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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第722話

「改めて、前途多難だ」


「わかっていた事だろう」


「言い難いんですけど、ジークは口先だけであまりわかっていないですよ。共存を目指す理由が色ボケですから」


知らない情報も多いためか、ジークは苦笑いを浮かべる。

彼の反応にシュミットは小さくため息を吐くが、カインはジークには状況の理解はさほどできていないと言う。

その言葉はジークの考えの的を射ているようでジークは視線を泳がせ、シュミットは彼の様子に眉間にしわを寄せた。


「……ジーク=フィリス」


「仕方ないだろ。元々、片田舎の人間なんだから、魔族にだってかかわると思っていなかったんだから、他の国の名前だってなんとなくわかるくらいだぞ」


「だからと言って、共存を目指したのなら考えるべき事は多々あるだろう」


シュミットの様子にジークは慌てて自己弁護を始める。

その姿にシュミットは呆れ顔でもう少し考えろと言う。


「俺だって、いろいろと努力しているだろ?」


「それ以上に努力している人間はいるね」


「……悪かった」


ジークは自分だって頑張っていると主張しようとするが、カインは即座に彼の主張を切り捨てる。

自分が面倒事をカインやシュミット、レギアスに押し付けているのも理解しているジークはいたたまれなくなったのか視線をそらして謝罪する。


「少しだけ、説明しといた方が良いですかね?」


「そうだな。ジークには何かしらで働いてもらう事が多いだろうからな。何より、今はフォルムにいるんだ。少なくともザガードの事は話しておいた方が良いな」


「……それって、今、必要な事か? それに必要な話なら、ノエルやフィーナがいた時に話した方が」


カインとシュミットはジークに理解が足りないため、後々の事を考えて隣国との話をした方が良いと判断したようでまっすぐとジークへと視線を向けた。

自分に注がれる視線にジークは居心地が悪くなったようで話を1度、終わらせようとする。


「フィーナは覚えきれない。ノエルは現実みないで何とかなるって言うよ。ジークもさっき同じ事を思ったはずだよね?」


「……否定する要素が見つからない」


女性陣2人は話し合いに向くタイプではなく、カインはため息を吐く。

その言葉にジークは力なく笑うと観念したようでシュミットの顔へと視線を戻す。


「……やっぱり、他の人間の聞き取りが終わってからにしないか?」


「本当に恰好がつかないね。どうにかならないの?」


「仕方ないだろ。心構えも必要なんだよ、そう言う情報の整理は苦手なんだ。俺は勉強じゃなく、何かをやって覚える人間なんだから」


しかし、ジークの覚悟は話が始まる前に折れてしまい、カインは呆れたような口調で言う。

ジークは力なく笑うと苦手意識が強いようで乱暴に頭をかく。

その姿にシュミットは眉間にしわを寄せるとカインの使い魔と視線を向けた。


「簡単な説明だけでもしておきます。フォルムに変えると何かと理由つけて逃げるかも知れませんからね。ただ、ジーク1人に話すと言うのは確かに時間の無駄な気がしてきました」


「そ、そうだろ。それじゃあ、次の機会と言う事で!?」


「……無駄な攻撃力だな」


カインは少しだけ考えを変えたようで小さくため息を吐く。

それを説明は無いとジークは判断したようで逃げるように席から立とうとするが、そんな彼の額にカインの使い魔のくちばしが突き刺さった。

額に走る痛みにジークは悶絶し、床を転がりまわり、彼の様子にシュミットは眉間に深いしわを寄せる。


「お望みなら、ここで火属性の魔法でも」


「必要ない。それで時間の無駄とはどう言う意味だ?」


「そのままです。シュミット様の目にはアノス=イオリアとフィアナはどのように映りましたか?」


シュミットはカインの言葉の意味を訪ねるとカインはすぐにアノスとフィアナの名前を出す。

それはシュミットが2人をどのように見定めたかと言う問いであり、シュミットは目を閉じると2人の印象から話を聞かせるべきか考え始める。


「……将来性込みだが話しても良いだろう。アノスの方はまだ不安は残るが他国との戦争になった時に騎士として隊を率いて貰う可能性もあるわけだからな。他国との関係を頭に入れておいて貰うのは悪くはない」


「それではアノス=イオリア、カルディナ=オズフィム、フィアナの3名を呼んできましょう」


「待て。カルディナを呼ぶのは危険ではないか?」


シュミットの頭は2人が次代を担う人間だとはじき出したようで小さく頷く。

彼の答えを聞き、カインはこの書斎にカルディナを加えた3人を呼び寄せると言うが、カルディナの評価には迷う事があるようでシュミットは眉間にしわを寄せる。


「次代を担う才覚はあると思います。まだ感情的になる事はありますが冷静な対処もできるように成長していると思えますが」


「それはそうだが……」


「……と言うか、カルディナ様はここに来るのか?」


カインは先日からカルディナにシュミットの補佐をさせていた事もあり、彼女の働きを評価できたか聞く。

カルディナは思っていたより有能だったようでシュミットは頷くものの、彼女の性格が引っかかっているようで反応は鈍い。

その時、額の痛みが治まったのかジークはふらふらと立ち上がると、現在のカルディナはクーに夢中になっているため、シュミットの命令を聞くかわからないと首を横に振る。


「大丈夫だよ。クーがジークに助けを求めようとキョロキョロ周りを見始めているから」


「……相変わらず、構いすぎているわけだな。また、嫌われるぞ」


「このままだとクーが爆発するからね。クーもこっちに連れてきます」


カインは残っている部屋の状況を話す。

部屋ではカルディナがクーの機嫌を損ねる1歩手前のようであり、カインは1度、休憩を入れてやりたいようであり、シュミットに許可を取る。

カインの言葉にシュミットは仕方ないと言いたいのか、大きく肩を落とした後、小さく頷く。


「それでは失礼します」


「今更だけど良いのか? 特定の人間を集めるとおかしな事を話しているんじゃないかって疑われないか?」


「疑う人間も出てくるだろうが、疑う人間はどんな状況でも疑う。個人相手の聞き取りでも、聞き取りの間におかしな話をしていると言った感じでな」


シュミットの許可が取れるとカインの使い魔は空気に解けて消えてしまう。

他の兵士達からは選ばれた人間相手で密談をしていると思われないかと疑問を持つジークだが、シュミットは些細な事だと首を横に振った。


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