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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
746/953

第746話

「大量ですね」


「そうだね。とりあえず、ジークが戻ってきたら解体するから、このままにしておいて」


「そうしたいですけど、処理はしっかりとしておかないと」


カインが転移魔法で屋敷に戻るとミレットは庭に積まれた巨大蛇の亡骸に苦笑する。

彼女の笑みに釣られるようにカインは笑うとミレットは屋敷の中に戻って行き、すぐに包丁を手にして戻ってくるとカインに包丁を渡す。


「……俺がやるの?」


「流石に私の腕力では切れませんから、本当は心臓が動いているうちにやらないといけないんですけど」


「そこまで考えている余裕はなかったね。それでどこに傷をつけたら良いんだい?」


手渡された包丁に首を傾げるカインにミレットは申し訳なさそうに笑う。

カインは速く済ませようと思ったようで何か言うわけではなく、ミレットに指示を仰いだ。

ミレットは巨大蛇の状態を見ながら、指示を出すが鱗は硬く台所から持ってきた包丁では傷がつかない。


「ジークは簡単に解体していたんだけどね」


「解体するのにはコツがいると聞きますからね。ジーク達が帰ってくるのを待った方が良いでしょうか?」


カインは森の中でジークが巨大蛇を解体していたのを思い出して苦笑いを浮かべる。

ミレットには巨大蛇の解体経験などないため、どうして良いのかわからないと大きく肩を落とす。


「いや、全部、解体するわけじゃないから、やり方次第だと思うけどね……傷をつけるのはここで良いんだよね?」


「そうですね。どうするつもりですか?」


「とりあえずはこの鱗をどうにかすれば良いわけだから、剥いじゃおうと思ってね」


カインは巨大蛇の鱗を眺めると何か考え付いたようで手でミレットに下がるように指示を出した。

ミレットはカインに促されたように後ろに下がるとカインが何をするか理解できないようで首を捻った。

カインはくすりと笑うと彼の右手の掌には風が集まり出す。


「風の魔法で鱗を剥がすと言う事ですね」


「そうだね」


「それでそのまま皮を切ってしまってはどうですか?」


風の魔法が発動したのを見て、ミレットは納得したようで小さく頷くが、すぐに包丁ではなく魔法で巨大蛇の血抜きをしてしまえばと言う。

その言葉にカインは苦笑いを浮かべるとミレットが指定していた箇所を守っている鱗を1枚剥がすと風はすぐに霧散してしまう。


「そうしたいところだけど、俺にもいろいろあってね」


「いろいろですか?」


「そう。後はこの皮を傷つけられるかだね……無理そうかな? ジークもアノスから剣を借りて解体していたし」


カインは鱗の下にあった皮の冷たい感触に包丁では難しいのではないかと頭をかく。

その言葉にミレットは魔法が霧散した事もあるのか近づき、巨大蛇の皮を覗き込む。


「ジークを待ちましょうか?」


「今度、こう言うのも簡単に切れる包丁でもバーニアに作って貰おうか? 巨大蛇はフォルムの周辺に生息しているみたいだから、せっかく、捕まえても解体できないとどうしようもないから」


「……見つけたわ。今日こそ、ぶち殺すわ」


巨大蛇の皮を確認したミレットも血抜きは難しいと判断したようで苦笑いを浮かべる。

カインは念のためと包丁を走らせるが、包丁の刃は欠けてしまう。

欠けた包丁を見ながらカインは新しい包丁を作る必要があると言った時、剣を手にしたフィーナが庭先に現れる。

彼女は先ほどのお説教の原因をいつものように責任転嫁をしているようで自分の怒りをカインにぶつけようとしており、カインへと剣の切っ先を向けた。


「……どうして、ここまで成長が見られないかな?」


「流石にこれはないですね」


「クー?」


フィーナの姿にカインとミレットは大きく肩を落とす。

その時、フィーナの後を追いかけてきたようでクーが彼女の背後から顔を出すとカインとミレットのそばまで飛んでくる。


「クー、ミレットさん、そこを退いて、今から私はその悪党を叩き斬るから」


「どうします?」


「そうだね。少し下がっていてくれるかい? ……クー、どこに行くの?」


フィーナはミレットとクーがいるのはカインを倒すのに邪魔だと判断しているため、退けるように叫ぶ。

彼女の様子にミレットは呆れたような口調でカインに聞き、カインが大きく肩を落とすとクーがフィーナに向かって飛んで行く。


「クー、邪魔よ!?」


「……クーちゃん、成長しましたね」


「クー」


目の前に移動してきたクーにフィーナが避けるように言った時、クーは大きく息を吸い込んだ後、彼女に向かい炎を吹き付ける。

突然の攻撃にフィーナは地面を転がり、炎を消す姿にミレットは顔を引きつらせるがクーは自分の成長を誉めて欲しいのか、カインとミレットの顔を覗き込む。


「クー、炎を吹けるようになったんだ。偉いね」


「クー、クー」


「……誉めて良いんでしょうか?」


カインは期待に答えるようにクーの頭をなでるとクーは嬉しそうに喉を鳴らす。

しかし、ミレットはこの状況にどのように対応して良いのかわからないようで眉間にしわを寄せている。


「クー?」


「そうですね。でも、クーちゃん、炎を他人に向けて吹いてはいけませんよ……あれ? フィーナの剣は炎や冷気を防ぐんじゃありませんでした?」


「クーの炎には何か特殊な能力があるんじゃないかな? それより今はフィーナを反省させないとね」


クーはミレットにも誉めて貰いたいようで彼女の前に移動するとミレットはクーの頭をなでた後、やって良い事と悪い事があると教える。

その途中でフィーナの剣には魔法の効果がある事を思い出して首を捻るとカインは苦笑いを浮かべた後、杖を手に持ち口元を緩ませながら地面に転がっているフィーナへと近づいて行く。


「何とか消えたわ。なんで、炎を防ぐ事ができなかったの? 効果がきれたのかしら……わ、私は話し合いを要求するわ」


「この状況でそれは無理だろうね。話し合いで解決する機会はすでに失われているんだから……それに話し合いだと言うなら剣を探さない」


フィーナは何とか炎を消し終えたようで立ち上がろうとした時、目の前に笑顔のカインが立っている事に気づく。

カインの手にはしっかりと鈍器と化した杖が握られており、フィーナは何とか時間を稼ごうとしているようで話し合いを提案するがその目は炎を消す際に投げ出してしまった剣を探している。

彼女の心の内などカインには簡単に見透かせており、ため息を吐くと彼女の頭の上に杖を振り下ろした。


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