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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第847話

「……見つかる気がしないな」


「そ、そうだよな。前もそうだったんだよな」


「とりあえずは研究書の整理から始めましょうか。このままではどうしようもありませんし」


アーカスの書庫を調べ始めてしばらく経つが研究書は乱雑に積み重ねられているため、調査は一向に進まない。

アノスは研究書に興味がない事もあり、ページをパラパラとめくるが何もわからないようですぐに研究書を積み上げる。

ジークは以前よりは研究書が読めるようになってはいるが、それでも、わからない事が多く、どうして良いのかわからないようで頭をかいた。

フォトンは研究書を探すより整理整頓が先だと判断したようで腕まくりをするとこの魔窟と化した書庫の片づけから始めようと提案し、ジークとアノスは頷く。


「……今日で終わるのか?」


「しばらくはこちらに通う事も考えないといけないですね」


「おい。どうにかして、あのハーフエルフを引っ張り出す方法はないのか?」


しかし、それも続かず、アノスは眉間に深いしわを寄せるとフォトンは研究書を並べながら苦笑いを浮かべる。

アノスは付き合っていられないと思ったようでジークに他に方法を考えるように言う。


「引っ張り出す方法って言ってもな。一筋縄じゃいかない人だし、誰か簡単に動かせる人が居れば良いんだけど? ん?」


「何か思いついたのか?」


ジークは頭をかきながら、何か方法を考えようとすると何か思いついたようで口元が小さく緩んだ。

彼の表情にアノスは何か策が見つかったと思ったようで速くその策に移れと促す。

2人の様子にフォトンは上手く行くとは思えないようでため息を吐くと1人で本棚の整理を続けて行く。


「アーカスさん」


「……何だ?」


「せめて、こっちを見ませんか?」


ジークは書庫の整理を一先ず、アノスとフォトンに任せてアーカスの研究室に戻る。

アーカスはジークに呼ばれて返事をするが、興味は研究書に向けられたままであり、ジークに視線を移す事はない。

その様子にジークはため息を吐くとアーカスの隣に移動すると研究書へと手を伸ばすが、アーカスはジークの手をすんなりと交わす。


「何の用だ?」


「アーカスさんって、魔術学園のフィリム=アイ教授の先生だったんですね」


「だから、どうした」


アーカスは研究の邪魔をされたくないようでジークに用件を速く済ませろと言うとジークはフィリムの名前を上げ、彼の反応を伺う。

しかし、アーカスはフィリムの名前にジークが期待したような反応をする事はなく、ジークは眉間にしわを寄せる。


「……他に何かないんですか?」


「フィリムが私の教え子だと言うのは事実でそれ以上も以下もないだろ。だいたい、あの性悪を魔術学園に入れるのに推薦状を書いたのは私だ」


「……それ、初耳なんですけど」


ジークは期待していた反応の1つでも引き出せないかと思ったようでアーカスに詰め寄った。

アーカスは彼の行動を鼻で笑った後、カインが魔術学園に行くきっかけは自分だと言い、初めて知らされた事実にジークの眉間にしわが寄る。


「誰にも聞かれなかったからな。知っていたのはあの性悪の両親とアリアだけだ」


「……そ、そうなのか? でも、カイン本人が知らないのはおかしくないか?」


「知り合いにジオスに魔術の才がある人間がいると言っただけだ。それを見に来た人眼が魔術学園にスカウトすると決めたのだから、あの性悪が知る事ではないな。それにあの性悪の事だ。私が推薦状など書かなくても自分で目的を達成するだろう」


アーカスは研究書から視線をそらす事無く、カインが魔術学園に行く事になった経緯を話すとジークは何を言って良いのかわからないようで眉間のしわはさらに深くなって行く。


「それはそうかも知れないんだけど……なんか、納得が行かない」


「小僧が納得しようとしまいが関係はないな。それで、わざわざ、フィリムの名を出した何がしたかったんだ?」


「えーと、隠しても仕方ないんで……見つからないんでどこに研究書があるか教えてください。後、フォルムにある魔導機器も見て欲しいです」


ジークは納得できないと口に出すがアーカスは興味なさそうであるが、ジークがフィリムの名前を出した理由には興味が湧いたようである。

アーカスの言葉に変に回り道をするよりは直接頼んでみようと思い直したようで深々と頭を下げた。


「……フォルムの地がどうなろうと小僧、お前には関係ないはずだ」


「関係なくはないです。カインに振り回されて手伝い始めたけど、その間にフォルムの人達に世話になりっぱなしですし、協力できる事は協力したいですよ」


「そうか……」


アーカスは遠方の地であるフォルムがどうなろうとジークには関係ないのではないかと聞く。

ジークはその質問に困ったように笑った後、フォルムの人々のために協力したいと言う。

その瞳は真っ直ぐであり、嘘偽りのない物であるのはアーカスの目でもわかったようで小さく頷くと研究書を閉じて立ち上がる。


「アーカスさん?」


「……早く終わらせるぞ。私は研究を続けたいんだからな」


「は、はい」


アーカスが立ち上がった事に首を傾げるジーク。

そんな彼をおいて、アーカスは研究室を出て行き、ジークは慌てて彼の後を追う。


「……何をしている?」


「今のままでは目的の物が探せないので整理を」


「そうか……」


書斎に戻るとアーカスはフォトンの様子に眉間にしわを寄せた。

彼の様子にフォトンは不味い事をしたと思ったようで苦笑いを浮かべるがアーカスはそれ以上、何かを言う事無く、書斎の入口から全体を眺める。


「おい。上手く行ったのか?」


「……考えていた事は上手く行かなかったけどな。なんか、やる気になってくれたから、良しとしようと思うんだ」


「そうか。俺はこれ以上、ここに長居したくないから、速く終わるならそれで良い」


アーカスの様子を見て、アノスがジークに声をかけた。

ジークは自分の作戦など何の役にも立たなかったと大きく肩を落とすとアノスは役立たずと言いたげな表情をした後にアーカスの次の行動を待つ。


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