第778話
「捨ててくか?」
「流石にそれはもったいないだろ」
「だからと言ってもこのままにしておくわけにもいかないだろ。フィーナが無駄に攻撃を仕掛けるから」
ジークは巨大蛇を指差して言うとバーニアは商品価値を見出しているため、首を横に振る。
その言葉にジークは余計な事をしてくれたと言いたいのか凍り付いたフィーナを見るが彼女が返事をする事はなく、大きく肩を落とす。
「まだ、少し歩いただけだし、戻って運んで貰うか?」
「そうしたいけど……絶対にシーマさんに小言を言われる気がするんだよな」
「……ええ、当然、言わせて貰います」
シーマ達が拠点としている場所とはさほど離れていないため、1度、戻る事をバーニアは提案するがジークはシーマの制止を聞かなかった事もあり苦笑いを浮かべる。
その時、彼の背後から怒りを何とか押さえつけているようなシーマの声が聞こえた。
「シーマさん、どうしてここに?」
「あれだけ、フィーナが叫んでいたら、何かあったとわかるな」
「その通りです……一先ずは蛇を仕留めたわけですし、指示に従わなかった事は不問にしてあげます」
シーマの声にジークは顔を引きつらせるとゆっくりと後ろを振り返る。
そこには眉間に深いしわを寄せたシーマと領民が立っており、バーニアは彼女達が自分達に何かがあったと心配してきてくれと思ったようで表情を緩ませた。
彼の言葉にシーマはため息交じりで頷くとすでに解体が終わっている巨大蛇を見た後、説教はしないと言い、ジークは胸をなで下ろす。
「これ、森の外まで運んで貰っても良いか? 骨や鱗以外は好きにして良いから」
「……俺の取り分は無しかよ」
「カインに届けた代金の徴収が終わってないからな」
バーニアはシーマの後ろにいた領民に巨大蛇の移動を頼むと領民達は嬉々とした様子で蛇を運んで行く。
ジークは彼の言葉に不満そうに口を尖らせるが、バーニアは文句があるならカインに言えと笑う。
その言葉にジークは文句を言えなくなったのか乱暴に頭をかき、彼の行動にバーニアは苦笑いを浮かべた。
「それじゃあ、シーマさん、フィーナも預けて良いですか? 正直、邪魔なんで」
「……あなた達も戻りなさい」
「仕方ないか。頼み事もしちまったしな」
ジークはフィーナが凍り付いている間に彼女から離れたいようでシーマに彼女を押し付けようとするがシーマは首を横に振る。
バーニアはため息を吐くとシーマの指示に従う事を約束し、戻るぞと言いたいのかジークの肩を叩く。
「わかったよ」
「しかし……昨日より、小さいとは言え、ずいぶんと簡単に倒しましたね」
「こいつらの鱗や骨は商品になるからな。倒す方法くらい心得ているよ。剣の違いだって文句を言っていたのもいるけどな」
ジークはしぶしぶ頷くとその姿にシーマは小さく頷いた後、運ばれて行く巨大蛇を見て感心したように言う。
バーニアはたいした事ではないと笑うが、すぐに力量ではなく武器の差だと決めつけたフィーナへと視線を向けてため息を吐いた。
「バカだから、仕方ないんだよ」
「……カインも大変だな」
「ジーク、何するのよ!!」
ジークはフィーナをバカだと切り捨てるとバーニアは彼女を扱うカインの苦労を感じ取ったようで苦笑いを浮かべる。
その時、フィーナの身体から氷が剥げ落ち、フィーナはすぐにジークを怒鳴りつけた。
「うるさいのが目を覚ましたな」
「誰がうるさいのよ!!」
「……お前以外に誰がいる?」
バーニアはフィーナを見てため息を吐くとフィーナのターゲットはバーニアに変わってしまう。
ジークは彼女の様子に大きく肩を落とすがまた魔導銃で彼女を凍らせても何も解決しないためかポリポリと指で首筋をかく。
「何よ?」
「自分の剣の腕を武器のせいにしたんだから仕方ないだろ」
「何よ? 私が武器屋より、弱いって言うの?」
フィーナは再び、ジークを睨み付けるとジークは彼女の剣をフィーナに投げて渡す。
フィーナは剣を受け取ると文句が言い足りないようであり、ぶつぶつと文句を言って降り、その姿を見てシーマは小さく肩を落とした。
「……フィーナは何を言っているんですか?」
「思考回路が単純だから、どこを攻撃すれば効果的かとか考えないからな」
「それより、戻らないか? ここでだらだらしているなら、俺は他に行きたいぞ」
シーマは自分の実力不足をカインに指摘されているせいか、それを認めないフィーナに苛立っているようで眉間にしわを寄せる。
ジークは戦闘には効率的に攻める事も大切だと言って彼女を小ばかにするとバーニアは拠点に戻ろうと言い、ジークとシーマは頷き、道を戻ろうと歩き出す。
「待ちなさいよ!!」
「置いてくぞ」
フィーナは3人が居なくなった事に気が付き、慌てて声を上げるとジークは振り返る事無く歩いており、フィーナは3人に追いつこうと急ぎ足で追いかける。
「お帰りなさい」
「ああ、こっちは何もなさそうだな」
「……むしろ、少し歩いただけで巨大蛇と遭遇するお前らの方がおかしいんだ」
拠点に戻るとリアーナが4人を笑顔で出迎える。
ジークは拠点の様子を見回しながら何も起きていない事に安心したように笑うとアノスは先に運び込まれた巨大蛇を見ていたようで大きく肩を落とす。
「俺だって、好きで巨大蛇と戦ったわけじゃない……と言うか、バーニア、お前は巨大蛇の生態を知っているんだから、どの辺に居そうかわからないのか?」
「自分が良く行く場所ならわかるけど、森の中を把握してないんだから無理」
「そうか。良い考えだと思ったんだけどな」
ジークはため息を吐いた後、巨大蛇を武具の材料としているバーニアの知識で巨大蛇を探せないかと聞く。
バーニアは土地勘がないため、無理だと首を横に振るとジークは残念だと言いたいようで苦笑いを浮かべた。
「とりあえず、ジーク、この辺で使える物を探さないか?」
「そうだな」
「バーニア、その前に巨大蛇の解体の仕方をご教授願えないか? それを覚えれば倒すのに役立ちそうだからな」
ジークとバーニアは拠点の周辺で何か良い物がないかと探し始めようとするとオクスがバーニアを引き止める。