第823話
「……そうか。ノエルはダメか」
「そんなに飲んでないと思うんですけどね。そうですよね。シーマさん?」
「そうですね……そんなに飲ませてはいないと思います」
朝食を終えてから調合室で備品の確認をしていたジークとミレットにフィーナとシーマが合流する。
フィーナからノエルの状況を聞いてジークは困ったように頭をかいた。
ミレットは昨晩のノエルの飲酒量をシーマに確認するが、シーマは完全にお酒に飲まれていたようで覚えていないのか視線をそらす。
「……覚えてないの?」
「なんか、ラミア族は酒に弱いくせに大好きらしい」
「そうなんだ」
シーマの様子にフィーナは首を傾げるとジークはフォトンから聞いたラミア族の特徴について説明する。
フィーナは話を聞いて苦笑いしか浮かばないようであり、シーマは知られてしまった事にバツが悪いのか視線をそらしたままで頷いた。
「それじゃあ、私はテッド先生に時間を貰って、ノエルの様子を見に行きましょう」
「お願いします」
「それでは私達も行きましょう」
シーマの様子にミレットは苦笑いを浮かべると彼女は休憩時間にノエルの様子を見て行ってくれると言う。
彼女の提案はジークにはありがたく、深々と頭を下げるとシーマは居心地が悪いようで森に行こうと声をかける。
「えーと、もう少し待ってください」
「何? 速く済ませたいんだけど」
「いや、一緒に行きたいって言う人がいて、その人の方はもう少し時間がかかるって言うから」
ジークは首を横に振るとフィーナは怪訝そうな表情で聞く。
苦笑いを浮かべたジークはもう少し時間がかかると思ったようで手を止めていた備品の確認を再開する。
「一緒に行きたいって……変な人も居るのね。わざわざ、何で森の中に行きたがるのよ?」
「セスさんが他にもサンプルを集めて欲しいみたいで、それでその人に説明中なんだよ」
「サンプル集めならジークが覚えれば良いんじゃないの?」
フィーナは信じられないと言いたいようで大袈裟に肩を落とすとジークはセスの代わりの人が来ると言う。
その言葉にジークがセスから話を聞けば良いのではないかと首を捻るが、ジークは視線をそらす。
「……何があったのよ?」
「サンプルの注文がかなり多くてジークは覚える事を逃げ出したんですよ」
「情けないわね」
彼の様子にフィーナは眉間にしわを寄せるとミレットは苦笑いを浮かべ同行者の増えた理由を答える。
フィーナはジト目でジークの顔を見るとジークは困ったようで鼻先を指でかいた。
その姿にフィーナは自分の事は棚に上げて努力くらいしろと言いたいのかわざとらしいくらいに大袈裟に肩を落とす。
「……仕方ないだろ。もの凄くこまかかったんだから、日の当たり方も確認してとか、想像していた以上なんだよ」
「それは仕方ないわね……だけど、そのセスさんの注文を覚えられる人がいるの? 凄く細かそうよ」
「実際、凄く細かいんだよ」
ジークはそれなら、フィーナが聞いて来いと言いたいようで調合室のドアを指差す。
その言葉の意味をフィーナはすぐに理解したのかすぐに首を横に振った後、セスの性格を考えて無理難題が押し付けられそうだとため息を吐いた。
フィーナが自分の言いたい事を理解してくれたと思い、弱音をこぼすとミレットは2人の姿を見て苦笑いを浮かべている。
「それじゃあ、誰が一緒に来るの? ……と言うか、セスさんが来た方が早いんじゃない?」
「セスさんも忙しいからな。それに無理させているし、体調崩しかけている気もするからな」
「流石にセスさんの体力では難しいでしょう。徹夜もしているわけですし」
フィーナは話をするより、セスが直接来た方が良いと考えたようで首を捻ると彼女に負荷をかけていると思っているジークは困ったように笑う。
ミレットもセスの体調を心配しているようであり、彼女の言葉に納得したのかフィーナは頷く。
「確かにミレットさんの言う通りよね」
「……フィーナ、お前、俺の言葉を信じてなかっただろ?」
「当然でしょ。ジークより、ミレットさんの言葉を信用するわ……来ないわね」
フィーナが頷いている姿にジークは何か納得が行かないようで眉間にしわを寄せた。
ジークの機嫌など知った事ではないと言いたいのか、フィーナはため息を吐くと同行者が来ないか気になるようでドアへと視線を向けるが、都合よくドアが開く事はない。
「そんなに都合良く行くわけがないでしょ」
「わかっているわよ。それで、結局、誰が来るの?」
「フォトンさん……シーマさん、今、明らかに顔色が変わりましたね」
シーマはフィーナを見てため息を吐くとフィーナは不満そうに頬を膨らませた後、同行者に付いてもう1度聞く。
同行者はフォトンのようでジークが彼の名前を上げるとシーマの顔色が明らかに変わった。
ジークはそれを見逃す事はなく、苦笑いを浮かべるとシーマはそんな事はないと言いたいのかそっぽを向く。
「シーマさんはフォトンさんが苦手みたいですね」
「そんな事はありません」
「……まぁ、小言を言われるのは面白くないわよね」
シーアの顔を見て、ミレットはくすくすと笑うとシーマはすぐに否定をする。
フィーナはシーマがフォトンを苦手にしている理由を察したようで眉間にしわを寄せた。
「執事の家系だからな。忠告はあるだろうからな」
「ですね」
「だから、違うと言っているじゃないですか!!」
ジークは2人の関係性を考えてうんうんと頷くとミレットは同調するように頷く。
3人にフォトンを苦手としている事が見破られたシーマはそれでも否定しようとテーブルを両手で叩き、勢いよく立ち上がった。
「……シーマ様、その行動は淑女としてどうかと思いますが、今はカイン様が領主となっていますがシーマ様はフォルムの地を治めていた由緒ある家系。そのような態度は良くありませんね」
「フォ、フォトン?」
シーマが勢いよくテーブルを叩いた時にフォトンは調合室の前まで来ていたようで中の騒ぎを聞き、ドアを開く。
ドアを開くなり、フォトンは淡々とした口調でシーマに注意をすると彼の登場にシーマの顔は引きつった。
「タイミング良いな」
「そうですね。フォトンさん、話の流れですから、怒らないで上げてください」
「……わかりました」
2人の様子にジークは苦笑いを浮かべるとミレットは2人の間に割って入る。
フォトンはミレットの顔を立てようと思ったようで頭を下げると彼の後ろでシーマはほっと胸をなで下ろした。