に首を傾げた。

ノエルは助けが来たのとケガをした人の事が心配であり、すぐにミレットに泣きつくとミレットは心配ないと笑顔を見せる。

彼女の笑顔にノエルはほっと胸をなで下ろすと無事を確認できた事もあり、シーマは診療所を出て行こうとするがミレットはすぐに気が付き彼女を引き止めた。


「……別に逃げているつもりなど、私は指揮をしているんですから、長くあの場所を離れるわけにはいきません」


「指揮をしていると言うなら、状況をしっかりと確認する事も必要じゃありませんかね? それに皆さん、ケガをした人の様子も知りたいでしょうからね」


「だいたい、今の状況ではまともに戦えるとは思いませんわね」


シーマはミレットを苦手にしているのか、言い訳をして逃げ出そうとするがミレットが彼女を逃がすわけがない。

シーマの様子は明らかに動揺が見られており、カルディナはため息を吐きながらクーの鼻先をくすぐる。

クーはカルディナに抱き付かれているのが嫌になってきているようで不機嫌そうにしているが、カルディナが気づく事はない。


「別に私は動揺などしていません!!」


「誰も動揺しているとは言っていませんが?」


「……」


シーマは声を荒げるがミレットはくすくすと笑っており、シーマは怒りに任せて診療所を出て行こうとするが、診療所に居たお年寄り達が彼女を引き止め、診療所の一画に連れて行ってしまう。


「あの、ミレットさん、良いんですかね?」


「良いんじゃないでしょうか? 私達が何か言うと意地になってしまいそうですし、フォトンさんが居れば別ですけど」


「そう言えば、ジークさん達は魔導機器を見つけられたんでしょうか?」


シーマがお年寄り達に囲まれてしまった様子にノエルは苦笑いを浮かべるとミレットは自分達が何か話すよりは任せた方が良いと笑う。

彼女の言葉にノエルは納得したようで小さく頷くとジーク達の探し物が気になったようで首を傾げる。


「まだ、探し始めたばかりでしょうけど……ジークが飽きてきたくらいでしょうか?」


「あの男はもう少し我慢と言う物を覚えた方が良いですわ」


「……えーと? カルディナ様が言ってはいけないような」


ミレットは治療時間を考えてジークの行動を予想するとカルディナはクーを自分のものにしたいがためにジークを陥れようとする。

その言葉にクーは不機嫌そうに頬を膨らませ、ノエルはどうして良いのかわからないようで苦笑いを浮かべた。


「カルディナ、あまりジークを陥れようとするとクーちゃんに嫌われてしまいますよ。それに我慢と言う物を覚えるのはあなたですね」


「……」


「クー」


ミレットは1度、ため息を吐くとカルディナに言い聞かせるように言うとカルディナを聞きたくないと言いたいようでそっぽを向いてしまう。

その瞬間にカルディナの手は緩んだようでクーは彼女の腕の中から、脱出するとカルディナが手を出せないミレットの腕の中に移動する。


「クーちゃん!?」


「嫌われてしまいましたね。カルディナは少し反省していなさい。ノエル、こっちを手伝ってください。キズの手当は終えましたから、治癒魔法で回復を早めてあげてください」


「わかりました」


カルディナはクーに嫌われているとはみじんも思っていないため、クーの行動に驚きの声を上げた。

ミレットはクーの言い分を理解しているため、カルディナに反省するように言うとノエルに声をかけて診療室に入って行く。

ノエルはどうして良いのかわからずにカルディナへと1度視線を向けると頭を下げて診療室に入り、カルディナはクーに逃げられた事に呆然と立ち尽くしている。


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