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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第773話

「……騒がしいな。本当にフィーナがバカな事をやってないか心配だな」


「叔父上もいるんだ。大丈夫だと思いたいな」


「オクスさんも悪乗りするからな」


森に近づくと騒がしく見え、ジークは眉間にしわを寄せた。

アノスは叔父であるオクスも巨大蛇探索に参加しているため、心配ないと言おうとするが昨日のオクスの行動を見ているせいか、ジークとアノスには不安が残っているようである。


「とりあえず、行ってみないか? ここで心配していても仕方ないし」


「そうだな……」


バーニアは2人の心配が理解できるようだが、ここに残っていても仕方ないため森の奥を指差す。

ジークは頷くとすでに自分が先頭を歩くとわかっているようで前に出ると森の中を進む。


「……ジーク、カインはこの森をどうするって言っていた?」


「どうするって、住居が必要になっているから建物の材料に使ったり、森の中で食材を育てたりのはずだ。何かあるのか?」


「いや……良いものがそろっていると思ったんだ。何本か手ごろなのを貰って行っても良いか?」


森の中に入るとバーニアは木の状態を確認し、ジークにカインの考えを聞く。

ジークはあまり難しい事はわからないため、首を捻り、バーニアは加工すれば商品として使えると思ったようでそばにある木へ触れる。


「転移魔法でどれだけ運べるかわからないから、俺に聞くな」


「それもそうか……しかし、これだけの森になると調べる事が多いだろ」


「それでも調べないといけないってカインが言っていたぞ。フォルムはザガードとの国境が近いから、森に身を隠して入国してくる人間も多いみたいだからな」


転移魔法に重量制限があるため、ジークは自分に言われても困るとため息を吐く。

バーニアは頷いた後、森の中を見回して重労働だと思ったようで大きく肩を落とした。

ジークも同感のようではあるが、ザガードから逃げ込んでくる人間が後を絶たないようで彼らを保護するためにも必要だと言う。


「保護……毒を飲み込むだけでなければ良いがな」


「毒?」


「リアーナも落ち着け。そっちもあおるな。だいたい、仮に毒の可能性があったとしたって、カインは毒のまま飲み込むだけだろ」


アノスはザガードから逃げてきた者達にはスパイがいると決めつけており、不機嫌そうにつぶやく。

そのつぶやきはリアーナの耳にも届いており、彼女は不快感をあらわにして彼を睨みつけるとアノスは睨み返し、2人の間はまたも緊迫した空気が漂う。

背後から感じる2人の不穏な空気にジークは振り返り、視線でバーニアに助けを求めると彼は小さくため息を吐いた後、2人の間に割って入る。


「……カインもだけど、エルト王子も毒のまま、飲み込みそうだな」


「そうですね……」


「あの王子様もなかなか食えないからな」


カインならスパイがいる事を知った上で様子を見ている可能性が高いのは彼を知る誰もが考える事であり、ジーク、アノス、リアーナの3人は眉間にしわを寄せた。

ジークはカインと同様にエルトの顔を思い浮かんだようで彼の名前を出すとリアーナは大きく肩を落として同意を示し、バーニアは苦笑いを浮かべる。


「……笑い事じゃないだろ。もう少し立場を考えてくれないと警護する人間はたまったものではない」


「そんな事は言われるまでもなく、知っている」


「それでもあの王子様も考えて動いているだろうから、ただ、誰がスパイかと疑っているよりは良いんじゃないか?」


アノスはエルトの噂も聞いているようで警備する側からの意見を言うとジークはエルトに何度も振り回されているため、大きく肩を落とす。

バーニアは全てに猜疑の目を向けるより、カインとエルトは考えがあって動いているから信じてみるように言う。


「スパイを捕まえるなら、泳がせて証拠をつかまないといけないからな」


「……叔父上?」


「オクスさん、フィーナと一緒じゃないんですか?」


その時、オクスが4人を見つけて近寄ってくる。

彼の顔を見てジークはフィーナが野放しになっていると思ったようで首を捻った。


「フィーナなら、シーマ殿と一緒だ……今日はまた知らない人間を連れているようだな」


「成り行きで。それで、巨大蛇は見つかっていますか?」


「そうだな。とりあえず、歩きながら話そう。ここで時間をつぶしていても仕方ないからな」


オクスはバーニアとリアーナの顔を見て、首を捻るとジークは苦笑いを浮かべて巨大蛇探索の状況を聞く。

ここで立ち話をするのは時間の無駄だと思ったようでオクスは森の奥を指差して歩き始め、4人は彼の後を追いかける。


「バーニア殿は武具を作っているのか? 機会があれば鍛えた物を見せて欲しいものだ」


「見るだけなら、リアーナが持っている武具は俺が仕立てた物だ」


「ほう……良いものだな」


フィーナとシーマに合流する前にバーニア、リアーナ、オクスをそれぞれに紹介するとオクスはバーニアの鍛えた武具が気になったようで楽しそう笑う。

自分の商品に興味を持って貰うのは嬉しいようでリアーナが店から持ってきた武具を指差す。

オクスは興味深そうにリアーナの鎧と盾を値踏みするような視線を向けた後、気に入ったようで口元を緩ませる。


「……そうなのか?」


「良いものですよ。ジークはもう少し魔導銃以外の武器にも興味を持った方が良いと思いますよ。魔導銃が使えない時もあるでしょうし、その時に身を守るすべを持つのは重要だと思いますよ」


オクスに褒められ、バーニアは照れくさそうに苦笑いを浮かべた。

ジークはあまり武器に詳しくないため、首を捻るとリアーナはオクスの意見に賛成だと言いたいのか大きく頷く。


「その時は逃げるから」


「……情けない事を言うな」


「領主殿からはジークは剣も体術もできると聞いているのだが」


しかし、ジークは魔導銃以外の武器を使う気はないため、笑顔で危ない時は逃げると言い切り、アノスは眉間にしわを寄せる。

ジークの言葉にオクスはジークの実力を見極めてみたいと思っているようで威圧するような視線を向けた。


「着いたな。フィーナ、シーマさん、どうなっている?」


「逃げられたか。残念だな……アノス、機会があれば手合せをしてみろ。違う戦い方をする人間との手合せは勉強になるからな」


「……わかりました」


ジークはフィーナ達を見つけたようでひょうひょうとした様子で先を歩いて行く。

彼の背中にオクスは小さくため息を吐くとアノスに成長する機会を逃すなと言い、アノスはジークとの手合せから学ぶものはないと思っているようだが尊敬する叔父の言葉のためかしぶしぶ頷いた。


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