第83話
「失礼します……生きてます?」
「……あぁ」
ジーク達は宿を出ると1つの診療所を訪ねる。ジークは中の様子をうかがうと白衣を着た男性が机に突っ伏して、消えそうな声で返事をする。
「忙しいみたいですね」
「……残念な事にな」
男性の姿に苦笑いを浮かべるジーク。彼の言葉に男性は起き上がると面倒そうに頭をかいた。
「で、ジーク、こんなに時期、何のようだ? 金の匂いにでもつられた……か?」
「は、はじめまして。ノエリクル=ダークリードです」
男性はジークが薬を売りつけに来たと思ったようで悪態を吐くが、その視線がノエルで止まる。視線に気が付いたノエルは慌てて頭を下げる。
「あぁ……嫁を見せびらかしにきたのか? ばあさんも草葉の陰で喜んでるだろうな」
「……違う」
男性はジークとノエルの顔を交互に見た後に、1つの答えを導き出す。しかし、ジークはその答えを直ぐに却下した。
「……何だ。つまらん。フィーナ、睨むな」
「別に睨んでないですよ」
ジークの反応に男性はつまらないとため息を吐くとフィーナに視線を向ける事なく、声をかける。フィーナはその言葉に満面の笑顔で返すがその目は笑っていない。
「あ、あの」
「あぁ。ジークが紹介しているわけがないな。リック。『リック=ラインハルト』、見ての通り、医者だ。で、ジーク、さっさと、持ってきたものを見せろ。また、いつ、患者が来るかわからないからな」
「うーっす」
リックはノエルに向かい、簡単に自己紹介をするとジークの商品を覗き込む。
「……ジーク、まけろ。正直、手持ちが足りない」
「いや、こっちも生活がかかってるんで、これ以上は無理です」
「お前が値段を下げる事で、助かる人間が増えるんだぞ。サービスしろ」
ジークとリックの値段交渉は平行線になっており、リックは折れないジークに泣き落としにかかり始める。
「ジークさん、リックさんの言う通りです。ジークさんのお薬で多くの人の命が助かるんです。ここはサービスするべきです」
「ノエル、良く言った。ジーク、嫁にここまで言わせておいて、お前は何も感じないのか?」
「……だから、ノエルは嫁じゃない」
泣き落としはジークではなく、ノエルには有効的であり、彼女を味方につけたリックはジークを責める。ジークはリックの言葉に大きく肩を落とした。
「値引いても良いんですけど、俺も俺で大変なんですよ。1人居候を抱えて、魔導銃も壊れちゃったから、修理するために金が必要なんです」
「……ずいぶん、派手に壊れたな」
「ええ。ちょっと、硬い物を打ち抜くために最大出力でぶっぱなしたんで、それでカーカスさんに修理する鉱石を買いにきたんですよ。今の状況じゃ、いくらかかるかわからないだろ?」
ジークは壊れた魔導銃を取り出すと、リックは魔導銃の破損状況に眉間にしわを寄せる。
「鉱石な……ジーク、値引きしてくれたら、人を紹介してやる。今は状況が状況だ。鉱石が高騰していても俺が口利きをすれば、高騰する前の値段、もしくはそれ以下で買えるようにしてやる」
「交換条件って事ですか?」
リックはジークの状況も理解したようで新たな条件を提示した。