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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第770話

「……なんで、リアーナまで付いてきているのかな?」


「いろいろあったんだよ」


「そうだな……それで、カイン、何の用だ?」


ジーク達がフォルムに戻るとカインはリアーナを見つけて首を捻る。

ジークが苦笑いを浮かべるとバーニアは小さく頷き、書類が乗っているテーブルの上にメモに書かれていた道具を置く。


「……うん。そろっているね。助かるよ」


「助かるよ。じゃなくて、代金を寄越せ。使いを寄越しておいて金も持ってこないってのはどういう事だ?」


「カイン、持たせてなかったんですか?」


カインは書類作業を中断すると道具の確認を行い、不足している道具がなかったようで笑顔で礼を言う。

バーニアは代金を踏み倒されては堪らないと言いたいようでカインを睨み付け、レインは話を聞いて大きく肩を落とした。


「悲しい事にフォルムは財源が不足しているからね。投資と言う事にしないかい?」


「……投資して後で増える見込みがないだろ」


「酷いな。これでも頑張っているんだよ」


カインは代金を踏み倒そうとしているのか、笑顔で投資と言い切るがバーニアは信用できないとため息を吐く。

それをフォルムの発展はないと言われたと言いたいのか、カインはわざとらしく肩を落とした。


「……そう言うわけでも無いけどな」


「いつも通り、悪質な冗談だから気にするなよ」


「そうだな」


バーニアは眉間にしわを寄せているとジークは彼の肩を叩き、キッチンに歩き出す。

ジークに言われてバーニアの罪悪感は払しょくされたようでカインを睨み付ける。


「せっかく、情に訴えて踏み倒そうと思ったのに、ジーク、余計な事を」


「カイン、冗談はそれくらいにしませんか?」


「わかったよ。バーニア、悪いんだけどお金は回せないから、物々交換で」


ジークが消えたキッチンの方を見て、カインはため息を吐き、レインはバーニアが可哀そうになってきたようでカインにいい加減にするように言う。

その言葉でカインは苦笑いを浮かべると中庭がある方向を指差し、状況の理解できないレイン、バーニア、リアーナは首を捻った。


「……何があるんだ?」


「昨日、ジークが解体した巨大蛇の皮とか骨とか。使うだろ?」


「ジークが解体したなら、問題はないと思うけど……こいつに見合うのか?」


怪訝そうな表情をするバーニアにカインは武具作製に使えそうな巨大蛇の部位があると教える。

バーニアは以前に巨大蛇の解体作業をジークに教えた事もあり、器用なジークが解体した物なら問題ないと思っているようだが、それでもカインに渡した道具の方が高い可能性が考えられ、疑いの視線を向けた。


「とりあえず、見てきたら良いよ」


「そうするか……」


「どこ行くんだ?」


カインは苦笑いを浮かべて言い、バーニアは頭をかきながら中庭に向かって歩き出す。

その時、ジークが人数分の紅茶を淹れてきたようでバーニアを引き止める。


「ジークがお茶を運んできたし、休憩にしようか? バーニアも飲んでからにしなよ」


「そうするか?」


「あの、先ほどは流されましたけど、リアーナさんはどうしたんですか? ……エルト様について行けなくて冒険者になったんですか?」


カインも書類業務に飽き飽きしているようでバーニアを呼び戻すとレインはリアーナがフォルムに訪れた理由を聞く。

その言葉には王都のエルトの行動について行けなかったのではないかと言う不安があり、眉間にしわを寄せている。


「い、いえ、そう言うわけではありません。リュミナ様ともども、良くしていただいています」


「それなら、どうしたんですか?」


「えーと、要約するとな」


レインの質問に若干、気まずそうに視線をそらすリアーナ。

レインはほっと胸をなで下ろすもリアーナがフォルムに訪れた理由が想像つかなくなったようで首を捻る。

リアーナは言い難いようで視線をそらしたままであり、ジークは苦笑いを浮かべてここまでの経緯を話す。


「休みを持て余す? 羨ましい限りだね」


「カインは遊んでいるように見える時も働いていますからね」


「……まぁ、王都に知り合いもいないだろうからね」


カインはテーブルの上の書類を見て大きなため息を吐くとレインは日頃のカインの仕事量を見ているためか苦笑いを浮かべた。

レインの言葉にあまり追及されたくないカインはリアーナの王都での交友関係の狭さが問題だと言い、リアーナは大きく頷く。


「バーニア、顔が広いんだから知り合いを紹介してあげたら」


「俺か? 騎士様に紹介するほどの人脈はないぞ」


「別に貴族を紹介する必要はないよ。そっちは公務で自然に広げられるだろうから」


彼女の姿にカインは苦笑いを浮かべるとバーニアに相談するが彼女は騎士であり、平民のバーニアは自分が出る幕ではないと首を横に振る。

カインは考えがあるのかくすりと笑い、その笑顔にまたおかしな事を考えているのではないかと思ったジークとアノスは眉間にしわを寄せた。


「広げられていたら、こうなってないだろうな。移民とは言え、実力を買われて騎士に任命されたんだ。機会はあったんだろう」


「……すいません」


バーニアは1度、リアーナに視線を移した後、人脈は自然に広がる物だと言う。

その言葉にリアーナは責められている気がしたようで視線をそらすと微妙な沈黙が流れる。


「……どうするんだ?」


「い、いえ、私は騎士としての使命がありますから、だ、大丈夫です」


「大丈夫じゃないから、休みの日を持て余しているんだろ」


沈黙を破るようにアノスがため息を吐くとリアーナはここまでの問題になると思っていなかったようで首を大きく横に振った。

ジークはこのままにしているのも気が引けるようで頭をかくと良い考えがないかと首を捻り始める。


「あの、それならファクト家(うち)を訪ねてみてはどうでしょうか? リアーナ達は特殊な位置づけになっていますが、他の騎士達と交友を深める事は重要でしょうし、女性騎士は少ないですから、知り合えば仲間意識も芽生えるんではないですかね?」


「……レイン、女同士は割と面倒だぞ」


「女性騎士は志とは違う物のために騎士になっている人間が多いからな」


レインは自分の父親の騎士隊を通してリアーナの交友関係を広げようと意見するが即座にバーニアとアノスに否定されてしまう。


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