第73話
「ふかふかです」
「相変わらず、良いテントよね」
ジークも合流し、3人でテントを張り終えるとノエルは思っていたより、心地よさそうなテントだったようで目を輝かせ、フィーナはそんな彼女の様子に苦笑いを浮かべる。
「まぁ、アーカスさんのおかしな研究につきあったからな」
「アーカスさんが作ったんですか?」
ジークはこのテントを手に入れるためにアーカスのおかしな魔導器の実験につきあったとため息を吐くとノエルは首を傾げた。
「一応、このカバンとかもな。身体を張ったからな」
「えーと、フィーナさん、ジークさんに何があったんですか?」
ジークは物思いにふけるように遠くへと視線を向けると、あまり見る事のないジークの表情にノエルは苦笑いを浮かべる。
「……気にしない方が良いわよ。戻れなくなるから」
「えーと? はい」
フィーナはジークほどでもないが、アーカスのおかしな実験に付き合った事があるようでノエルから視線を逸らし、ノエルはこれ以上は踏み込んではいけないと判断したようで大きく頷く。
「それじゃあ、夕飯を食っちまおう。あまり、遅くなると面倒だからな」
「は、はい」
ジークはテントの中にいるノエルに声をかけるとノエルは大きく頷き、テントから出ると3人はジークが準備していた夕飯を囲むように座る。
「えーと、相変わらず、肉っけがないわね。ジーク、あんた、枯れないの?」
「……フィーナ、言葉を選べ」
ジークはノエルが居候するようになってから、ノエルが菜食主義者のため、彼女に合わせた食事を続けており、実家に帰り、食事をしたりしているフィーナから見ると味気ない物になっているようでフィーナはため息を吐いた。
「す、すいません」
「いや、ノエルが謝る事じゃないから、それにアーカスさんとかエルフと言った種族が菜食主義者な理由が何となく、わかった気がする。後、ノエルの魔力の質についても」
「わたしの魔力の質ですか?」
ノエルはジークの食事を変えてしまった事を謝るが、ジークは肉や魚を食べない事でわかった事もあると苦笑いを浮かべる。
「精霊に力を借りて使う精霊魔法は人族や魔族に比べてエルフの方が強力なものを使うと言われている」
「まぁ、常識よね」
ジークは精霊魔法と言われる魔法の性質を話すとフィーナはそれくらいは知っているとため息を吐く。
「菜食していて、以前より、精霊達を近くに感じるように感じるんだよな」
「感じるって、そんな感覚で」
ジークは苦笑いを浮かべるとフィーナは彼が何を言いたいのかわからないようで、呆れたような視線を向ける。
「まぁ、論より、証拠か?」
「ジークさん、何をするつもりですか?」
ジークは上手く説明できないと思ったようで見せて見る言うと食べかけの夕飯を置くと目をつぶり、集中し始めるがノエルはジークが何をしたいのかわからないようで首を傾げた。
「……まぁ、見ててくれ」
「つまらない事じゃないでしょうね」
ジークはノエルに少し待って欲しいと言うとフィーナはジークを疑っているようで疑惑の目を向けている。