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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
723/953

第723話

「……ジークさん、私、何かおかしな事をしたんですか?」


「そう言う話じゃないから」


カインがアノス、カルディナ、フィアナ、クーを連れて入室する。

シュミットの書斎に連れてくる理由をカインが詳しくしなかったのか、フィアナはジークの隣に移動するとすぐに何があるのかと怯えた様子で聞く。

彼女の様子にジークは小さくため息を吐き、カインへと視線を向けるとカインは意味ありげに口元を緩ませた。

その表情にジークは不安しか感じなかったようで眉間にしわを寄せるとカルディナから逃げるようにクーがジークに飛びついた。


「平民、クーちゃんを渡しなさい!!」


「……静かにしろ。誇り高いオズフィム家の血を引くなら主筋からの招集を受けたと言う自覚を持て」


「黙りなさい。似非騎士の分際で」


カルディナはクーに逃げられたため、取り返そうと思ったのかジークを怒鳴りつける。

彼女の態度はアノスには我慢ならなかったようで年長者として、同じ騎士の一族として態度を改めるように言うが、カルディナはイオリア家を騎士と認めていないのか鼻で笑う。


「落ち着け。ここでキレるな」


「……わかっている」


似非騎士と言う言葉はアノスには我慢ならないようで額にくっきりとしたしわが寄り、ジークは慌ててアノスを落ち着かせようと声をかけた。

シュミットと言う主君の前で恥ずかしい事はできないと言う思いはあるようでアノスは怒りを何とか抑えようと拳を握り締めており、ジークは助けを求めようと周囲を見回すがフィアナは巻き込まれたくないようで視線をそらし、カインとシュミットはこの場で話す事の相談を始めている。


「……あんまりおかしな因縁をつけるとこれから先、クーと会わせないぞ」


「……今日のところは引いてあげますわ」


助けがない事にジークは大きく肩を落とすとカルディナへと視線を向ける。

彼女はアノスへと見下すような視線を向けており、ジークはカルディナを黙らせるために切り札を切った。

カルディナにとって、クーはストレス解消をするために最重要な存在であり、すぐに譲渡するとシュミットの言葉を待つと言いたいのか姿勢を正す。


「……納得がいかない」


「怒るな。お前の言いたい事もわかるから」


カルディナが態度を変えた様子はアノスにとっては自分とクーが天秤にかけられた上で、自分が下に見られたとしか思えず、彼の怒りは治まるわけはなく吐き捨てるように言う。

ジークは完全に板挟みになっているためか、ジークは胃の辺りをさすりながらアノスに声をかけ、クーはジークを心配するように彼の顔を覗き込む。


「……なんで俺は一般人なのにこんなにおかしな事に巻き込まれているんだろうな」


「それに関して言えば、同感です」


「2人とも巻き込まれるべくして巻き込まれているんだから、文句を言わない」


ジークは心配いらないと言いたいのかクーの頭をなでるものの、口からは不満が漏れており、最近、おかしな事に巻き込まれているフィアナも同じ思いのようで大きく頷く。

その時、シュミットとの打ち合わせが終わったのか、カインはジークとフィアナに声をかける。


「ジークは血筋、フィアナは人間関係かな? ソーマにかかわった時点でつんでいたね」


「……不本意だけど反論ができない」


「だって、ソーマさんは新米の冒険者でも分け隔てなく接してくれますし」


嫌そうな表情をする2人だが、カインは楽しそうに笑う。

最近、知ったとは言え、祖父と伯父の争いを無下にできるジークではなく、眉間に深いしわを寄せて大きく肩を落とすがフィアナは反論しようと声を上げる。


「まぁ、冒険者になった時点でこういう厄介事に首を突っ込む可能性は考えていなかったのは問題だね。冒険者は時に勇者とも言われる事のある職種だよ。有能だと判断されれば国の有事には協力して貰うのは当たり前じゃないか? 言っておくけど、自分に才能がないと言うのは認めない。俺もそれなりに他人を見る目は持っているつもりだからね」


「……カイン、お前はジークを怒らせたいのか?」


しかし、フィアナではカインに反論などできるわけもなく、カインはフィアナを考えが足りないと切り捨てた。

その一言にフィアナは押し黙ってしまうが、カインの言葉はジークの癇に障ってしまったようで彼のこめかみには青筋が浮かぶ。

シュミットはジークが勇者と言う言葉に不快感を示す事を知っているためか、カインの行動を非難するようにため息を吐いた。


「そう言うわけではありません。それにジークが嫌っても勇者と呼ばれる事を目指して冒険者になる人間は後を絶たないわけですしね」


「それはそうだが……まぁ良い。それでは始めよう。少し長くなる。楽にしてくれ」


カインはやんわりとした口調でジークを挑発したわけではないと言う。

ジークはカインの言葉が自分をおちょくっているのか、本当にフィアナの反論を押さえるためか判断ができないようで眉間にしわを寄せつつも口をつぐんでいる。

そんな彼の様子にシュミットはこのままでも大丈夫だと判断したようで大きく頷くとまだ状況がつかめていない3人に向かい楽にするように言う。

シュミットから許可が出た事で彼の補佐をしているカルディナはすぐに楽な体勢になるが、騎士として示しがつかないと思っているアノスと面識はあるとは言え、王族であるシュミットの前でどこまで体勢を崩して良いのかわからないフィアナは体勢を崩す事ができないようである。


「フィアナ、良いって言っているんだから、楽にしたらどうだ? フィーナみたいな態度をしても怒らないくらいにシュミット様も成長しているから」


「ジークさん、その言い方はどうかと思うんですけど、それに楽な態度と言ってもフィーナさんみたいな態度は取れません」


「ジーク、その言い方もかなり失礼だと思うが、アノス、フィアナ、楽にしてくれと言っているんだ。話が進められん」


ジークは自分の言葉ではアノスが従う事はないと思ったようでフィアナの説得に移る。

説得にフィーナの言葉を上げるとフィアナは彼女のような態度など絶対にできないと言いたいのか大きく首を横に振り、シュミットは彼女の姿に苦笑いを浮かべるともう1度、楽にするように促した。


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