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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第759話

「待っても今日は帰ってこないと思いますけど」


「……」


「そんな目をしても帰ってきませんよ」


カルディナの宣言をミレットは笑顔でバッサリと切り捨てるとカルディナは恨めしそうな視線を彼女に向けた。

しかし、ミレットは紅茶を飲みながら淡々とカルディナに現実を突きつけて行き、カルディナは肩を落とし始め、ノエルはオロオロとしている。


「ミレットさん、言いすぎじゃないですか? カルディナ様だってクーちゃんと遊びたいわけですし」


「そうでもないですよ。それにノエルはクーちゃんが関わるとカルディナに好意的になりすぎです。分別をつけないとノエルも一緒にクーちゃんに嫌われますよ」


「そ、それはイヤです」


ノエルはカルディナの様子にこのままでは彼女が立ち直れないと思ったようでミレットに反論しようと声を上げた。

それでも、ミレットにはかなうわけもなく、2人そろって落ち込み始める。


「……なんで、おっさんの娘がいるのよ? そして、なんでノエルと一緒に落ち込んでいるのよ?」


「フィーナ、おはようございます」


「おはようございます……って言ってもそんな時間じゃないんだけどね」


2人を眺めながらミレットが紅茶を飲んでいるとフィーナが居間に入ってくる。

フィーナはノエルとカルディナの様子に眉間にしわを寄せるが、ミレットは気にする事無く、フィーナを向かい入れ、フィーナは夕飯を食べる事無く、カインに気絶させられたためか空腹のようでお茶菓子を口の中に放り込む。


「……足りない」


「そうでしょうね。待っていてください。今、持ってきますから」


「お願いします」


テーブルの上にあったお茶菓子のすべてを腹の中に放り込んだフィーナだが、お腹は膨れなかったようで大きく肩を落とす。

彼女の様子にミレットはくすくすと笑うと立ち上がり、キッチンに消えて行く。


「それで、ノエルとおっさんの娘は何でこんな状態なの?」


「クーちゃんに逃げられているみたいですよ」


「クーに? おっさんの娘はわかるけど、ノエルは最近ではそうでもないでしょ」


ミレットが持ってきてくれた夕飯を頬張りながら、フィーナは目の前で呆けている2人を指差す。

ミレットは苦笑いを浮かべながら、簡単な説明をするがフィーナはそれでも状況が理解できないようで首を傾げる。


「私も良くわかりませんけど、ジークとクーちゃんがアノスさんをワームに送って行った時にラース様に捕まったんでしょう。ラース様はカルディナの機嫌取りにクーちゃんを使おうとしたんではないでしょうか?」


「おっさんなら、あり得そうね。それなら、ジークはしばらく帰ってこないわね。きっと、ジオスに戻っているわ」


「ジオス? ……ルッケルから馬車に乗れば、半日で」


ミレットは推測込みで話をするとフィーナはジークの居場所をジオスだと決めつけ、カルディナの表情は思案顔になって行く。


「この時間帯に領主を訪ねるのは礼儀知らずになりますよ。馬車を運んでもカルディナでは動かせないでしょう?」


「……」


「あの性悪もセスさんも流石に起こすわけにも行かないから、無理ね。諦めたら」


良い考えが浮かんだのかカルディナの顔は喜色に満ちて行くが、彼女の頭は完全にクーの事でいっぱいであり、まともな判断はできていない。

そんな彼女の考えは誰にでも簡単に理解できたようでミレットはアズに迷惑をかけてはいけないと釘を刺し、カルディナはアズにはルッケルでの件で迷惑をかけている事もあるのか強気に出られないようで眉間にしわを寄せる。

フィーナは興味がないようで夕飯を頬張りながら言うとミレットも同意しているようで小さく頷く。


「で、ですが」


「そうですよ。会いたいものは会いたいんです!!」


「……ノエル、あんたが感情移入したらダメでしょ」


それでもカルディナは諦めきれないようで助けを探そうとするとノエルはカルディナの手を取った。

2人の視線は交差し、なぜかノエルを見下していたはずのカルディナは仲間意識が芽生えたようで2人はしばらく見つめ合った後、お互いを同志と認めたようで抱き締め合う。

その様子にフィーナは意味がわからないと大きく肩を落とすが同志を手に入れた2人の耳には彼女の声は届かない。


「……ミレットさん、あの2人はあれで良いの?」


「仲良くなったんですから良いんじゃないですか?」


「そうだと良いんだけど……確実にクーに嫌われる気しかしないわ」


フィーナはどうして良いのかわからずにミレットに意見を求めるが、ミレットはもうどうでも良いと思っているようで苦笑いを浮かべるだけである。

ミレットの言葉にフィーナは頷こうとするが2人の様子に不安しか感じないようで眉間には深いしわが寄って行く。


「カルディナ様、クーちゃんに会うために何か作戦を考えましょう。ジオスに飛べるのはカインさんとセスさん、フィアナさんは……移動場所にしていないはずだから、後はアーカスさん? フィリム先生とコッシュさんは王都とルッケル、ワームだけでしたね」


「……ジオスのような田舎に用があるとは思いませんでした。盲点でしたわ」


「田舎の自覚はあるけど、ここまでバカにされるのはムカつくわね」


ノエルとカルディナはジオスに行くために自分達の知り合いの転移魔法を使える人間を探そうとするが、ジオスに移動できる人間は思いのほか少なく、すぐに壁にぶつかる。

フィーナは聞こえてくる2人の会話が面白くないようで頬を膨らませるとミレットは落ち着けと言いたいのか彼女の前に紅茶を置く。


「私はジオスの村、好きですよ。みなさん、温かくてジークやフィーナが真っ直ぐに育ったのがわかりますから」


「温かいってうるさいだけの気がするけど」


「フィーナはどうしてジオスをバカにされると怒るのに褒められると面白くなさそうにするんですか?」


ミレットはフィーナの様子にジオスの味方をしようとするがフィーナはジオスが褒められるのは、それはそれで面白くないようで頬を膨らませる。

その姿にミレットは大きく肩を落とすとフィーナは少しだけ気まずそうに視線をそらした。


「フィーナさん、ミレットさん、遊んでないでジオスに行く方法を考えてください。ジオスは今、危険なんですよ。ジークさんをさらおうとお爺さんに雇われた人達がお店を見張っているんですから!!」


「そう言えば、そうだったわ。ジーク、大丈夫かな?」


「転移の魔導機器もありますし、どうにかしているでしょう。心配はいりませんよ」


ノエルはジオスの状況を思い出してジークとクーを心配するように叫ぶがフィーナもミレットも特に心配などしていないようでどうでも良さそうである。


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