第771話
「違う物?」
「権力への繋がりとかそう言う物、レインがフォルムで女の子に襲われかけているのとだいたい同じ理由だよ」
「なるほど……レインの事だ。気が付かないだろうからな」
2人の言葉の意味がわからなかったジークが首を傾げるとカインは簡潔に説明する。
その説明でジークは納得が言ったようでレインへと視線を移した後、小さく頷いた。
「あ、あの。良くわからないんですけど」
「レインは気にしなくて良いよ。とりあえず、王都の知り合いに当たってみるかな」
レインだけは話の内容が理解しきれていないようで首を捻るがカインは気にする必要はないと言う。
その言葉にレインは納得が行かないのか首を捻ったままだが、カインはリアーナの事をどうにかしようと思ったようで頭をかいた。
「とりあえず、今日の予定を決めてやれよ。おかしな気合が入っているから、空回りしない程度のヤツ」
「そうだね……と言っても俺達も忙しいから、相手をしていられないんだけどね。やって貰えるとしたら、フィーナ達に合流して貰う事くらいだけど」
「お前はその書類の山を片付けないとセスさんに怒られるからな」
バーニアは予定がないため、フォルムについてきたリアーナの予定を決めてやれと言う。
カインは少し考えるが今は彼女の相手をしているヒマはなく、困ったと頭をかいた。
ジークは減ったように見えない書類の山に眉間にしわを寄せるとレインもどうして良いのかわからないようで苦笑いを浮かべている。
「なるべく、速く終わらせないとまた書類が増えそうですからね」
「……そうだね」
「カイン、お前、どれだけ書類をため込んでいるんだ?」
セスが屋敷を離れているのはカインに渡す書類を選別している可能性が高いため、カインとレインは小さく肩を落とす。
2人の反応にジークは眉間に深いしわを寄せるとカインは首を横に振る。
「……俺がため込んでいるんじゃない。セスとシーマが書類好きなんだ」
「書類好きってなんだよ?」
「何事もしっかりとまとめて置けば、何かあった時にすぐに対処できるってね。確かにワームや王都と言った都市になれば必要かも知れないけど、書類だけで決まるわけでも無いからね」
カインは領主補佐を行っている2人の性格の問題だと言うとジークは首を捻った。
真面目なところのある2人だから仕方ないと思っているようだが、効率が悪いと言いたいようで頭をかく。
「それに書類を読むだけでも時間がかかるからね。セスやシーマがまとめた物は良いけど、必要な物がまとまっていない書類を読むのは疲れるんだよ」
「……お前も他人の事は言うくせに効率優先だからな」
カインは肩が凝ったと言いたいのか首を鳴らす。
バーニアはカインの様子に苦笑いを浮かべた後、書類の山から書類を取り出してぺらぺらと流し読みをする。
「手伝う気になった?」
「ならない。俺は中庭に行ってくる」
「それじゃあ、リアーナは一先ず、フィーナ達に合流するか?」
カインはバーニアにもできそうな書類を渡そうとするが、バーニアは書類を戻すと逃げるように居間を出て行く。
バ-ニアに逃げられて舌打ちするカイン。その姿にジークはここに居てはおかしな事に巻き込まれると思ったようでリアーナを急かす。
「は、はい」
「……俺も行こう」
リアーナはここに残っていても邪魔になると考えたようで返事をすると勢いよく立ち上がり、アノスも屋敷に残っていてカインにこき使われるよりはジークについて行った方が良いと考えたようで2人に続く。
「バーニア、俺達はちょっと森の方に行ってくるけど」
「……少し待て。俺も行く」
ジーク達は森に行く前にバーニアに声をかけようと思ったようで中庭を訪れる。
バーニアは分けて置いていた巨大蛇の骨を手にして少し考え込むと3人に同行すると言う。
「俺の解体、何か不味かったか?」
「いや、きれいに解体できているよ。これなら良い武具に加工できる」
「それは良かった……で、どれくらいの値段になるんだ? 前はこのホルダを簡単にくれたんだ。結構、良い値がするんだよな?」
ジークは自分の解体方法に問題があったと思ったようで首を捻るとバーニアは合格だと笑う。
合格を貰えた事にジークはほっとしたようで胸をなで下ろすが商人としての性なのかすぐに興味は巨大蛇の部位に行ってしまい、バーニアの耳元に顔を近づけて聞く。
「良い値はするけど、今回持ってきた物と比べると……割に合わない気がするんだけどな」
「そうなのか……と言うか、この量と同程度の金額か? あいつは何を頼んだんだよ」
「魔導機器の材料になる鉱石だ」
バーニアは割に合わないとは思いつつもどこかで仕方ないと思っているようで苦笑いを浮かべる。
ジークはカインが頼んだ物に興味が湧いたようで首を捻るとバーニアは行くぞと言いたいのかジークの背中を叩く。
「ああ……魔導機器の材料か? 今度は何をする気だ?」
「鉱石からわからないんですか?」
「1つの鉱石でも多種多様な魔導機器にできるらしいからな。俺にはわからない。それにカインの事だ。俺が知っている既存の魔導機器を作るとは限らないからな」
ジークは頷くもののカインがまた良からぬ事を考えていると思ったようで眉間にしわを寄せる。
リアーナはジークの様子に苦笑いを浮かべてバーニアにカインの考えている事がわからないかと質問をするが、バーニアにも見当がつかないようで首を横に振った。
「一先ずはここに居ても仕方ないだろう。あの性悪の事だ。考えるだけ疲れるだけだ」
「そうだな……行くか」
アノスはカインの考えなど知らないと言いたいのか不機嫌そうな表情で首を横に振り、ジークは苦笑いを浮かべると巨大蛇の目撃情報がある森へと向かうために屋敷の敷地内から出る。
「リアーナ様? ご無事で、リュミナ様はご無事でしょうか?」
「へ?」
「知り合いか?」
その時、リアーナを見つけた青年が驚きの声を上げた。
突然の事で間の抜けた返事をするリアーナの様子にアノスは眉間にしわを寄せて聞き返すとリアーナは1つ咳をして姿勢を正すと青年へと視線を向ける。