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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第810話

「……今更だけど、ここって何なの?」


「俺に聞くな。だいたい、カインは人を呼び出しておいてなんで自分の書斎にも資料室にもいないんだよ」


ミレットの協力を得て、シーマに見つからないように屋敷を脱出したジークとフィーナは前領主の屋敷に到着すると書斎や資料室を訪ねるがカインの姿はない。

そのため、カインを探して部屋のドアを開けるがカインやセスの姿は見つからず、それどころか今まで見た事の無い怪しげな物も置いてあり、フィーナは眉間にしわを寄せている。

彼女とジークも同意見なのだが、それよりもカインが見つからない事に大きく肩を落とす。


「だいたい、なんで誰もいないのよ?」


「一応、仕事時間は終わっているからな。みんな帰っているんだろ。俺も調合で遅くなった時はこんな感じだからな」


「さっさと出てきなさいよ!! 時間の無駄でしょ!!」


2人がここに到着してからは誰ともすれ違っておらず、カインの居場所も聞けないため、フィーナは口を尖らせる。

ジークは体験談からこんなものだとは思いながらも、解決策を探そうと思ったようで首を捻った時、フィーナは我慢ができなくなったようで声を張り、カインを呼ぶ。


「……お前、大声を上げるなら、先に言えよ」


「何よ?」


「耳がおかしい。耳鳴りがしている……誰かいるな」


ジークはフィーナの行動を予想していなかったようで直撃してしまったのか眉間にしわを寄せた。

フィーナはジークの様子に文句がありそうだが、ジークは耳鳴りがしているようで耳を押さえているが何かの気配を感じたようで首を捻る。


「ホント?」


「おい。フィーナ、走るのは良いけど、ひっくり返すなよ」


その言葉にフィーナは駆け出すとジークは彼女の突然の行動に驚きの声を上げるが、すでにフィーナの耳には届かない。

彼女の様子にジークは大きく肩を落とすとまだ耳鳴りがしているようで耳を押さえながら、彼女の跡を追いかけて行く。


「……ねえ。生きている?」


「フィーナ、突いてやるな」


フィーナは廊下の曲がり角を曲がると会談があるのだが、階段の側には1人の男性が倒れている。

どうやらフィーナが大声を上げた時に驚いて階段から落ちたようで白目をむいており、フィーナは反応を見ようと思ったのか指で男性の頬を突く。

2人の様子に追いついたジークは大きく肩を落とすと男性の様子を見るために運んできた荷物を廊下に下ろした。


「ねえ。なんで、この人、気絶しているの?」


「……フィーナが大声を上げた時に足を踏み外したんだろ」


「何それ。どんくさいわね」


男性の様子をジークが見始めるとフィーナは男性が気を失っている理由が理解できないようで首を捻る。

原因はフィーナにあると言うジークだが、彼女は自分が悪いとは全く思っていないようでため息を吐いた。


「起きなさいよ。早くしないとジークの毒薬の餌食よ」


「何度も言わせるな。毒薬じゃない」


「それで、この人は大丈夫なの?」


ジークが男性の診察をしているなか、フィーナはつまらないのか、気を失っている男性に声をかける。

彼女の言葉はジークにとっては我慢ならない言葉であり、フィーナを睨み付けるが彼女が気にする事はない。


「とりあえずは問題なさそうだけど」


「ジーク、フィーナ? フォトンさんはどうしたんですか?」


「知らないわ。私とジークが来た時には気を失っていたから、階段を踏み外したんじゃない?」


診察した限り、男性には外傷はなくジークは彼を壁に寄りかからせた時、階段の上から足音がする。

足音に気づき、2人は視線を移すと階段を降りてきた人物も2人に気が付いたようで首を捻った。

階段から降りてきたのはセスであり、男性の様子に気が付き2人に聞くとフィーナは迷う事無く、原因は自分にはないと言い切り、ジークは眉間にしわを寄せる。


「そうですか? フォトンさんは少し鈍いところもありますからね」


「私のせいじゃなかったでしょ」


「……とりあえず、セスさん、この人はどこに運んだらいいですか?」


セスはフィーナの言葉に納得したようで小さく頷くとフィーナは自分のせいではなかったと得意げに胸を張った。

しかし、ジークの中では原因はフィーナであるため大きく肩を落とすとセスに男性をどうすれば良いかと聞く。


「一先ずは研究室ですね。付いてきてください」


「待ってください。俺がこの人を運ぶんで、セスさん、これをお願いして良いですか?」


「これ? ……何も起きていません」


セスは案内をすると言い、階段を上って行こうとするがジークは彼女を引き止めると足元に置いてある夕飯が入ったカバンを指差す。

ジークの指の先を視線で追ったセスのお腹の虫はタイミング悪く悲鳴を上げ、セスの顔は真っ赤に染まる物のすぐに表情を引き締めると笑顔で圧力をかける。


「別に何も言いませんよ。カインから頼んだ事の調査に時間がかかりそうだって言うから、夕飯を運んできたんですよ」


「そうですか。とりあえずは預かります。それではついてきてください」


ジークはバカにする気はないとため息を吐くとフィーナとここに来た理由を話しながら男性を背負う。

セスは何事もなかったように階段を1度降りるとカバンを手に取り、再び、階段を上って行き、ジークとフィーナは彼女の後を追いかける。


「セスさん、この人、フォトンさんって言いましたか?」


「ジークは会った事が無かったですか?」


「ないですね。俺、ここに来ると基本的に調合室にこもりっぱなしなんで」


研究室に向かう中、ジークは背負っている男性の事をセスに尋ねる。

その質問にセスは振り返り、聞き返すとジークはまったく記憶にないとため息を吐いた。


「確かにジークはそうかも知れませんね。フィーナはどうですか?」


「知らないわ」


「……そうですか」


セスはジークがここにいる時の事を思い出すと納得したようで小さく頷いた後、フィーナにも確認をする。

彼女は迷う事無く、知らないと言い切るとセスは眉間に深いしわを寄せた。


「フィーナ、お前は会った事があるみたいだぞ」


「嘘? 知らないわよ。こんな人」


セスの様子にジークはフィーナと面識があると思ったようでため息を吐くが彼女はまったく男性の事が記憶にないようで首を横に振る。


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