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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
744/953

第744話

「言っておきますけど、裏があって聞いているわけではないですよ」


「……」


「カインとは違うんで回りくどい言い方はしませんよ」


ジークは裏などないと困ったように笑うとシーマはさらに警戒を強めたのか、疑いの視線を向けた。

彼女の様子にジークはまたカインと同一視されていると思ったようで大きく肩を落とし、ノエルは苦笑いを浮かべている。


「酷いね。まるで俺がいつも人をだましているみたいじゃないか」


「……その通りだろ。だいたい、出てくるなら俺に話させないで最初から自分で話せよ」


「俺は最初から言っているよ。今回はシーマさんの指示で動くって」


そんな3人の様子をしばらく眺めていたカインが近づいてきて声をかけた。

カインの顔を見てジークは大きく肩を落として自分で説明するように言うが、カインは自分の行動は最初から変わっていないと笑う。


「いつもは余計な事を言うのに今回は言葉が少ないんだよ」


「そういう風にしているからね」


「……意味がわからりません」


ジークはシーマに理解できるように説明し直せと言いたいようで非難するような視線を向ける。

それでもカインはひょうひょうとしており、ノエルはカインの考えを理解できないためか大きく肩を落とす。


「簡単な事だよ。1人じゃできない事があるんだから、協力するって事を覚えて貰いたいんだよ。シーマさんは自分で無能だと思う人間とは協力できないって言うけど、そんな事じゃ、この先困るからね」


「……貴様が言うと使えるコマは有効に使わないといけないと言っているように聞こえるな」


「酷い良いようだね……これはアノスにも必要な事だし、せっかくだから真面目に話をしようか?」


カインはシーマに他者と協力する事を覚えて欲しいと言うとアノスは胡散臭いと眉間にしわを寄せた。

彼の言葉にカインは言いがかりだと小さくため息を吐いた後、表情を引き締める。


「……いつもの胡散臭い笑顔もあれだけど、この真剣な表情も胡散臭いよな?」


「同感ですわ」


「……ジーク、話を折らない」


しかし、ジークは胡散臭いと疑いの視線を向けるとシーマは大きく頷く。

2人の様子にカインはどうして真面目に聞けないのかと言いたいのか大きく肩を落とすが、周囲からの視線は彼の日頃の行いのせいだと言いたげである。


「えーとね。シーマさんもアノスも一介の騎士や魔術師で終わる人間で終わって欲しくないんだよ。今のままじゃ、1人で突っ込んでそのうち死ぬよ。1人でなんでもできるなんて言葉は却下ね。納得が行かないなら、今ここで1人ずつ手合せでもしてあげようか?」


「……お前、さっき魔力が尽きそうだって言ってなかったか?」


「そこまで魔力は使わないから問題ないよ」


カインは2人の成長を考えてだと言うが、あまり他人との協力に重要性を感じていないアノスとシーマが不服そうな表情をしている。

その様子にカインは口元を緩ませて言い、彼の言葉には2人を怯ませるほどの圧力があり、アノスとシーマは1歩後ずさった。

完全にカインに威圧されている2人の姿にジークはため息を吐くと連戦で2人と戦う余力はないだろうと言うが、カインは2人の相手ならどうとでもなると言う。

アノスとシーマはその言葉でカインにつかみかかろうとするが、彼に睨まれて動きを止める。


「……お前、何がしたいんだ?」


「最初から言っているよ。2人に成長して貰いたいんだよ。もちろん、ジークやノエルにもね」


「成長ね」


完全にアノスとシーマを威圧しているカインの様子にジークは眉間にしわを寄せた。

カインはくすりと笑うとジークやノエルにも成長するように言い、ジークは成長の必要性は感じている物のそれに対しての展望があるわけでもなく困ったように頭をかく。


「これに関して言えば、ジークの方が柔軟で良いね」


「……柔軟と言うか、お前やエルト王子に良いように使われているからな。それより、威圧してないで続きを話せよ」


「それもそうだね。続けても良いかな?」


ジークは日頃、カインに使いまわされているせいだと責任を擦り付けると巨大蛇がいつ襲ってくるかもわからないため、説明を終わらせるように言う。

カインは笑みを浮かべると圧力を解き、アノスとシーマの表情からは緊張が解けたようで胸をなで下ろすがどこか警戒しているようでカインと距離を取っている。


「2人に求めているのは自分の考えを他者に伝える能力かな? 話が上手く伝われば被害を最小にして最大の効果が得られるからね。それを行うには周囲の人間の適性や能力も把握しないといけないんだけどね」


「……そう言うなら、最初から話をしてくれよ」


「ちなみにジークやノエルにはこの能力は全く必要ないね」


カインはアノスとシーマにこれから先に必要な能力を話す。

その能力は騎士隊の隊長や領主と言った人の上に立つ者の資質であり、ジークは指揮官の重要さが理解できているようでため息を吐くとカインはすぐにジークを小ばかにするように笑う。


「俺だってそんな能力が必要だとは思わないよ」


「それはわたしやジークさんになくてもカインさんやセスさんがしてくれます」


「カイン殿はたまに照れて言葉を飲み込むのが良いな」


分別は弁えていると言いたいのかジークは呆れたように言うとノエルは自分やジークに不足している部分はカインが補ってくれると大きく頷いた。

彼女が迷いなく言う姿にカインは少しだけ照れてしまったのか、鼻先を指でかくと彼の姿を眺めていたオクスはからかうように笑う。


「そう言うわけではありませんけどね。どれだけ自分が優秀だと思っても1人でやれる事は限られているんだよ。それなら、自分の苦手な部分を補える人間や自分の指示を理解し、適切に動いてくれる人間は育てておいた方が良いよ……理解ができないと思うのは勝手だけどね。シーマさんのお父さんは出来た事だよ。あー、先代領主は出来なかったみたいだけど同類なの?」


「安い挑発だな」


「そう思うよ。と言う事で、巨大蛇が現れるまで講義と行こうかな?」


オクスの言葉にカインは苦笑いを浮かべた後、シーマに彼女の父親や義兄の話をする。

ジークは彼の言葉に小さくため息を吐くとカインは否定する事はなく、アノスとシーマの肩をつかむ。


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