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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
720/953

第720話

「邪魔ですわ!!」


「……どうして、見境が無くなるかな? そういう事をやっているとまた、クーに嫌われるぞ」


「……クーちゃん、待っていてください」


ジークがクーを連れてワームに戻るとカルディナの顔はクーを見て喜色に満ちる。

彼女の様子にクーは怯み、ジークの背後に隠れるとカルディナはジークを威嚇し始め、彼女の様子にジークは肩を落とす。

クーに嫌われてしまうのだけは我慢できないカルディナは1つ深呼吸をすると1度、部屋から出て行ってしまう。


「……どこに行ったんだ?」


「餌付け用のお菓子でも取りに行ったんじゃないかな?」


カルディナがいなくなった事でクーは警戒を解いたのかジークの頭の上に降りる。

ジークはカルディナの目的がわからずに首を捻っているとカインは彼女が何をするつもりか察しがついているのかくすくすと笑っている。


「クーちゃん」


「幼竜だと?」


フィアナはクーの名前を呼ぶとクーはフィアナの事は好きなのかジークの頭の上から、彼女の手の中に飛んで行く。

その姿にジークはカルディナに見られると面倒な事になるなと思ったようで小さく肩を落とす。

アノスは初めて見る竜の姿に驚きが隠せないのかクーの顔を覗き込む。

それはアノスだけではなく、多くの兵士達も同じだったようで遠目で噂話を始めている。


「カイン、ミレットさんから提案があって」


「オクスも夕食に呼ぼうって事だろ。良いよ」


「……簡単だな」


アノスや兵士達の様子など気にする事無く、ジークはミレットと話した事をカインにしようとするがカインは予想がついていたようですぐに頷く。

彼の返事にジークは納得がいかないものを感じたようで大きく肩を落とす。


「……なぜ、幼竜を育てているんだ?」


「なぜって言われても困る。拾った卵が竜の卵だっただけだ」


アノスはクーを観察した後、幼竜であるクーをジークが育てている理由を知りたいようで眉間にしわを寄せて聞く。

クーを育てているのは偶然が重なった結果であり、なんて答えて良いのかわからずに苦笑いを浮かべる。


「……この幼竜は国に献上するべきではないのか? 育てて騎竜にでもすれば式典などで王族の権威を示せる」


「それを強制させる理由はないですね。それにエルト様もライオ様もクーに関しては何も言わないですしね」


「育てる許可を取っていると言う事か?」


王族の権威を示すためにも希少な竜は国で管理する必要があると言うアノス。

カインは今の段階ではクーを国に収める理由はないと言い、アノスは両王子から信頼の厚いカインの言葉に一先ずは納得したようで小さく頷く。


「許可と言う事ではないでしょうけどね。クーが自分から協力したいと言えば別だろうけど」


「……幼竜に選択の余地などあると思うのか?」


「むしろ、エルト王子もライオ王子もクーの意志に任せるだろうけどな」


カインは少し考えるようなそぶりをして言うがクーの意志などアノスは必要ないと思っており、眉間にしわを寄せる。

ジークはフィアナの腕の中にいるクーを呼び寄せるとクーの鼻先を指でなでながら言う。


「そんなわけがあるか」


「クーにだって意志はあるだろ。それを無下にするような事を2人はしない。2人に助けて貰ったのにそんな事もわからないか?」


「それは……だが、俺の時とは状況が違うだろ」


鼻先を撫でられて気持ちよさそうにのどを鳴らしているクーを見ながら、ジークは2人の性格を思い出せと言う。

アノスはエルトとライオのおかげで厳罰された事もあるため、頷きかけるが人族と竜では状況を重ねてはいけないと思ったようで眉間にしわを寄せた。


「少なくともクーは嫌いな人間を背に乗せるように成長するとは思えないからね。少し様子を見ようと思っている可能性もあるかもね」


「と言うか、クーを王都に献上って事になったら、いろいろと面倒だろうからな」


「少なくともノエル、セス、カルディナ様を敵に回す可能性があるからね。2人も簡単にはできないと思うよ」


クーの成長を見届けて協力を仰ごうと考えている可能性も否定できないと言うカイン。

ジークはクーを取り上げられた時の女性陣の反応が怖いようで大きく肩を落とす。

カインはエルトとライオが協力者の女性陣を敵に回したくないと考えている事を理解できているようで苦笑いを浮かべるとジークも同感なのか困ったように頭をかいた。


「……そんなわけがないだろ」


「女性陣の勢いは怖いんだよ。アノスだって理解できるだろ」


「それはわからなくもない……」


わずかな臣下や民が反対しても王族ならば命令ができると言いたいアノスだが、男性陣は女性陣に押し切られてしまう事をここ数日で理解したためか彼の眉間にはくっきりとしたしわが寄る。

眉間にしわを寄せたまま、アノスはフィアナへと視線を向けると彼女は睨まれたと思ったようで身体を小さく震わせて距離を取った。


「……威圧するなよ」


「そんなつもりはまったくないのだが」


「とりあえず、眉間のしわをどうにかしろ」


2人の様子にジークはため息を吐くとアノスは相変わらず、フィアナにここまで怖がられる理由がわからないと言いたいようでため息を吐く。

しかし、さらに眉間にしわは深くなって行き、フィアナは怒鳴られると思ったのか後ずさりをして行き、ジークはアノスに怖がられている理由をどうにかしろと言う。


「……ああ」


「フィアナもいい加減、怖がるなよ。アノスの眉間のしわはいつもの事だろ」


「そ、そうですね」


ジークは2人の間に割って入るとフィアナは自分を落ち着かせようとしているのか大きく深呼吸をする。

彼女の様子にアノスは納得のいかないものを感じながらもこのままではいけないとも思っているようで眉間のしわをほぐそうと思っているようで指で眉間を揉む。


「クーちゃん、お待たせしました」


「……うるさいのが戻ってきたな」


「クーちゃん、見てください。ワームで有名なお菓子ですわ。ミレットさんのお菓子にも引けを取らないですわ」


その時、部屋のドアを勢いよく開けてお菓子を抱えたカルディナが戻ってくる。

彼女の姿にクーは警戒するような視線を向けるとカルディナはクーの興味をそそりそうなお菓子を手に取り、クーの口元に運ぶ。


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