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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
731/953

第731話

「魔術師にも面倒なヤツがいるんだな」


「……政務を取り仕切っていると魔術師の方が面倒な者は多い」


「そうなのか? 俺の知っている魔術師は研究命で他に興味がない人間だったり、使えるなら何でも使う性悪だったりするから、イメージが」


ジークの知る魔術師の多くは魔術学園に通っている者達であり、ジークは自分の知る魔術師達とイメージが合致しないようで首を捻る。

シュミットは政務で宮廷魔術師から意見を聞く事も多いため、彼らの扱いに困っているようで眉間にしわを寄せた。


「そんなに面倒なものなんですかね?」


「宮廷魔術師は昔から魔術師として王国に仕えている者が多いんだけど、そう言う人達の多くは魔術の才能は血に眠っていると思っているんだよ」


「血に? ……そんな事はないだろ。魔術の才能が血で決まるなら」


フィアナは遠慮がちに手を上げて聞くとカインは宮廷魔術師の言い分を説明する。

しかし、宮廷魔術師の言い分はフィーナを知るジーク達には肯定などできないようで書斎には微妙な沈黙が広がって行く。


「……ジークの言いたい事も良くわかるけど、少なからず、そう言うのもあるのは確かだからね。血の中に魔法陣を刻み込む魔術師達もいるから、そう言う特殊な魔法は決められた一族にしか使えない事もあるよ」


「王族や貴族、騎士は家同士の繋がりを強くするために婚約で縁を結ぶが宮廷魔術師など魔導を追及する者は血を濃くするために縁を結ぶ」


「血を濃くするため?」


沈黙を振り払うためにカインは少なからず、影響している事もあると話し、シュミットは自分達とは異なる縁談を宮廷魔術師達は考えていると言う。

シュミットの言いたい事が理解できないようでジークとフィアナは首を傾げた。


「簡単に言えば同族同士の婚姻ですわ。まったく気持ち悪いですわ」


「同族同士? 兄妹でとかか?」


「昔はあったみたいだけど、さすがに今は止めているよ。近くて従兄妹だね。あまり近いと問題が起きても困るからね」


カルディナは気持ち悪いと不機嫌そうに舌打ちをする。

彼女の言葉にジークは眉間にしわを寄せるとカインは小さくため息を吐いた。


「とりあえず、宮廷魔術師が血を重視しているのはわかったけど、それが協力しないって事にはつながらないんじゃないか?」


「宮廷魔術師で1番発言力の強い家が……オズフィム家を嫌っているから」


「オズフィム家を? ……カルディナ様、何かしたのか?」


宮廷魔術師の話を聞いたが、それが騎士と宮廷魔術師の軋轢にはならないと思ったようでジークは首を捻る。

カインは困ったように笑うとオズフィム家に原因があると言い、ジークは協力的なラースではなくカルディナに原因があると考えたようで視線を彼女に移した。


「……私は何もしていませんわ」


「自分で気づかないだけでケンカを売ったんだろ」


「違いますわ!! あなたのようなバカと一緒にしないでください!!」


カルディナは不機嫌そうな表情で首を横に振るが、アノスは今日の彼女の態度から原因はカルディナにあると決めつけるように言う。

その言葉が彼女の怒りに火を点け、カルディナはまたもアノスを怒鳴りつけ、2人の睨み合いが始まる。


「……本当にどうにかならないのか?」


「もう無理だろ。それより、カルディナ様が原因じゃないなら、原因はおっさんか? それともその前の代か?」


「ラース様とも言えなくはないけど……どちらかと言えばティミル様かな?」


2人の様子にシュミットは眉間にしわを寄せるがジークはもう2人の間に割って入るのを諦めたようで何が起きているのかと聞く。

カインは困ったように笑うと原因はラースの妻であり、カルディナの母親であるティミルにあると言う。


「ティミル様?」


「確か、ラース様の奥さんですよね? 大恋愛の上、略奪愛で結ばれたって言う」


「……フィアナ、落ち着け」


ティミルの名前になぜかフィアナは興奮し始め、勢いよく立ち上がる。

その様子からゴブリン達の集落でラースが自ら語ったであろう恋愛話にかかわっている事がわかり、ジークは彼女と若干、距離をあけてはいるが落ち着かせようと声をかけた。


「……失礼しました」


「カイン、おっさんとティミル様に何があったか簡潔に教えてくれ。フィアナが興奮しないように」


「私が説明しますよ、凄い話なんですよ。憧れますよ」


フィアナは少しだけ冷静さを取り戻したようで1つ咳をするとソファーに座り直す。

ジークは彼女を興奮させないようにカインに簡単な説明を求めるが、フィアナは手を上げて立候補する。

彼女の目は輝いており、不安しか感じないジークとシュミットは首を横に振った。


「えーと、簡単に説明するとティミル様の実家が宮廷魔術師の名家である『マグス家』に連なるんだけどね。その現当主はティミル様の許嫁だったんだけど、ティミル様は家を捨ててラース様に嫁いだ」


「……ティミル様、行動力があるからな。その時のおっさんは慌てただろうな」


「愛し合っている2人を、血を濃くするためにと言うくだらない理由で引き裂こうとするのが悪いんです!!」


カインは困ったように笑うとオズフィム家とマグス家の関係が最悪になった理由を話す。

ジークは納得が行ってしまったようで小さく肩を落とすとフィアナはラースとティミルの味方だと言いたいようで拳を握り締めて叫ぶ。


「騎士の名家であるオズフィム家が宮廷魔術師のマグス家の縁を結ぶ事は国としては有益だと考えて先代の王が間に入って何とか抑え込んだんだがな……」


「現マグス家の当主は許嫁だからではなく、本当にティミル様に恋愛感情を抱いていたみたいで表向きは納得したけど、上手くはいかなくてね」


「……血って魔術の才能だけじゃないんだな。おっさん譲りかと思っていたけど、マグス家の血か」


シュミットもラースとティミルの事は聞いているようで国が仲裁に入った事を告げる。

しかし、事は簡単に収まる事はなかったようでカインとシュミットは大きく肩を落とした。

ジークはカルディナの性格はラースから引き継いだものだけではなかったと思ったようで大きく肩を落とす。


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