第82話
「地震多発での崩落事故か?」
「そうだよ。あんた達の村も同じだろ?」
ジルの料理を食べながら、ルッケルの鉱山に起きている事を聞く。ルッケルが閑散としているのは先日から続いている地震の影響のようで事故が多発し、鉱石の採取量が落ちているせいだと知る。
「確かに、そのせいで、遺跡の奥が開いたわけだし」
「ジルさん、それじゃあ、鉱石はやっぱり高いよな?」
「そうだね。やっぱり、高くなってるよ」
フィーナは村でも地震があるため、頷くとジークは目的の鉱石を買えるかわからなくなってきたと頭を抱える。
「うーん。まぁ、あまり喜びたくはないけど、事故のせいで薬関係も高騰しているから、診療所に顔を出しな。ジークの薬の効果はこの辺じゃかなりのものだからね。いつもより高く買い取ってくれると思うよ」
「それじゃ、それに期待するか? ジルさん、ごちそうさま。相変わらず、美味かったです」
「そう言ってくれると嬉しいね」
ジークは食事を終えるとジルに感想を言って立ち上がった。
「ちょ、ちょっと、ジーク、1人で行く気? 待ってなさいよ」
「わかってる。部屋に荷物を置いてくるだけだ。だいたい、ノエルを1人にして行ったら、迷子になるだろ」
「それもそうね」
ジークはノエルとフィーナが食事をしている間に荷物を部屋に置いてくるつもりのようで荷物を持つと宿泊室になっている2階に上がって行く。
「相変わらず、気の利く良い男だね」
「そうですか?」
ジークの背中を見送ったジルは彼の成長を嬉しく思っているようでくすりと笑う。しかし、フィーナはジークをほめたくはないようで悪態を吐いた。
「そして、フィーナ、あんたも相変わらずだね。そんな事をやってると、そっちのノエルちゃんに取られるよ」
「べ、別に私は!?」
「そ、そうです。わ、わたしは別に!?」
ジルはノエルとフィーナをからかうと2人そろって顔を真っ赤にして否定する。
「まぁ、別にあたしが言うような事でもないけどね。素直にならないとどっちも後悔するような事はするんじゃないよ」
「そ、それは」
ジルは若い2人をからかうのが楽しい反面、2人を可愛がっているようで優しげな笑みを浮かべた。ノエルは彼女の表情に小さく頷くがフィーナはそっぽを向く。
「ノエルの方が見込みがありそうだね。他人の話を聞けるのは良い事だよ。ジークは気が短いから、何度も同じ説明は嫌いだろうしね」
「た、確かにそうですね」
ジルはフィーナの様子にため息を吐くと、自分の持っているジークの性格について話し、ノエルも彼と生活して1週間も過ぎたため、いくつかジークの性格を理解してきているようで苦笑いを浮かべながら頷く。
「2人とも、まだ時間がかかるか?」
「ジ、ジーク? ど、どこから、湧いて出てくるのよ?」
「どこからって、普通に部屋から戻ってきただけだろ。フィーナ、お前は何をわけのわからない事を言ってるんだ?」
ジークが部屋から戻ってきて、2人に声をかけるとフィーナは驚きの声をあげる。しかし、ジークは彼女の反応に呆れたような表情をする。