第77話
「ジークさん、す、すいません!!」
「へ? いきなり、どうしたんだ?」
ノエルはいきなりジークに頭を下げるが、ジークはいきなりの事で何が起きたかわからないようで間の抜けた表情で彼女に何があったのかと聞き返す。
「そ、それは、あ、あの。ジークさんが」
「これがどうかしたのか?」
ノエルはジークが先ほどまで持っていた破損した魔導銃に視線を移し、ジークは魔導銃を手に取った。
「は、はい。ジークさんが大切にしていた魔導銃を壊してしまったのは、わたしのわがままのせいですし」
「あー、ノエル、その言葉は聞き飽きてるよ。頭を下げなくて良いから、ただ、しっかりと整備をするようにしないといけないと思ってただけだから」
ノエルはジークが魔導銃に向けていた視線に申し訳なく思ったようで頭を下げる。しかし、ジークはノエルの謝罪は何度も聞いているようで困ったように笑う。
「で、でも、やっぱり……」
「良いんだよ。確かにこいつは壊れてしまったけど、まだ、直せる。やり直せる。壊れてしまったけど、ノエルの夢と同じ想いを描いた人達がいる事を知る事ができた。ギド達に出会う事ができた」
ジークは魔導銃が壊れてしまっても得る事があったと笑顔を見せると、ノエルの頭を優しく撫でる。
「ジ、ジークさん、い、いきなり、な、何をするんですか!?」
「あー、悪い」
ノエルの顔はジークの行動に顔を真っ赤に染め上げる。ジークはノエルの反応に自分も恥ずかしくなったようで彼女の頭から手を下すと気まずそうに視線を逸らした。
「まぁ、ノエルが気にする必要はないよ。俺が勝手にやった事だ。それに守る事ができたから」
「守る事ができたですか? ……」
ジークは自分の責任だと言った後に、表情を和らげるが、その言葉にノエルの額には小さく青筋が浮かぶ。
「あ、あの。ノエルさん、どうかしましたか?」
「それはフィーナさんを守る事ができたからですか?」
ノエルの変化に危険回避能力が動き始め、顔を引きつらせるジーク。しかし、ノエルはジークを逃がすつもりはないようで額に青筋を浮かべたまま、彼との距離を縮める。
「ま、まあ。それもあるけど、あいつは妹みたいなものだし、見ての通り無鉄砲な考え足らずだし、誰かがフォローしないといけないわけだし」
「そうですか」
ジークはノエルの様子にどうして良いのかわからないようで、視線を逸らしながら答えると、ノエルの表情は笑っているがその目は笑っていない。
「あ、あの。ノエルさん、何を怒っているのでしょうか?」
「別に何も怒っていませんよ。ジークさん、わたし、もう寝ますね。おやすみなさい」
ジークはノエルの様子に彼女の怒りの原因を知りたいようだが、ノエルは目が笑ってない笑顔のまま、立ち上がるとテントに向かって歩き出す。
「あ、あぁ。おやすみ……お、俺、ノエルを怒らせる事を言ったかな?」
ノエルの背中に言葉をかけるが、彼女のからの返事はなく、ジークは首を傾げた。しかし、彼の疑問に答えるものは誰もいない。