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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
721/953

第721話

「……なんで、俺が呼ばれたんだ?」


「今回の行軍に参加した人間に話を聞くとカインには伝えてあっただろう?」


「いや、俺やノエル、フィーナは関係ないって聞かされていた」


シュミットの聞き取りはないと聞かされていたジークだが、シュミットの書斎に呼び出される。

入室すると書斎にはシュミットしかおらず、ジークは呼び出された意味がわからないと首を捻った。

彼の態度にシュミットは少し呆れた様子でため息を吐き、ジークはバツが悪そうに笑う。


「お前はまだしもあの2人で私と話し合いになると思うか?」


「……難しいな」


「私とフィーナでは話し合いと言う状況にもならない。ノエルは現実的な定義の話し合いは無理だ」


ノエルとフィーナと対話を行う事を考えると有意義な話になるとは思えないと言い切り、ジークは2人の性格を考えてシュミットの言葉に頷く事しかできない。


「……まぁ、良い。座れ」


「ああ……シュミット様だけで良いのか? こう言うのは普通、何人かいるもんじゃないのか?」


ジークの表情を見てシュミットは彼が納得したと判断したようで用意しているイスに腰を下ろすように促す。

シュミットに促されてジークは慌ててイスに座った後、改めて、書斎の中を見回してシュミットと1対1の話し合いで良いのかと聞く。


「あまり聞く側の人間が多くなれば本音を聞けないだろう?」


「……そうかも知れないけど、何かあったらどうするつもりだよ」


「エルト様ほどまで言わないが、私にだって剣術の心得はある。それにいるだろう。お前が知っているどこからともなく現れる男が」


ジークは兵士の中にギムレットの手の者がまだいる可能性を考えているようで眉間にしわを寄せる。

彼の疑問にシュミットは心配ないと言うとジークに警護がいないか考え直してみるように言い、ジークはもう1度、書斎の中を見回すとどこかで見た事のある小鳥の置物が目に映った。

それは良く見ればカインの使い魔であり、ジークは状況を理解したようで大きく肩を落とす。


「……俺の時くらい、お前も本体で来いよ」


「あの部屋をそのままにしても良いなら、こっちに来るよ。確実にクーが連れ去られるけどね」


「……そっちに残っていてくれ」


ジークに正体がばれたカインは使い魔を飛ばし、シュミットの机の上に移動する。

その様子にジークは不満を漏らすが、カルディナを自由にしているわけにも行かない事に気が付き、カインの気づかいに礼を言う。


「それでは話を始めよう」


「その前に俺から1つ質問して良いか? ……シュミット様はどこまで知っているんだ?」


2人の様子にシュミットは話がまとまったと理解するとジークに聞き取りに移る事を伝える。

ジークは頷きかけるが、この話し合いをする上でシュミットがエルトからどこまで聞かされているのか確認しておきたいと思ったようで手を上げて聞く。

シュミットは小さく息を漏らすとカインの使い魔へと目線を向ける。

それはカインにジークへとどこまで話すべきか意見を求めているようにも見え、ジークは自分の知らない事をシュミットが知っていると理解したようで大きく肩を落とした。


「えーと、とりあえず、ジークが知っている事ならシュミット様は全部、知っているよ。ノエルがドレイクだって事もルッケルでシュミット様を操ったのがノエルのお父さんだって言う事もラミア族の事もゴブリン族とリザードマン族の集落の事もね」


「……俺、話をする必要があるのか?」


「考えは様々だからな。ジーク=フィリスとしての意見を聞かせてくれれば良い」


カインはシュミットがジークと魔族の情報を共通している事を話すが、お互いに情報認識ができているならこの話し合い自体無意味だと思ったジークは眉間にしわを寄せる。

シュミットはジークの姿に苦笑いを浮かべると改めて、ジークの考えを聞かせて欲しいと言い、ジークは納得がいかないものを感じながらも小さく頷く。


「改めて意見って言われてもな。俺は魔族との共存に賛成しているし」


「反対するとノエルと一緒になれないからね」


「それは知っている。ノエル以外の話をしてくれ。ジークは魔族と人族の共存は可能だと思うか?」


ジークは頭をかきながら、魔族との共存は賛成だと答えるとカインはノエルの名前をだしてからかうように笑った。

シュミットはカインに茶化すなと言い切るとゴブリン族など他の魔族の話をするように言う。


「すべての魔族と共存できるかはわからないけど、どこかで線引きをして無駄な争いを起こさないのが現実的な考えじゃないか? 俺が出会った魔族では人族の肉を食う奴らはいないけど、本当に人族の肉を食う奴がいれば戦わないわけにはいかないし」


「……すべての魔族との共存は無理だと言いたいわけだな」


「価値観が違うから仕方ないとは思う。でも、それが『魔族を滅ぼしてしまえ』にはつながらないだろ? 話し合いで解決する問題があるなら話し合いにするべきだ……言葉は頭が良い人族が覚える事、前提で、俺にはこれ以上は無理だ」


ジークは少し考えると自分の考えを口に出す。

それはノエルの言うすべての人族と魔族が手を取り合っていける世界では無く、話し合いができるところからやって行こうと言う現実を見た答えである。

ジークの言葉にシュミットはしばし考えるように目をつぶった。


「……現実問題、ハイムが魔族との共存を宣言したら他国との関係はどうなると思う?」


「他国? ……1番問題になりそうなのはザガードだよな?」


「それ以外にもあるけどね。1番関係が悪いのはザガードかな? 後は友好的でも魔族との共存となってしまえば関係の悪化、国内でも内乱があるかもね」


目をつぶったまま、シュミットは他国との関係の事を聞く。

ジークはあまり他国の事を知らないが、リュミナの事やノエルの故郷がザガード国内にあるような事も聞いているため、1番にザガードの名前が頭に浮かぶ。

カインはジークの言葉を肯定すると他にも考えられる事を述べて行き、多すぎる問題にジークはどうして良いのかわからないのか困ったように頭をかいた。

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