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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
839/953

第839話

「……汚れているな」


「そうですね……どうして、フォトンさんがここのカギを持っているんですか?」


レインの許可は後で取るとして3人はレインの屋敷を訪れた。

玄関のカギを開けるとしばらくは誰も入った様子もなく、汚れており、ジークは大きく肩を落とす。

ノエルは頷くもののフォトンがカギを持っている理由がわからずに首を捻るとフォトンは気まずそうに視線をそらした。


「何かあったんですか?」


「……この屋敷を建てた職人には1人娘がいまして、その職人はカギも請け負ったんですが屋敷には設計図がありまして」


「娘にも職人の血が流れていて設計図を盗んでカギを複製したって事か? ……犯罪じゃないかよ」


ノエルは首を傾げるとフォトンは話した方が良いと判断したようで眉間にしわを寄せたまま、自分がカギを持っている理由を話し始める。

話の途中でジークはフォトンが話そうとしていた事に想像が付いたようで眉間に深いしわを寄せた。


「ジーク達がフォルムに来る前に何とか気が付きまして、設計図は処分、カギはレインさんから預かりました。カイン様の屋敷があのような状況になりましたので置ききれない荷物はここに置こうと言う事になりましてカギは私が管理させていただいています」


「そうか……怖いな。恋する乙女」


「その行動を恋する乙女と言って良いかわかりませんが、そういう事なので私達が入るのは問題ありません」


フォトンはこれ以上のカギの複製は問題ないと言った後、現在はレインのあてがわれた屋敷が物置になっている事を話す。

ジークは頷くものの状況の整理より、レインを追いかけまわしているラミア族の少女への恐怖が勝ったようで眉間のしわはさらに深くなって行く。

フォトンはその時の事を思いだしたようで大きく肩を落とすがこれ以上、余計な話をしても仕方ないと思ったようで奥に進み、ジークとノエルは後を追いかける。


「……人手が足りない」


「で、ですよね」


後片付けを始めてしばらく経つが、後片付けは一向に進まない。

フォルムのような遠方の地に建てたとは言え、騎士の名門であるファクト家の子息を住まわせる屋敷であり、3人ですぐに片付くものではなく、ジークは大きく肩を落とした。

片づけを行わなければいけないため、ノエルも一生懸命に手を動かしているが彼女もジークと同じ考えのようで苦笑いを浮かべている。


「とりあえずは居間とかの共同スペースだけで良いと思うよ。魔術学園に所属している研究員はどこでも寝られるから」


「……どこから湧いて出てくる」


「来客が終わってセス達を探したら、フォトンが書いて置いてくれたメモを見つけてね」


その時、ジークは背中を叩かれて振り返るとカインが立っており、その姿にジークは眉間にしわを寄せた。

カインは掃除するべき場所の提案をするがどこか遠い目をしており、その様子から客人の相手をするのが疲れたと言いたげである。


「領主自ら片付けってのはどうなんだろうな」


「領主だからって椅子の上にふんぞり返っているようなヒマはありません」


「知っているけど、こっちより、セスさんを手伝ってやれよ」


ジークはカインの様子にため息を吐くと美味しい方の栄養剤を取り出して彼に渡す。

カインは栄養剤を飲み干した後、まだまだやる事があると苦笑いを浮かべており、ジークはカインと同様に働き通しのセスをフォローしろと言う。


「……あっちは疲れるから」


「あの勢いは怖いですよね」


「あの、カイン様、居間だけで良いと言うのはどう言う事でしょうか?」


カインは遠い目をして言うとノエルは研究員達の勢いを思い出したようで苦笑いを浮かべる。

3人が緩い空気を醸し出しているなか、フォトンはカインの指示の意味がわからずに首を傾げた。


「いや、単純に1度、火が点くとそれに夢中になるから、部屋に戻るヒマがない。と言うか、研究室に泊まりこむんじゃないかな?」


「……それはなんと言ったら良いんですかね」


「だから、ここの片づけをするよりは食糧確保の方が重要かな? 後、ジークは栄養剤の調合」


カインは研究員の性質だと言いたいのか苦笑いを浮かべる。

フォトンは理解しがたいようで眉間にしわを寄せるとカインはジークに指示を出す。


「栄養剤の確保? ……どっちだ?」


「……好みもあるから両方かな?」


「りょ、両方なんてダメです!? 死人が出ちゃいます!!」


栄養剤の調合と聞き、ジークは首を捻るとカインは少し考えた後に2種類の栄養剤の調合を指示する。

その指示にジークの口元は楽しそうに緩むが、ノエルはアリア直伝の栄養剤は毒薬と同列扱いのため、大きく首を横に振った。


「だから、栄養剤だから」


「そう思うなら、ばあちゃんの栄養剤って言った時に口元を緩ませない」


「そんなつもりはなかったんだけど」


ノエルの反応にジークは言いがかりだと言いたいのか大きく肩を落とす。

カインはジークの口元が緩んでいた事を見逃しておらず、ため息を吐くとジークは本当に無意識だったようでバツが悪そうに頭をかいた。


「とりあえず、こっちは俺も手伝うし、援軍も呼んだから、ジークは調合に入って貰っても良いかな?」


「わかった。だけど、援軍って、誰だ?」


「カインさん、お待たせしました」


カインはここに来る前に手を打ってきたようで人手は充分だと笑う。

ジークは頷くがカインの言う援軍の正体がわからずに首を捻るとレインとミレットがいつも診療所に集まっているお年寄り達を連れて居間に入ってくる。


「援軍?」


「援軍です。待合室で皆さん、時間を持て余しているようなので、協力をお願いしてみました」


「そ、そうですか……それじゃあ、俺は調合室に戻りますんでよろしくお願いします」


居間になだれ込んでくるお年寄り達にフォトンは眉間にしわを寄せるがミレットはこのようになった過程を話す。

ジークは苦笑いを浮かべながら頷くと栄養剤の調合をするために居間を出て行こうとし、ノエルはジークの手伝いをしようと思ったようで彼の隣に並ぶと2人で屋敷を後にする。


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