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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
807/953

第807話

「……どういう事か説明していただけますよね?」


「立ち話もなんだから、中に入ろうか。ジーク、調べ物があるんだから逃げないように」


「……わかっているよ」


一通り、白い花の群生地とその周辺を調べ終えたジーク達はカインの転移魔法でカイン達が仕事場にしている元領主の屋敷に移動する。

そこには当然のように怒りの表情のセスが立っており、ジークとフィーナは困ったように笑うがカインは気にする事無く、奥に進んで行く。

その様子にセスはすぐに後を追いかけるが、ジークとフィーナは巻き込まれたくないため、付いて行こうか悩み始める。

しかし、カインは2人の考えなど見透かしているためか、振り返る事無く、2人に付いてくるように言い、2人はしぶしぶ、カインとセスの後ろに続く。


「それで、仕事を投げ出した理由を聞かせて貰いましょうか?」


「別に投げ出したわけではないけどね。働いてきているし……セス、土地の管理状況をまとめていた資料ってどこにあったかな?」


「……カイン、せめて、答えてからにしないか? セスさんの視線が痛いんだけど」


カイン先頭に普段はギドが仕事場にしている資料室に入った。

セスは改めて、仕事を投げ出した理由を追及するがカインは考えている事があるのか本棚から資料を探し始める。

2人の様子にジークは大きく肩を落とすがカインは気にする事無く、資料を手に取って行く。


「……私の話を聞いていますか?」


「ジーク、セス、森の中の土壌開拓について書かれている所がないか探して、フィーナはそこの本棚から本を運ぶ。ほら、キリキリと動く」


「わかったわよ。この本棚ね」


セスの額にはくっきりとした青筋が浮かんでいるが、カインは気にする事無く、指示を出すと手に持っていた資料をテーブルの上に置く。

フィーナは資料を読む事は手伝えないと理解しており、面倒な事を押し付けられるより、素直に従った方が良いと判断したようでカインの指示のあった本棚から資料を運ぶ。


「土壌開拓?」


「ちょっと遠いんですけど、森の中に良い土がある場所があったんです」


「森の中に? ……何をしに行ってきたんですか? 巨大蛇の進入路を調べに行ったんじゃないですか?」


セスは意味がわからないようだが資料を1冊手に取るとページをめくる。

ジークはこのままではセスの協力を仰げないと思ったようで簡単な説明を行う。

しかし、ジークの説明は最初の目的から離れているように感じたようでセスは眉間にしわを寄せた。


「蛇除けは生えていたわよ。そこの土が少しフォルムの土と違ったみたい」


「そうなんですか?」


「規模から考えても他人の手が加えられている気がしたからね。前領主はやってないと思うけど、もっと前の領主が何かやってなかったかな? と思ってね」


フィーナは自ら蛇除けの効果を確認したためか、大きく肩を落とすがセスの疑問に答えるように言う。

セスは驚いたような表情をするとカインは以前領主が何か対策を立てていたのではないか調べに来たと答える。


「そうですか……一先ずは遊んでいたわけではなさそうですね」


「信用ないな」


「……確かにないだろうな」


セスはカインへと疑いの視線を向けながらも納得したようでイスに腰を下ろし、資料からカインが探そうとしている物を探す。

彼女の言葉にカインはため息を吐くが、使い魔と居場所を交換した理由が他にある事もあり、ジークは眉間にしわを寄せる。


「その土は無いんですか?」


「持ってきていますけど、どうするんですか?」


「調べてきます。資料を探すのは他の人に任せましょう」


しばらく、資料を探していたセスだが、問題の土が気になったようで首を傾げた。

ジークは白い花が生えていた場所以外にもサンプルとして何カ所かの土を持って帰ってきており、首を捻りながらセスの前に置く。

セスは土のサンプルを手に取ると資料室を出て行こうとする。


「他の人?」


「ジークは薬草を作っているから、土が違うと言うのは間違っていないと思いますけど、成分等がわかれば調べ事をするにも役に立つでしょうし」


「確かにそうだね。セスにはそっちを任せるよ……ジークもそっちの方が良い?」


フィーナは首を傾げているとセスは振り返り、調査の重要さを話す。

カインは彼女の意見に反対する理由もないため、セスに調査を任せるとジークへと視線を移した。

ジークは少し資料を見ただけで完全に飽きており、欠伸をしており、カインは大きく肩を落とす。


「……そうだな。そっちの方が良いかな」


「それなら、ジークはフォルムの人達に話を聞いてきてくれませんか? 先々代の領主様が行っていた事なら、協力していた方もいるでしょうし」


「そうだな。そっちの方が向いてそうだな。テッド先生のところには知ってそうな人達が集まっているだろうし」


ジークは資料よりは面白そうだと考えたのか立ち上がるとセスは他の案を提案した。

セスの提案にジークはノエルの事も気になるようで素直に頷くと資料室を出て行こうする。


「……追い払ったわね」


「そうではありません。ジークもノエルの事や最近は診療所の手伝いもしていませんでしたから、心配事もあるでしょう」


「まぁ、良いわ。ジーク、私も行くわ」


セスの提案の意味をフィーナは理解したようで小さくため息を吐くとセスは首を横に振った。

フィーナはセスの本心よりもカインとこの場に一緒にいるのがイヤなため、ジークの後を追いかけて行く。


「……逃げたね」


「逃げるでしょうね。それより、カイン、あなたもこの調べ物は他の人に任せて逃げる前の仕事に戻ってください」


「いや、優先度としてはこっちの方が高いと思うんだよね。ジークが前に植物のリストは作ってくれたけど、生育もあまり良くないみたいだし、何か見つかるかもしれない」


ジークに追いつき、資料室を出て行ったフィーナの背中にカインは小さなため息を吐くとセスはフィーナの気持ちもわかると言いたいようでカインをジト目で見る。

セスからの視線にカインは視線をそらすが、彼にも考えがあるようで首を横に振るとセスは少し考えた後、小さく頷くと資料室を出て行く。


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