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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
732/953

第732話

「それ以外にもいろいろね」


「……まだ、何かあるのかよ?」


マグス家にはまだ何かあるようでカインは苦笑いを浮かべる。

彼の表情にジークは他にも問題があると思ったようで眉間にしわを寄せて聞き返す。


「今のマグス家の当主には息子と娘が1人ずつ居るんだけどね」


「……ティミル様の代わりにティミル様の血を引くカルディナ様を息子の嫁にしようとしたのか? なんかいろいろと怖いな」


「それは引きますね」


カインは苦笑いを浮かべたまま、話しを続けるとその内容からジークは察しがついたようで大きく肩を落とした。

マグス家の当主はカルディナを息子の嫁にしようと画策していたようだが、カルディナを溺愛しているラースやマグス家の当主の考えている事を理解したティミルは当然反対し、マグス家当主の思い通りにはならなかったようである。

恋愛話の大好きなフィアナでさえ、マグス家当主の行動は理解できないようで顔を引きつらせる始末である。


「まぁ、他にもいろいろね」


「……いろいろって他に何があるんだよ? 娘の方だとしたっておっさんには息子はいないだろ」


「ほら、俺って才能の塊のような人間だし」


カインはそれ以外にもマグス家との確執はあると言いたいようでため息を吐くとジークは眉間にしわを寄せて聞き返す。

その質問にカインはどこかバツが悪そうに視線をそらし、ジークの眉間はさらに深くなって行く。


「……魔法の才能があったって、お前はジオスみたいな辺境の出身者だろ」


「だから、魔法の才能は血に宿っているって思っている人達の集まりだしね。魔法の才能がある人間は貪欲に集めようとするわけだよ」


「その前にカインの才能と立場を考えて、ラースがカルディナの婚約者に考えていた事もあり……後はそういう事だ」


ジークは頭をよぎった考えを否定するように声を出すとカインは酷く疲れた表情で大きく肩を落とした。

カルディナを婚約者にする事も出来ず、自分達が目をつけた才能のあるカインには先手をつけられた事もあるのか、マグス家当主のラースへの敵意は最高潮になったようである。


「……お前は何をしているんだ?」


「いや、俺に言われても困るよ。俺とマグス家の直接的なつながりは次期当主を埋めたくらいかな?」


「う、埋めた?」


ジークはカインが悪くないのは理解しながらも文句を言わないと気が済まないようでため息を吐く。

カインは苦笑いを浮かべつつ、自分は悪くないと言うが彼もしっかりとマグス家との軋轢があり、フィアナは状況がわからないようで顔を引きつらせる。


「……思いっきり関わりあるじゃないかよ。セスさんが言っていた埋められた貴族の息子かよ」


「まぁ、魔術学園は才能の集まりがそろっているからね。家柄くらいしか誇れるような人間には屈辱だったみたいだね」


「何だろうな。カインのせいでいつも余計な敵を作っている気がする」


大きく肩を落とすジークの姿にカインは器が小さいと言いたいのか首を横に振った。

ジークは過去のカインの行いを責めるように睨み付けるが、カインは間違った事をしているとは思っていないようでひょうひょうとしている。


「カ、カインさんは敵も多そうですけど、味方もきっと多いですよ」


「……フィアナ、それはフォローにはなっていない」


「そ、そうでしょうか?」


ジークと同じ事をフィアナは考えたようだがそれでもカインの持つ人脈は武器であり、必死にフォローしようとする。

言葉ではフォローしているものの、目は泳いでいるようでシュミットは大きく肩を落として声をかけるとフィアナはバツが悪そうに目を伏せた。


「とりあえず、マグス家が魔導騎士隊の障害って事か?」


「マグス家だけじゃないけどね。その一端な事は確かだね……と話がそれたね」


フィアナの様子にジークは助け舟を出そうとしたのか首を捻るとカインは頷くが関係ない話になっていたと思い出したようで苦笑いを浮かべた。


「とりあえず、フィアナの立ち位置はラング様に相談するとして」


「そうだな。エルト様にいきなり通してしまってはフィアナの胃にも穴が開く。父上に相談してみよう」


「……シュミット様、薬いるか?」


フィアナの性格を考えるとエルトに振り回される事は容易に想像がつき、カインとシュミットは眉間にしわを寄せる。

シュミットの様子にジークは彼が体調を崩していると思ったようで常備している胃薬を彼の前に置き、シュミットは素直に受け取った。


「待ってください!? エルト様ってどんな人なんですか!?」


「……深く追求してはいけませんわ」


「……気にするな」


3人の様子にフィアナは不安しか感じないようで顔を引きつらせると睨み合いを終えたアノスとカルディナは彼女の肩に手を置き、首を横に振る。

その行動はフィアナの不安をあおるには充分であり、フィアナは助けを求めるようにジークへと視線を移すがジークは逃げるように視線をそらす。


「こう考えると内乱とか戦争が起きた時は本当に大丈夫なのか?」


「大丈夫じゃないから、エルト様は改革をしようとしているんだろうね。それでも昔から固まった意識もあるから難しいんだよ」


「国を維持するのはこのままでも良いと言う者もいるが、それは国ではなく自分達の身を守るために保守的だと捉えても良い」


ジークは騎士と宮廷魔術師の軋轢は有事の時にどうにかできるのかと聞く。

カインとシュミットはそれを変えるためにエルトは動いていると苦笑いを浮かべる。


「でもさ。エルト王子は王位を継いだわけでもないのにそんなのを勝手に進めて問題ないのか?」


「問題はあるけど、すでに国王様とラング様には改革案は秘密裏だけど承認を貰えているから心配はないよ。王族に近い者達の利権争いもアンリ様を他の医師に診せられない要因だからね。エルト様だけではなく、ライオ様の協力も取れているからね。後はアノスみたいに親と考えが合わないで協力的な考えを持つ若い世代とかも」


「……恐ろしいくらいの根回しだな」


カインの入れ知恵なのかエルトは少しずつ協力者を増やしており、ジークは恐ろしくなったのか顔を引きつらせる。


「古い考えすべてを否定する気はないが、マグス家のように古い考えに固執して変えようとしない者達には一線から離れて貰う必要があるからな」


「時代は変わって行くんだからね。良いものはより良いものにして行かないと新しい価値観を持った者達に駆逐される可能性もあるからね。国や民を守るためにも必要な事だよ」


カインとシュミットが語っているのはハイム国の未来の話であり、それが理解できているのかジーク、アノス、カルディナ、フィアナの4人は小さく頷いた。


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