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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第782話

「……ジーク、機嫌悪そうだな」


「それはね。フォルムにいるとは言え、世話をしに定期的に戻ってきていたわけだし、手間もかけていた物だからね。普通に怒ると思うよ」


「準備ができたのか?」


しばらくすると畑からジークとアノスが戻ってきたのだがジークの表情は険しくバーニアは苦笑いを浮かべる。

ジークは険しい表情のまま、店の奥に入ってしまい、カインは日頃からジークが手間暇かけている事を知っているため、仕方ないと言いたいようで小さくため息を吐いた後、店の中を見回す。

彼の様子にシルドはカインの準備ができたと考えたようで質問するとカインは小さく頷く。

カインは店の中心に立つと彼の足元に小さな魔法陣が浮かび上がり、魔法陣に共鳴するようにカインが棚に置いた道具が光り出す。


「……これ、ずっと光っているわけじゃないよな? 夜中に光ったままだと気持ち悪いぞ」


「そんなわけないだろ」


「それなら良いけどな……ただ、このままだと暗闇の中、店の中でおかしな儀式をしているように見えるぞ」


シルドは魔法陣と言われる物を初めて見るようで眉間にしわを寄せて聞き、カインは小さくため息を吐く。

その言葉でシルドは少し安心したようで胸をなで下ろすと魔法陣の光は小さくなって消える。


「それより、シルドさん、この店は見張ってくれていたはずだけど」


「……覚えていたか」


「朝は聞くヒマがなかったんだよ。ミレットも村の人達もいたからね」


魔法陣の光が消える様子を見たカインは魔法の発動の確認が取れたようで小さく頷いた後、シルドへと視線を向けた。

言葉の端にとげがあるカインにシルドは舌打ちをするとカインは朝に聞くには都合が悪かったと言い、シルドは観念したと言いたいのか大きく肩を落とす。


「警戒はしていたんだよ。だけど、昨日は怪しい気配はなかったって見張っていた冒険者やつらは言っていた。魔法的な事で上手く気配を消していたんじゃないかと思う」


「……魔法ではない」


シルドはジークの店を見張っていた冒険者に話を聞いてくれていたようだが、彼らも明け方まで襲撃には気が付かなかったようで不思議そうにしていたと言う。

聞き取りからシルドは何かしらの魔法が使用されたと思ったようでカインに意見を求めるような視線を向けるとアノスが横やりを入れる。


「その通りなんだけど……」


「ジークが言っていた」


「そう? 確かにジークとアノスがいる頃におかしな気配がしていたって言っていたからね」


アノスは自分が気づけなかった事もあり、忌々しそうに舌打ちをするとカインはジークとの話を思いだしたようで小さく頷く。


「気配が消えすぎていておかしいと言っていたな」


「気配が消えすぎ? 最初から消していたなら、気が付かないかもね」


「……あいつ、絶対に薬屋じゃないよな」


アノスが昨晩の事を思い出しながら言うとカインはそれなりの人間が来たんだと思ったようで難しい表情をする。

話を聞いていたシルドとバーニアは改めて、ジークの実力が薬屋に納まる物ではないと思ったようで眉間にしわを寄せた。


「とりあえずはいくつか、外にも罠を仕掛けておこうか? シルドさん……ジークがる気になっているから、しばらく、冒険者や村の人達にこの店に近づかないように言って置いてくれるかな?」


「……わかった。ルッケルにも誰かを連絡に行かせる」


「そうしてくれると助かります」


ジオスに滞在している冒険者では襲撃してきた人間に対応できないと思ったようで外に罠を設置しようとカインは考えた時、店の奥からジークが戻ってくる。

その手にはアーカス直伝の見るからに攻撃力の高そうな罠の1部が握られており、カインとシルドは村人達の安全を優先して動き出す。


「……あの罠道具」


「どうかしたのか?」


「売れそうだな。あいつ、蛇の解体もすぐに覚えたし、やっぱり、手先が器用だよな」


そんな2人の心配を余所にジークは店の外に出て行ってしまう。

バーニアはジークの手の中の物に鋭い視線を向け、彼の視線にアノスが反応をするがバーニアが考えていたのは罠への商品価値であり、アノスに同意を求める。

アノスは眉間に深いしわを寄せると相手をしていられないと思ったようでジークの後を追いかけて店の外に出て行く。


「しかし、あんなに殺気を駄々漏れにしていて良いのか?」


「良くはないだろうね。だけど、珍しくジークがやる気になっているんだから、見守るのも兄の役目かな? と思って」


「そう思うなら、その胡散臭い笑い方を止めろ」


アノスに無視されたためか、バーニアは1つ咳をするとジークをあのままにしていて良いのかとカインに聞く。

カインは少し考えるとたまにはジークの暴走を見守るのも自分の役目だと言うが、その口元は小さく緩んでおり、シルドは不安を覚えたようで大きく肩を落とす。


「胡散臭いって酷いね」


「だから、その笑顔が胡散臭いって言っているんだ……それで、お前は魔法で何をしたんだ?」


「大きな魔法は2つ。1つは建物自体の強度を上げる魔法、もう1つは……あんまり必要なさそうだけどね。襲撃者を捕縛するためのもの、後は襲撃された時に魔法で何かされていないか確認とか細かい物を少々」


カインはわざとらしいため息を吐くとシルドはこれ以上、言っても仕方ないと思ったようで話を戻そうとする。

先ほどの魔法陣と棚に置いた道具を使った魔法の効果は大きいのは2つのようであり、説明に移るがどうやら1つは襲撃者達を捕らえるためのものであったようでカインは大きく肩を落とした。


「カインの魔法より凶悪なのか? ジークに売れる罠の相談に乗って貰うか」


「バーニア、その話はなし。罠も特殊な物はいろいろと有効だからね。必要な時に簡単に解除される物になっていると困るから」


「……ちっ」


カインの話にバーニアはジークの作る罠の商品価値を上げるがカインはあまりジークの罠を公に出したくないようで首を横に振る。

その言葉に釘を刺されたバーニアは舌打ちをするとその姿にカインとシルドは苦笑いを浮かべた。


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