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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第764話

「……クー」


「もう少し我慢していてくれ」


「お帰り、時間かかったけど、何をやっていたのよ? ……なんで、あんたがいるのよ?」


フォルムに戻るとカルディナはクーを見て、目を輝かせており、クーは彼女の様子に不機嫌そうに頬を膨らませる。

クーの様子にジークが苦笑いを浮かべるとソファーの上でだらだらしていたフィーナがアノスを見つけて不機嫌そうに彼を睨みつけた。


「ちょっとね。それより、フィーナ」


「……わかったわ。で、今度は何を企んでいるのよ。何?」


「クー」


カインは1度、ため息を吐くと視線でフィーナに姿勢を正すように言い、フィーナはミレットの礼儀作法の勉強が怖いようですぐに姿勢を直す。

フィーナが姿勢を直すのを狙っていたのか、クーはすぐにフィーナの膝の上に移動し、クーの様子にフィーナは首を捻る。


「クーちゃんを渡しなさい!!」


「別にどうでも良いんだけどあんたに命令されるのはイヤだから、断るわ」


カルディナはフィーナからクーを取り上げようと彼女を威嚇するが、フィーナはカルディナの態度が気に入らないため、クーを抱え込むように抱き締めた。


「クーは賢いね。今回はジークだと話を通すために我慢しろって言うから、フィーナを選んだね」


「……賢いと言うか、ずる賢いと言わないか」


「元々、ドラゴンは知能が高いからね。子供だと言っても頭は使うと思うよ。もう少し状況をつかめるようにはなって貰いたいね」


クーの行動を見て、カインはクーの考えが読めたようで苦笑いを浮かべるとアノスは眉間にしわを寄せる。

カインはクーの成長を楽しみにしていると言いたいようであり、ジークへと視線を移すとジークはどうして良いのかわからないと言いたいのか頭をかいた。


「お店が襲撃されたの?」


「だ、大丈夫なんですか?」


「特に問題はなさそうだよ」


セスはすでに領主代行の仕事をしに行ったようでノエルを呼んで、ジオスのジークの店が襲撃された事を話す。

ノエルとフィーナは驚きの声を上げるが、状態を見てきたカインはそれほどでもないと思っているようで心配ないと笑う。


「それで、俺は店の方に行ってくるから、ノエルはテッド先生の方を頼めるか?」


「それはかまいませんけど……わたしも行った方が良くないですか?」


「カインもくるみたいだし、そんなに人手もいらないだろ。粗方は村の人が片付けてくれているみたいだし」


ジークは今日もテッドの診療所を手伝う事ができないため、ノエルだけでも手伝いに行ってくれと頼む。

ノエルは頷くものの、店の方が心配のようであり、聞き返すがジークは特に必要はないと笑い、ノエルはもう1度頷く。


「あんたも行くって言っているけど、あんた、領主の仕事をまた丸投げする気? そろそろ、セスさんに愛想を尽かされるわよ」


「確かに、今回の件で領地を空け過ぎている気がするな」


「大丈夫。大丈夫。セスだけじゃなく、シーマもいるしね」


フィーナはワームの問題に首を突っ込み、動き回っているカインが領地運営をないがしろにしているようにも思えたようで首を捻る。

アノスも領主としてカインが働いているように見えないためか、険しい表情をするがカインは気にする必要がないと笑う。


「……大丈夫なのか?」


「決裁の書類がたまっているとセスさんが文句を言っていましたよ。昨日は早く帰ってきたのにお酒で潰れてしまいましたし」


「お前、フォルムで仕事しろよ」


カインの様子が信じられないようでジークはフォルムに残っていたミレットに真実かどうか確認する。

ミレットはセスから不平不満を聞かされていたようで苦笑いを浮かべるとジークは大きく肩を落とした。


「今日だけなら問題ありませんわ。ただ、これだけは目を通して行って貰います」


「セスさん?」


「どうかしましたか?」


その時、セスが戻ってきたようでテーブルの上に束になった書類を置く。

彼女の登場にジークは首を傾げるとセスはジークが何を言いたいのかわからないようで首を捻った。


「……ずいぶんと持ってきたね」


「仕方ないでしょう。朝の行動を見ていれば、今日もふらふらとするのがわかりましたから」


「絶大な信頼感だな。これならワームに戻って報告してきても良いんじゃないか?」


目の前に積まれた書類にカインは顔を引きつらせるが、セスはカインの行動などお見通しだと言いたいのか大きく肩を落とす。

アノスはその様子に眉間にしわを寄せるとカインが書類を片付けるまで時間が空くため、ワームに戻らないかと言う。


「それもそうだな……カイン、どれくらいかかりそうだ?」


「……昼までには何とかしたいなあ」


「それなら、ワームに行くか? 騎士や兵士も一先ず、ワームに戻ったわけだし、レインも連れてこないといけないからな」


カインは書類を手に取ると大きく肩を落としており、その様子にジークは苦笑いを浮かべて終了時間を聞く。

その質問にカインは希望込みで答えるとジークはソファーから立ち上がり、アノスの言葉に頷いた。


「それじゃあ、これも連れて行きなさいよ。うるさいから」


「私はクーちゃんの頭をなでるまで帰りませんわ!! わかったなら、速く、私にクーちゃんを渡しなさい!! 命令を聞かないなら、この場で処分しますわ!!」


「……仕事しろよ。行くぞ。あんまり、わがままを言っていると立場的に不味いだろ」


フィーナはいつまでもカルディナの相手をしていたくないため、彼女を指差すとクーはフィーナの言葉に賛成のようで大きく頷く。

クーが嫌がっていてもカルディナは自分の欲求を最優先しており、勢いよく立ち上がるとフィーナに向かい宣戦布告をすると魔法の詠唱を始め出そうとする。

屋敷の中で魔法を放たれては困るためか、ジークは大きく肩を落とすとカルディナの首根っこをつかむ。


「放しなさい。平民、私の言葉が聞けないのですか!!」


「聞く理由がない。フィーナ、森の探索任せるぞ。結構、面倒な事になっているみたいだから」


「わかったわよ」


カルディナはジークへと敵意の視線を向けるが、ジークは気にする事無く、転移の魔導機器へと魔力を込めるとフィーナにも仕事を押し付ける。

フィーナは働きたくないと思いながらも、ミレットに礼儀作法を教わるよりもそっちの方が良いと思っているようでしぶしぶ頷いた。


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