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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
752/953

第752話

「ジークとノエルも戻ってきたし、始めようか?」


「カインさん、大丈夫ですか?」


「そのうち治まるよ」


ジークが持ってきた薬を飲んだカインだがすぐに改善する事はない。それでもあまり時間もかけられないと思ったようで弱々しい声で話し始めようとする。

その様子にノエルは心配そうに声をかけるとカインは心配ないと笑うがその様子は死にかけており、珍しい彼の様子にアノスとシーマは眉間にしわを寄せた。


「シーマさん、今なら簡単に倒せますよ」


「……その考えは頭をよぎりましたがそれをやってはダメだと思う」


「そんな事をしたら、いつも以上の反撃を喰らいそうだがな」


2人の様子にジークはカインを指差しながら復讐をするなら今だと言う。

シーマの中にも葛藤があるようで眉間にしわを寄せたまま、首を横に振るとアノスは今倒せてもその後の仕打ちを恐ろしく思ったようで首を横に振る。


「……確実に仕留めないと絶対に反撃があるだろうな。そう考えると反撃の事なんか考えずにチャンスだと言ってカインに襲い掛かるフィーナは改めてバカなんだな」


「あれと比較するな」


「だよな。悪かったよ」


2人がおかしな行動に移らなかった事にジークは安心したようで苦笑いを浮かべるが、すぐにフィーナがカインに襲い掛かる姿が目に浮かんだようで眉間にしわを寄せた。

アノスはフィーナと同程度に扱われるのは我慢がならないようで眉間にしわを寄せるとジークは苦笑いを浮かべて彼に謝る。


「そろそろ始めても良いかな?」


「ああ」


「それなら、始めましょうか」


カインはまだ調子が悪いようで話を早く切り上げたいのか2人に声をかけ、無駄な時間を費やしてしまっている事に気が付いたジークとアノスはバツが悪そうに視線をそらす。

セスの目にはカインが話すのもつらいように見えたようで場を仕切ろうとする。


「それでは俺を何のためにこんな場所まで連れてきたかを話して貰おうか? 話の内容によっては……」


「返り討ちに遭うから止めて置け」


「……」


アノスはハイム国の不利益になる内容であれば、この場でカインを叩き斬ると言いたげに剣の鞘に手をかける。

アノスではカインを1撃で切り伏せる事などできないと考えたようでシーマはぽつりとつぶやくとアノスはそのつぶやきに反応したようで彼女を睨み付けた。


「アノス、自分でもさっき言っていただろ。脅したって意味ないんだから、時間の無駄だろ」


「……」


「話の内容と言っても、だいたいの事はもう聞いているのではないのか? フォルムまで連れてきているのだからな」


アノスの目線からシーマは目をそらす事はなく、彼女の様子にジークは魔眼を使用する可能性を考えたようでアノスに声をかける。

ジークの言葉でアノスは不機嫌そうな表情で座り直すと酒を片手に持ったオクスが戻ってきてソファーに腰を下ろす。

オクスがこの場に合流した事にセスはカインを守ろうとしているのか警戒するような視線をオクスに向けると彼は少しだけ困ったのか苦笑いを浮かべた。


「そうだな。実際問題、シュミット様からエルト王子の国の展望を聞かされているわけだし、魔族とも無駄に戦う必要性はないって事は理解しているだろ」


「……確かにそうだな。それなら、俺はなぜ、どうしてフォルムに呼ばれたんだ? 叔父上に会せるためだとか言わないだろうな?」


「それはあくまでついでだよ。オクスさんからアノスの事も聞いていたし、味方に引き入れるのに有利になるとは思ったけどね」


ジークは魔族の集落に同行した事や今日のシュミットの話を聞いた時のアノスを思い出し、彼の魔族に対する偏見は薄れていると感じている。

その言葉にすぐに認めるのは悔しいのかアノスは表情をしかめているが、改めて、フォルムまで連れてこられる理由がわからずにカインを睨み付けた。

アノスの視線にカインは痛む頭を押さえながら、答えると下心がなかったわけではないと言う。

彼の言葉にアノスは不機嫌そうに眉間にしわを寄せるがオクスは気にする事無く、酒をあおっている。


「アノスをフォルムに連れてきたのは、現状を見て貰おうと思ったわけだよ。人族と魔族が共存している場所もあるんだってね」


「……共存だと?」


「フォルムは魔族の血を引いた者が多く住んでいます。迫害される可能性もあるため、多くの者が隠していますけどね」


カインはアノスをフォルムに連れてきた理由を話すが、オクスは信じられない言葉だったようで怪訝そうな表情をする。

セスはフォルムの実状を話すとフォルム出身のシーマへと視線を向けた。

シーマは魔族だと隠している生活が不満のためか、不機嫌そうにそっぽを向き、ノエルは何とか彼女の気分を戻そうと彼女をなだめ始める。


「人族が多い地だと迫害されるから、魔族だと言う事を隠すのは仕方ないんだけどね。種族の違いとして受け入れられない人間が多いからね。人族、魔族問わずね」


「……」


「アノス、女性をそのような視線で見るのは失礼だぞ」


カインは人族と魔族お互いに偏見がある事が問題だと言う。

アノスはシーマが魔族だと信じられないようで彼女へと視線を向けるとオクスは甥の行動をいさめるように声をかけた。


「いや……魔族だと言う割には」


「きれいな女性だから、欲情したか?」


「違います。見た目が人族とあまり変わらないからであって、そんなものではありません!!」


オクスはアノスをからかうように笑うとオクスは顔を真っ赤にして否定する。

人族とあまり変わらない姿をしたシーマが魔族だと信じられないためにシーマを探っていたのだと叫ぶ。


「……遊ばれているね」


「人族とあまり変わらない姿をしている魔族もたくさんいるだろ。ノエル達から恋愛話で無駄に聞かされたんじゃないのか?」


「……その話は思い出したくもない」


アノスとオクスの様子にカインは眉間にしわを寄せるとジークは魔族の集落でノエル達に捕まった時の事を思い出すように言う。

その言葉にすぐにアノスは眉間にしわを寄せるが、対照的になぜかノエルの顔は喜色に満ちて行く。


「アノスさん、なんなら、もう1度、お話ししましょうか?」


「……遠慮する」


ノエルは再び、恋愛話ができると思ったようでアノスへと声をかけるが、アノスにとってはあの時の事は苦痛でしかなく、すぐに否定する。


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