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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第729話

「ガートランド商会が取引に乗じて様々な場所に出入りしているのは明白だけどね。どんな取引をしているかはわからないんだよ」


「……アノスの実家に何かないか?」


「ジークさん、凄く悪い顔していますよ」


カインはジークの事を気にする事無く、ガートランド商会が橋渡しをしている物を探せないかと言う。

その言葉にジークは何か思いついたようで小さく口元を緩ませると彼の表情にフィアナは大きく肩を落とす。


「……そんな顔はしていない。おかしな事を言わないでくれ」


「いえ、言いたくないですけど……悪巧みしている時のカインさんみたいでした」


「フィアナ、それはどう言う意味かな?」


フィアナに指摘されてジークはコホンと1つ咳をするが、フィアナはジークの表情がカインと重なったとため息を吐く。

彼女の言葉にカインが小さく肩を落とすとフィアナは愛想笑いを浮かべながら、カインから視線をそらした。


「アノスが完全にこっち側についてくれたのが確認できれば、それも調べては見たいんだけどね。正直、そう言うのはアノスに向かないだろ? 少なくとも今のままだと俺達がイオリア家に侵入するのもばれると面倒だ」


「流石に騎士様の実家を俺達が家探しするような状況にはならないよな。アノス1人にやって貰うとしても向き不向きで言えば向かないだろうな」


「失敗をして、アノスに何かあっては後々の事を考えると無理はさせられないな。アノスが失敗する事でこちらがガートランド商会を調べようとしているのがばれるのは不味い」


ジークと同じ悪い考えはカインも考え付いていたようであるが、アノスには実家の家探しなどできないと諦めているのか苦笑いを浮かべる。

カインの言葉でジークは凍り付いているアノスへと視線を向けるが、細かい調査をしているアノスの姿は想像もつかなかったようで大きく肩を落とす。

シュミットも同意見だったのか、こちらの動きを探られる可能性もあるため、危険な手段には移れないと言う。


「性格もあるけど、調査の仕方とかも知らないだろうからね」


「……そうだな。おっさんに頼んで騎士の仕事の合間に連れ出して徹底的に仕込むか? 今のままだと父親を怒鳴りつけて不正の証拠を出せって直接問いただしそうだ」


「簡単に言っていますけど、普通は出来ないと思うんです。と言うか、遺跡の時に不思議に思ったんですけど、どうしてジークさんは調査とかそこまで身についているんですか? 薬屋さんですよね? 覚える機会なんでないですよね?」


ジークとカインの中では長い時間を取ってアノスに実家の探索をして貰う事に決まったようで顔を見合わせると2人そろって口元を緩ませた。

2人の様子にフィアナはため息を吐いた後、薬屋だと主張しているジークの能力が薬屋として生かされないものだとも思えてならないのかジークへと視線を向けた。


「……命がけだったんだ」


「どうして、薬屋さんが命がけになるんですか?」


「ジークの場合、おつかいに行くだけでも命がけだったからね。そこで注意力とかを学んだんだろうね。後は応用かな?」


フィアナの言葉にジークは視線をそらすが、フィアナにはまったく理解ができないようで首を捻る。

カインは2人の様子に苦笑いを浮かべた。

カインの言う命がけのおつかいとはアーカスの家へ行く事ではあるが、意味の解らないシュミットとフィアナは怪訝そうな表情をいている。


「命がけの罠解除で手に入れたものだからね。フィアナもやってみる? 冒険者には必要な能力だよ。必要だと思うなら、訓練に最適な場所に連れて行ってあげるよ」


「止めろ。フィアナの運動神経だと跡形もなくなるぞ!? フィアナ、絶対にカインの言葉に乗るな。まだ死にたくないだろ」


「ジークさんは子供の頃に何をしていたんですか!? それに跡形が無くなるってどんな物騒な場所ですか!?」


カインはフィアナに冒険者として必要な能力だと言ってアーカスの罠地帯に彼女を閉じ込めてみようと思ったようで口元を緩ませるが、ジークは彼女の悲惨な姿しか目に浮かばないようで声を上げてフィアナに話に乗るなと念を押す。

ジークの様子にフィアナは何があったかわからないようだがただ事ではない事は理解でき、驚きの声を上げた。


「フィアナは見ただろ。シギルでジークが作った罠をジークはそれを体験して覚えたんだよ。もっと、えぐい罠を体験してね」


「……無理です。ジークさんの言う通り、私なんか跡形もなくなってしまいます」


「……これ以上、追及する物でもなさそうだ。話を戻すぞ」


フィアナはシギル村で冒険者達を一網打尽にしたジークの罠を思い出して顔を青くする。

シュミットだけは状況が理解できていないのだが、フィアナの様子にただ事ではないとは理解できたようで小さく頷いた。


「貴様、何のつもりだ!!」


「……このタイミングでくるか」


「アノス、静かにしろ。話が進まない。だいたい、お前がカルディナとともにいがみ合いを始めたから、氷漬けにされたんだろう。自業自得だ」


その時、アノスを封じ込めていた氷が解けたようで勢いよく立ち上がるとジークを怒鳴りつける。

ジークは面倒なタイミングで目を覚ましたと思ったようで大きく肩を落とすとシュミットが彼に止まるように言う。

シュミットにアノスとカルディナの行動に問題があったと言われてしまってはどうしようもなかったようで不機嫌そうにソファーに座り直す。


「カイン、アノスが目を覚ましたけど説明し直すのか?」


「後にするよ。同じ話をするとジークとフィアナは飽きるだろう? アノスは2人に説明した事は基礎知識として頭に入っていると思うし、それで良いかな?」


「……わかった」


アノスが目を覚ました事で説明が重複してしまうと思ったようでジークはカインへと質問する。

その表情からカインはジークが飽きている事を感じ取ったようで大きく肩を落とすとアノスに確認し、アノスも2人の表情を見て不服なようだが小さく頷いた。

ジークとフィアナはこれまでの話でも充分に飽きてきていたようでカインとアノスの会話に安心したようで胸をなで下ろす。


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