第74話
「……」
「ジークさん?」
ジークが目を閉じ、しばらくするとすでに日が落ち、暗くなっている周囲から小さな光が浮かび上がり始め、ノエルはこの光がジークによって引き起こされた現象だと気が付き、彼の名前を呼ぶ。
「こんなものかな?」
「ちょ、ちょっと、ジーク、何をしたのよ?」
ジークはノエルの反応から見せたいものが成功したと思い、目を開くと小さな光はゆっくりと彼の周りに集まって行き、フィーナは何が起きているのかと聞く。
「精霊達に姿を見せて欲しいってお願いしたんだ。肉や魚は肉体を作り上げるのに食べないといけないものだけど、魔力を高めるにはそれを断つのも必要みたいなんだよな。特に大地に恵みを与える精霊の力は多くの作物に宿るわけだし、植物からそれを分け与えて貰い、精霊達に感謝をする事、その感謝に精霊達は答えてくれる。だから、ノエルはたぶん、精霊魔法の方が相性が良いと思う」
「そうなんですか?」
ジークは高い魔力を持ちながらも魔法が苦手なノエルに精霊魔法を覚えて見てはどうかと言うとノエルは理解しきれていないようで首を傾げる。
「確かに感謝とかはノエルの専売特許よね」
「まぁ、あくまでも1つの提案だけどな。ノエルは元々、高い魔力を持ってるわけだし、精霊魔法以外でも覚えては行けると思うけど、まぁ、正直、何か覚えてくれると楽になる」
フィーナはノエルの性格で言えば、精霊達にも過剰なくらい感謝すると思ったようで大きく肩を落とし、ジークはフィーナが考えている事が手に取るようにわかるようで苦笑いを浮かべた。
「はい。頑張って、ジークさんのお役に立ちます」
「そのやる気がから回らない程度に頑張ってくれ」
ノエルは期待されていると思ったようで両の拳を胸の前でしっかりと握り、ジークはそんな彼女の様子にから回らない事を祈る。
「やってみて言うのもなんだけど、実際は肉や魚が食いたくなる時もあるからな。俺は続けられる自信がない」
「でしょうね」
ジークは菜食に飽きてきたと本音を漏らすとフィーナはため息を吐く。
「まぁ、肉にも魚にも感謝するのは大切だとも思ったけどな」
「そうです。植物にも動物にも命を貰ってわたし達は生きているんですから、無駄な争いはしてはいけないんです」
「……ジーク、余計な事を言ったわね」
ジークは食材になって貰った動物にも感謝が必要だと言うと平和主義を語るノエルにおかしな火を点け、彼女は勢いよく立ちあがり、フィーナは頭を押さえて、ジークに視線を向ける。
「とりあえず、夕飯を終わらせよう。俺は食い終わったら、最初に少し寝るから、片づけくらいはしておけよ。良いか、食器類は割るなよ」
「わかってるわよ。それくらい、ノエルがやるわよ」
「……ノエル任せかよ」
ジークは夕飯の続きに戻ると夜の見張りもあるため、1度、寝ると言い、片づけを任せるがフィーナは当然のように片づけをノエルに丸投げするようであり、ジークは彼女の返事を大きく肩を落とした。