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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
742/953

第742話

「アノスは出来るのか?」


「バカにするな。お前こそ、できるのか?」


「そうか? それなら、任せるぞ」


ジークは両手で魔導銃を構え直すとアノスを挑発するように笑う。

その挑発にアノスはジークを睨み付けると剣を構え直し、いつでも良いと強がる。

彼の返事にジークは冷気に魔導銃の銃口を巨大蛇へと向けた。

その時、巨大蛇は身体にまとわりついた植物の根を全て引き裂くと術者であるカインを獲物に決めたようでジーク達に向かい大口を開けて襲い掛かってくる。


「あれだな。頭は悪いよな」


「しょせんは蛇だからね」


「しゅ、出力、上げ過ぎた」


巨大蛇の大口に向けてジークは魔導銃の引鉄を引いた。

銃口には冷気が集約されて青い光の弾丸が出来上がり、周囲を凍らせながら巨大蛇へと向かって行く。

冷気の弾丸を放ったジークは一気に下がった気温に身体を震わせるが、弾丸は寸分の狂いなく巨大蛇の口の中を撃ち抜き、巨大蛇の頭を凍らせた。

その時を待っていたと言わんばかりにアノスは大地を蹴ると巨大蛇の頭へと剣を振り下ろす。


「まぁ、上出来かな?」


「そのようだな」


完全に凍り付いた巨大蛇の頭はアノスの剣で粉々に砕け散り、巨大蛇は大きな音とともに地面に崩れ落ちる。

ジークとアノスの連携が上手く行った様子にカインとオクスは苦笑いを浮かべるが、2人の言葉を聞いたアノスは自分1人でも巨大蛇を倒せたと言いたいのか不機嫌そうに顔をしかめた。


「おい。この状況をどうにかしろ」


「……無理」


「ノエル、ジークが温めて欲しいって、もちろん、ひと肌で」


アノスは不機嫌な表情のまま、周囲を凍り付かせたジークにどうにかしろと言う。

しかし、誰よりも冷気の魔導銃で被害を受けているのは魔導銃の持ち手であるジークであり、鼻水を流しながら身体を震わせて首を振る。

そんなジークを見て、カインはひょうひょうとした口調でノエルをからかう。


「ひ、ひと肌で!? み、みなさんがいるなかでそ、そんな事、無理です!?」


「……人前でないなら良いんだね」


「そ、そう言うわけではありません!?」


ノエルは顔を真っ赤にして首を横に振るが、彼女の言葉にはツッコミどころがあり、カインは意地悪な笑みを浮かべた。

完全にノエルはカインに絡まれており、遊ばれているがその様子を見て、この場の空気は緩んで行くがアノスとシーマの2人は険しい表情をしている。


「……あ、遊んでないで、魔法でも良いから温めてくれないか?」


「これで?」


「……それは死ぬ」


待っている間もジークの体温は下がっていていたようで唇まで完全に真っ青になったジークが助けを求める。

カインはすぐに魔法で小さな火球を作り出してジークにぶつけようかと笑顔で聞き、ジークは身体を震わせながら首を横に振った。


「温まる」


「ジークさん、大丈夫ですか?」


「……出力調整を考えないといけないな」


枯れ木を集めてたき火を作ったジークは火にあたりながら凍り付いた身体を温める。

カインにからかわれ疲れたノエルはジークの顔を心配そうにのぞき込むとジークは冷気の魔導銃を手にため息を吐いた。


「まぁ、冷気の魔導銃を放つたびにジークが役立たずになっていたら、意味ないよね……待てよ。ジークに冷気を防ぐ魔導機器を持たせれば最大出力で冷気の魔導銃を使えるわけだろ? そう考えると」


「……おい。おかしな事を考えているヒマがあるなら次の作戦を考えろ。この様子だと後2匹は無理だろ」


「後の2匹はシーマさんに任せるから、それに俺は転移魔法やさっきの魔法で魔力が底を尽きかけているからね。俺はもう戦力として考えなくて良いよ」


火にあたっているジークを見ながら、カインは冷気の魔導銃の有効利用を考え出すが、アノスはカインがまた良からぬ企みをしていると思ったようで眉間にしわを寄せる。

カインはアノスの質問に自分は戦力外だとへらへら笑うとジークは懐から小瓶を取り出してカインに放り投げた。


「要らない」


「要らないじゃなくて、働け。オクスさん、剣を貸して貰って良いですか?」


「剣? 何に使うんだ?」


小瓶は魔力を少しだけ回復させる薬であり、カインは働きたくないと言いたいのか不満げに首を振る。

ジークはため息を吐くと体温が元に戻ったのか、立ち上がるとオクスに剣を貸して欲しいと言うとオクスは首を捻りながらもジークの前に剣を出す。


「解体、このままにしていても邪魔だし、家畜が食われたんだから、少しでも食料の足しにしないとな」


「……食えるのか?」


「食べられるけど、あまり食べないわ」


ジークはオクスから剣を受け取ると嬉々として巨大蛇の解体を開始する。

その様子にアノスは巨大蛇を食料として考えきれないようで眉間にしわを寄せるとシーマは眉間にしわを寄せて首を振った。


「……食わないと言っているのに何であいつは楽しそうなんだ?」


「一応、薬の材料になる部分もあるからね。それに蛇の種類にもよるけど、売れるなら売らないともったいない。フォルムは農地開拓とか流民を受け入れているからお金ないんだよね」


「こんなものを売らないといけないのか?」


フォルムでは食料としていないと聞き、アノスはジークが何のために巨大蛇を解体しているかわからないと言う。

カインはフォルムの財政の足しになると言うと巨大蛇を運ぶ必要があるため、転移魔法分の魔力を回復させようとジークから受け取った回復薬の瓶をあけると腰に手を当てて一気に飲み干す。

アノスは巨大蛇の価値が理解できないため、眉間のしわはさらに深くなっている。


「後は血の匂いは肉食動物を呼び寄せるのは充分だからね。目的の物を呼び寄せるのには充分だろうし」


「血の匂いに誘われて巨大蛇以外もくるのではないか?」


「狼とかも生息していますからね。毛皮は売れる」


すでにジークは巨大蛇の解体は完璧なようで巨大蛇は見る見る間に肉になって行く。

カインは巨大蛇を寄せ付けるためには良い事だと笑うとオクスは他の肉食動物の襲撃もあると難しい表情をするがカインは笑顔で財政の足しにすると言い切る。


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