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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
724/953

第724話

「あの、それで私達はどうしてシュミット様に呼ばれたんですか? ジークさんのお爺さんとの事で何かあったんですか?」


アノスとフィアナが席に着いた事でシュミットは話が始められると思ったようで小さく息を漏らす。

その様子にフィアナはこの場から少し逃げ出したいと思っているのか、本題に入って欲しい事を伝えるために手を上げた。


「そうだな……集まって貰ったのはハイムの周辺の国々の事についてお前達がどれだけ知っているか確認して置こうと思ったんだ」


「周辺の国ですか?」


シュミットは小さく頷くとカインに語らせずに自分で3人を呼び寄せた理由を話す。

彼の言葉にアノスとカルディナの表情は引き締まるがフィアナだけは状況が把握できていないのか首を傾げている。


「……それはエルト様に考えに対して、起こりうる周辺国の対応についてと言う事でしょうか?」


「そうなるな。それを考える上でアノスとフィアナは魔族と関わってどう思ったか? カルディナは魔族との共存を考えた上での考えを聞きたい」


「あ、あの、それは他の国と戦争もあり得ると言う事でしょうか?」


カインやシュミットがエルトの指示で動いていると知っているカルディナは確認するように聞くとシュミットは肯定する。

そこで初めてフィアナは状況が理解できたようで顔を青くして聞き返すとシュミットは頷き、フィアナは恐怖に囚われてしまったのか身体を小さく震えだす。


「別に戦争を起こそうとしているわけじゃないからね。そうならないようにするのが、俺達の仕事なわけだし。でも、アノスは戦争が起きた方が騎士としての武勇を示せるから、そっちの方が良いかな?」


「バカな事を言うな。戦争で騎士が動くのは当たり前だが、望んで仕掛ける気などない」


カインはフィアナに心配ないと笑いかけると名誉欲の強いアノスの腹の中を確認したいのか挑発するように聞く。

アノスはカインからの挑発にムッとしながらも、騎士として有事の際は仕方ないが戦争など無意味だと言いたいようで首を横に振った。


「カイン、わざわざ挑発する必要はないだろ」


「そうだね」


「アノスからその答えを聞き出す事が重要だったのだろう」


カインとアノスのやり取りにジークは膝の上に乗っているクーの頭をなでながらため息を吐く。

その言葉にカインは困ったように笑うがそれはカイン特有の本心を聞き出すための挑発であり、シュミットはジークに茶々を入れるなと言いたいのか小さく肩を落とす。

シュミットに言われてジークは疑うような視線をカインに向けると彼はジークの顔を見て小さく口元を緩ませ、その表情の変化にジークは勝てる気がしなかったのか口をつぐむ。


「本当に戦争を仕掛ける気はないんですよね?」


「ない。だが、エルト様が即位をして魔族との共存を正式に打ち出せば周辺国との関係は悪化するだろう」


「周辺国だけではなく、内乱も起きる可能性が高いですわ……それに民から何を言われるかもわかりません」


フィアナは戦争など起きて欲しくないため、不安そうな表情をして聞く。

シュミットはきっぱりと戦争を否定するがそれはあくまでもハイムの事情であり、他国との関係についてはまだわからないと首を振る。

カルディナも状況は理解できているためか、問題は他国だけではないと言うとジークを睨み付けた。


「……なんで、俺が睨まれないといけないんだ。エルト王子を惑わしたとか思っているのか?」


「内乱を起こしそうな人間でもっとも有力なのが強欲爺だからね。後、クーがジークの膝の上に乗っているから」


「爺さんの事を俺に言われても困る……クーの事もな」


カルディナの視線の意味がわからずに大きく肩を落とすジーク。

カインはジークにカルディナの視線の意味を説明するが、それこそ自分に言われても仕方のない事であり、ジークの眉間にはくっきりとしたしわが寄る。


「それで起きうる事を理解していて貰おうと思ったわけだ。それに伴って周辺国との関係を説明しようと思ったんだ」


「ど、どうして、私が中に含まれているんですか? 私より、カインさんと動く事の多いノエルさんやフィーナさんの方が」


「2人はバカだから話をしても無駄だから」


シュミットは本題に移ろうとするが、フィアナはこのような大きな話は自分が立ち入るべきではないと思ったようで首を大きく横に振り、この場にいない2人の名前を出す。

彼女の口から出た2人の名前は既にジーク、カイン、シュミットの3人の中では同席する必要のない人間の名前であり、カインはきっぱりとバカに説明するだけ無駄と切り捨てる。

カインの物言いにアノスは眉間にしわを寄せ、フィアナはそんな事ないと言いたいのかジークに助けを求めるような視線を向けるとジークはポリポリと首筋を指でかくが反論はできない。


「あ、あの、その言い方は」


「ノエルは会う人すべてが善人だ。話し合いをすればわかってくれると思っているし、フィーナは話の途中で頭がついて行かなくなる。居ても無駄」


「確かにその通りだと思うが言い過ぎではないか? それに……」


ジークからの援護がないため、フィアナはカインに反論しようとするがカインは無駄である理由を話す。

フィアナも2人が悪い人間ではない事は理解しているが、カインの言いたい事も理解できるようで口元を引きつらせる。

アノスはここ数日に2人の事を見ていたためか、言いすぎだと言いたいようで眉間に深いしわを寄せると感情的なカルディナが話し合いにいる事の方が疑問のようで彼女へと視線を移す。

カルディナはアノスの視線に敵意がある事を感じ取ったようで睨み返し、2人の間には再び、険悪な空気が流れ始める。


「……話が始められないな」


「そうだな。アノス、カルディナ、いい加減にしないか。ここに居る者には様々な立場で国を担って貰わなければいけないんだ。自覚を持て」


2人が睨み合いをしている姿にジークはため息を吐くとシュミットは大きく肩を落とす。

主筋であるシュミットの言葉に2人は不機嫌そうだが、睨み合いを止めるがフィアナは国を担うと言う自分への大きすぎる評価にどうして良いのかわからないようで泣きそうな表情をしている。


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