第834話
「しかし、自分達の都合で王族まで手にかけるつもりか?」
「……そう言う事もあるのかもな。ガートランド商会は手段を選ばないし」
「そうですね。敵と判断すればどのような手段も使ってきますし」
ガートランド商会の息がかかっているとしても王族であるライオを手にかけるのは危険すぎるのではないかと思ったようでバーニアは首を傾げる。
ジークはカインとシュミットからガートランド商会が隣国であるザガードとも懇意にしていると聞かされているためか乱暴に頭をかく。
フォトンはザガードとのつながりを知らないため、ジークがフォルムの現状を言っていると思ったようで眉間に深いしわを寄せた。
「ちょっと待てよ。エルト王子もライオ王子を指示しているんだよな。こんなところで何をしているんだよ?」
「何って、ジーク達の手伝いかな?」
「……どうして、こんなに軽いんだろうな」
ジークはエルトにも危険が及ぶ可能性を考えて王城に戻った方が良いと言うが、エルトは気にする事無く笑っている。
彼の危機感のない姿にバーニアは眉間にしわを寄せるとフォトンはなんと言って良いのかわからないようで苦笑いを浮かべた。
「これでも私はきちんと護衛をつけているよ。最近は父上も叔父上も私が城下町を歩き回る事を止めるのを諦めたみたいだからね」
「……諦めたみたいって、それで良いのか?」
「護衛ってどこにいるんだよ?」
エルトは自分に危険が及ばないように心掛けていると言うが、彼の行動は王族として疑問の残る物であり、バーニアは大きく肩を落とす。
ジークは護衛と聞くがエルトの護衛の気配が感じられないようでため息を吐いた。
「少し離れたところにね。使い魔を持っている優秀な魔術師だよ」
「優秀な魔術師? ……大丈夫なのか?」
「どうして、不安そうな表情をするかな?」
護衛は使い魔でエルトを観察しており、何かあった時にすぐに対処できるくらいの距離を取っているようである。
しかし、優秀な魔術師と聞いたジークの眉間には深いしわが寄り、エルトは意味がわからないと言いたいのか大きく肩を落とした。
「いや、俺が知っている使い魔を持っている魔術師はカイン以外だと、使い魔を子供達に連れ去られて半泣きになっているような人間だったからな」
「……確かに小動物が多いからね。子供に捕まる可能性は高いよね」
「それは酷く不安になる状況だな」
ジークはルッケルでの武術大会の時に運営の手伝いをしてくれていた魔術師の事が頭に浮かんだようであり、苦笑いを浮かべる。
エルトはジークの言いたい事が理解できたようで苦笑いを浮かべるとバーニアは大きく肩を落とした。
「でも、使い魔の扱いにはなれているから、問題はないと思うよ。マグス家ゆかりの人間だし」
「マグス家? って、面倒な家じゃないのか?」
「あれ? ジークはマグス家を知っているのかい?」
エルトは護衛の人間に信頼を置いているようで問題ないと笑うが、彼の口から『マグス家』と聞かされてジークは眉間にしわを寄せる。
ジークがマグス家の事を知っていた事にエルトは首を傾げるとジークは小さく頷く。
「この間、カインからティミル様の実家がマグス家に連なるって聞いた……後、おっさんとは仲が良くないって」
「それに関して言えばマグス家当主に問題があるけどね。いくつか面倒なところはあるけど優秀だよ。本家に近すぎなければそれなりに柔軟な考えを持っている人間も居るし」
「そうなのか?」
ジークはどこまで話して良いのかわからずに自分が知っているマグス家の情報を話す。
エルトは苦笑いを浮かべるとマグス家全体が同じ考えの下では動いていないと告げる。
その言葉にジークは首を傾げるとエルトは頷いた。
「ライオの方にも警護は付けているけどね。ライオは魔術師だから気が付いたら逃げられるかもね」
「自分が逃げるからって、ライオ様も逃げるとは限らないぞ」
「いや、逃げるだろ」
エルトはライオにも魔術師をつけていると言うが、彼の行動力を知っている事もあり、眉間にしわを寄せているとバーニアは首を横に振る。
ジークはライオのおかしな行動力の被害に遭っている事もあり、エルトを師事するとエルトは小さく頷いた。
「どうして、あんな風に育ったのかな?」
「……血じゃないか」
「似た兄弟だよな」
エルトはもう少しライオにも自重して欲しいと言いたいようで大きく肩を落とすがジークとバーニアはエルトが言って良い言葉ではないと思ったようで眉間にしわを寄せる。
「ジーク、これでセスさんから頼まれた物は揃え終えましたけど」
「あ、すいません。結局、フォトンさんにすべてさせてしまいました」
「いえ、問題はありませんよ。私はカイン様に仕える身ですから」
その時、セスから頼まれていた物を全て揃ったようでフォトンがジークを呼ぶ。
ジークは手伝いもしないでエルトと話し込んでいた事にバツが悪そうな表情をするがフォトンは気にする必要はないと笑う。
「フォトン、私に仕える気はないかい?」
「……いきなり、勧誘するな。だいたい、エルト王子にはエルト王子に仕えてくれる人間だっているだろ」
「そうなんだけどね。昔から仕えてくれているせいか、私への扱いがおざなりなんだよね」
文句1つ言わないフォトンの様子にエルトは感動したようで彼の手を握り、自分の臣下にならないかと誘い出す。
その様子にジークは大きく肩を落とすとエルトは自分に仕えている人間の自分へ対する扱いが悪いと不満を漏らし始める。
「……扱い方を心得ているんだろうな」
「そうだな。ジーク、目的を達したなら早いところ撤収しないか? ライオ様に見つかると面倒なんだろ」
「ああ、だけど……狙われている可能性があるなら、このままにしておくわけにはいかないよな。王城まで送る」
エルトは不満げだがジークとバーニアは彼に仕える者達の言い分も理解できるようで苦笑いを浮かべた。
2人の反応にエルトは納得が行かないと言いたいのか大袈裟に肩を落とすとバーニアはこれ以上の面倒事は遠慮したいようで撤収しようと提案する。
ジークはその提案に頷くものの、護衛が付いているとは言え、エルトと魔術学園で別れるのは危険と判断したようで彼を王城まで送ると言う。