第796話
「それが答えかも知れないぞ」
「答えかも知れない?」
「……察しが悪いな」
フィリムは巨大蛇が現れなくなる理由を答えだと言う。
しかし、ノエルは言葉の意味がわからなかったようで首を捻ると彼女の様子にフィリムは眉間にしわを寄せる。
「すいません」
「……ノエル、お前もジークの店を手伝っているのだろう。それなら考えればわかる事だろう?」
「フォルムの場合は蛇が街に近づいてこない時期は蛇が苦手な薬草が生えるとかじゃないかな?」
ノエルは怒られていると思ったのか慌てて頭を下げた。
フィリムは謝るのではなく、考えろと言いたいようで口をつぐんでいる。
ノエルはフィリムの言いたい事がわからないようでオロオロと周囲を見回し助けを求めようとし始め、ライオは話が聞こえていたようでフィリムの言いたい事を代弁する。
「そうなんですか?」
「絶対にそうだとは言えないが、調べる価値はある」
「で、でも、仮にそれで巨大蛇をフォルムに近づかないようにできても、その時期以外はどうしたら良いんですか?」
ノエルは視線をフィリムに向けると彼は森の中がどのようになっているかわからないため、調べる必要があるのではないかと言う。
それでもノエルはその答えが合っているのかわからないようで首を捻っている。
「その時期以外に対応できる物が有れば、それも育てれば良いんじゃないかな? これだけ、蛇が嫌がる植物があるわけだしね」
「後は材料さえ揃えれば一時的なら、ジークが蛇除けでも作るだろうからね」
「作り方もあるし、ジークなら、喜んで作るんじゃない? 王都周辺の蛇除けも作って貰おうかな?」
フィリムは開いていた研究書を指差すとそこにはびっしりと蛇除けの方法が書かれており、蛇除けに有効な植物は複数記されている。
ライオは蛇除けの薬の調合もジークの興味が引くものだと確信しているようで苦笑いを浮かべた。
「……作りそうです。最近はカインさんやワームの件で振り回されていて地味にストレスがたまってそうですし」
「それを癒すのはノエルの役目なんじゃないかな?」
「そうだな」
最近のジークの働きに口には出さないけれどストレスがたまっている事はノエルの目にも見て取れているようで大きく肩を落とす。
ライオはノエルをからかうように笑うとフィリムは特に興味がなさそうに相槌をし、その言葉にノエルの顔は真っ赤に染まって行く。
「こういうのを見ていると少し羨ましくなるね」
「そう思うなら、研究だけではなく興味を示して見たらどうだ? 第2王位継承者なんだ。婚約者が欲しいと言えば、すぐにでも候補者が出てくるだろう」
「フィリム先生、そう言うのではないんですよ。権力や欲にまみれたものは遠慮したいんですよ」
ライオは苦笑いを浮かべているとフィリムは婚約者を探せば良いと言う。
フィリムの言葉にライオはため息を吐くと彼なりに恋愛観があるようで首を横に振った。
「そうですよね。恋愛ってもっときれいな物ですよね!!」
「そうだね」
「そうなんです。ライオ様はそう言う人はいないんですか? 魔術学園に通っているわけですし、そう言う人の1人や2人」
ライオの言葉は触れてはいけないものであり、その一言でノエルには火が点いてしまう。
それを知らないライオはうんうん頷くとノエルは理解を得られた事に大きく頷いた。
「1人はまだしも2人いるのは不味いんじゃないかな? ノエルも恋愛はもっときれいな物だって言っているんだから」
「そ、そうですね。それは言いすぎでした……それで、そう言う人は?」
「いない事もないけどね。相手の気持ちもわからないし、なかなか、会う事もできないしね」
ライオは苦笑いを浮かべてノエルの言葉を訂正させると想い人はいるようで少しだけ困ったように笑う。
その言葉はノエルにとっては興味深い物であり、目をらんらんと輝かせ始める。
「あれ? これはおかしな方向に進んでいるのかな?」
「だろうな」
「ジーク、助けてくれないかな?」
ノエルの様子にライオはさすがに不味いと思ったようで顔を引きつらせた。
フィリムは興味がないようで小さく頷くとライオは考え事をしているジークに助けを求める。
「……何だよ。俺は忙しいんだよ」
「忙しいのはわかるよ。でも、ノエルを止められるのはジークだけなんじゃないかな?」
「……無理だな。諦めろ」
ジークは考え事の途中で止められた事にムッとした様子で返事をするとライオはノエルを指差して言う。
彼女の様子にジークは状況を理解できない物の彼女をなだめる事は無理だと判断したようで首を横に振る。
「……諦めるのが早くない?」
「この状態のノエルの説得は無理だって言うのはこの間、理解した」
「そうなの? ……困ったね。ジーク、話が進まないから、いつもラースとかにやっているように」
ライオはもう少し頑張れと言うが、先日の魔族の集落からノエルに火をついた時に止める術の無いため、完全に諦めている。
彼の言葉にライオは首を捻ると冷気の魔導銃で動きを止めてはどうだと言うが、ジークは首を横に振った。
「ジークの線引きはどこなんだろうね……やっぱり、愛?」
「いや、冷気の魔導銃を使うのって基本的にフィーナ、おっさん、アノス、カルディナ様くらいだぞ。なんか頑丈そうだろ? ノエルは風邪をひきそうだ」
「……カルディナが入っているのはどうかと思うけど、頑丈そうではあるね」
ライオは眉間にしわを寄せるとジークをからかうように言うが、ジークは首を横に振ると人は選んでいると答える。
ジークの人選にライオは眉間にしわを寄せたままだが、否定はできないようで小さく頷いた。
「それより、解決策は見つかったのか? そろそろ私も自分の研究に戻りたいんだが、くだらない事で時間を取るなら帰れ」
「……とりあえず、ノエルは無視して話を続けよう。ジーク、フォルムに出る蛇と王都周辺に出る蛇との共通点は無いかな? あるなら、協力できる事があると思うんだ」
「……あったとしても協力したくない」
フィリムはそろそろ、面倒になってきたようで騒いでいるなら帰れと言うとライオは問題が類似しているため、ジークに協力を求める。
しかし、ジークはおかしな事に巻き込まれる気しかしないようで眉間にしわを寄せた。