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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第767話

「とりあえず、カルディナ様がフォルムを襲撃してこなくなれば良いね」


「そうだな」


レインとアノスを連れてジークがフォルムに戻ると書類と睨み合いをしているカインにワームでシュミットを交えた内容を話す。

シュミットがラースとカルディナに釘を刺されたと聞き、苦笑いを浮かべるが無駄だとは思っているのは誰の目からも明らかであり、ジークは面倒だと頭をかいた。


「しかし……カインもずいぶんと忙しそうですね」


「ワームの事でフォルムの仕事に時間が取られていたのは事実だからね」


「……当然のように書類を渡さないでください。これは領主の仕事ですよね。それがあるから、セスさんもカインに見るように言ったんですから」


レインは忙しそうなカインの様子に苦笑いを浮かべていると彼の前にカインから書類が置かれる。

カインがレインに仕事を少しでも押し付けようとしているのは誰の目から見てもわかり、レインは文句を言うが手伝う気のようでカインの前に腰を下ろす。


「悪いね。ギドも集落に戻っているから、人手が足りなくてね」


「……待て。あのゴブリンにも領地運営を手伝わせているのか?」


「優秀な人材は使わないともったいないじゃないか」


カインの口から出たギドの名前にアノスの眉間には深いしわが寄る。

しかし、カインは気にする事無く、書類に目を通しており、彼の反応がアノスの怒りをあおって行く。


「アノス、落ち着けよ」


「落ち着いていられるか。混血と純粋な魔族とは違うだろ」


「アノスは反対みたいだけどね。魔族同士は種族が違ってもお互いに魔族だってわかるんだよ。ゴブリン族であるギドやゼイを魔族だと知っている上で重用する事でその辺の警戒心を解いて貰おうと思ってね」


ジークはアノスをなだめようとするが彼は顔を真っ赤にしてカインに詰め寄った。

カインはアノスの様子など気にした様子もなく、書類へと視線を向けたまま、フォルムを統治する上で必要な手順だったと答える。

そんな彼の態度にアノスは腹が立ったようでカインの胸ぐらをつかもうとするが、ジークが何とかアノスを背中から羽交い絞めにして止める。


「……放せ」


「落ち着いたなら放す。だいたい、カインが人の神経を逆なでするような事を言うのはいつもの事だろ。なれろ」


「貴様だってなれてないだろう」


しばらくするとアノスはだいぶ、落ち着いてきたようで険しい表情ではあるがジークに放すように言う。

ジークはカインの言葉に腹を立てていても仕方ないと言うが、カインに振り回されているジークが言っても説得力のない言葉であり、アノスが納得できるわけもない。


「……それに関して言えば何とも言えないが、面倒事は増やさないでくれ。お前が沈められたら後が大変なんだよ」


「店の様子を見に行くってこっちに合流する許可貰ったのに寝ていましたってなったら、人としてダメだね」


「カインもあおらないでください」


ジークはこの後、ジオスに行くため、余計な手間をかけたくないと言うとカインはアノスへと視線を向ける事無く、彼を挑発する。

その言葉にアノスの眉間には再び、青筋が浮かび上がり、レインはカインに向かい余計な事を言わないようにとため息を吐く。


「はいはい、でもね……実際問題、人手が足りないんだよ。これくらいの事をやって貰える人材も受け入れてはいるんだけどね……セスが」


「……当たり前です。最後の決算は領主が判断するに決まっているでしょう」


「ふ、増えたな」


カインは小さくため息を吐くとこれくらいの書類ならば自分に持ってくる必要はないと言うが、生真面目なセスがカインを補佐している状況では重要度を下げる事はできないと不満を漏らす。

その時、セスが居間に追加の書類を運び込み、テーブルの上には新たな書類の山が出来上がってしまう。


「……カイン、昼までにジオスに行けるのか?」


「い、行けたら良いな」


「目をそらすな」


ジークは目の前の書類の山に眉間にしわを寄せて聞くとカインはジークから視線をそらす。

その様子にジークはこの後にどうするべきかわからないようで頭をかく。


「とりあえず、俺とお前だけでもジオスに行けば良いだろ」


「そうだな。そうするか。カインは転移魔法を使えるんだし」


「ジーク、それならおつかいに行ってきて」


アノスはカインと一緒にいると冷静に居られないと言いたいのか不機嫌そうな表情でジオスに移動してしまおうと提案する。

ジークも特に反対する要素もないため、頷こうとした時、カインはジークとアノスに仕事を押し付けようと思ったようで2人を引き止めた。


「……何を企んでいる?」


「酷いね。ジークの店がまた襲われても困るから、俺もいろいろと考えているんだよ」


「胡散臭いな」


アノスはカインの言葉にまた、彼が何か企んでいると思ったようで眉間に深々としわを寄せて言う。

カインは言いがかりだとため息を吐くがアノスだけではなく、ジーク、レイン、セスの目が彼へと疑いの視線を向けている。


「どうして、信用しないかな?」


「普段の行いです」


「……俺が言うのもおかしいんですけど、セスさんくらいには信用されろよ」


4人の視線にカインはわざとらしいため息を吐くが、セスがすぐにその言葉を切り捨ててしまう。

ジークは恋人にも疑われるのはどうなんだと言いたいようで大きく肩を落とすとレインはその言葉に同意見のようで苦笑いを浮かべている。


「ほら、セスは苛められる事が好きだし」


「……被虐趣味と言う奴か、それなら、この性悪を選ぶのも頷ける」


「違います。おかしな事を言わないでください!!」


カインは書類を運んでくるセスへの嫌がらせを始めるとセスとまだ面識の浅いアノスは自分が立ち入ってはいけない領域だと思ったようで1歩後ずさってしまう。

セスは顔を真っ赤にしながら、テーブルを叩くとアノスに今の言葉を撤回して貰いたいようで彼に詰め寄る。


「そ、そうか」


「……結局、カインのペースに巻き込まれるのか」


「そ、そうみたいですね」


アノスはセスの勢いに飲まれてしまったようで小さく頷き、ジークは混とんとしたこの状況に大きく肩を落とし、レインは苦笑いを浮かべている。


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