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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第718話

「行く気がないなら、またの機会にしようか」


「またの機会があるかはわからないけどな……そう言えば、爺さんはジオスやルッケルにも冒険者を出して俺の事を調べさせているんだろ。フォルムは大丈夫なのか?」


床に転がされたフィーナを見下ろしながら、今回はジークとギムレットを会わせるのを諦めたようでカインは小さくため息を吐く。

その言葉にジークは苦笑いを浮かべると疑問に思ったようでフォルムにもギムレットの息のかかった冒険者がいるのではないかと首を捻る。


「確かにそうだな……」


「ガートランド商会のステムってバカも来るんだから、フォルムにもいる可能性は高いよな?」


「大丈夫じゃないかな?」


アノスはギムレットの説得を無理と判断しており、ジークと接触させる事には否定的なため、難しい表情をして頷く。

ジークは以前にフィーナへと求婚しにフォルムに現れたステムの顔を思い出したようで頭をかくがカインは特に心配した様子もない。


「……何の根拠があるんだ?」


「色々とね」


「俺には言えないと言う事か……」


アノスは怪訝そうな表情で聞くが、カインはいつもの通り胡散臭い笑顔で返す。

その笑顔にアノスはイオリア家とガートランド商会が繋がっているため、仕方ないとは思いながらも信頼されていないと判断する。

カインの自分への不信感にアノスは腹の内を隠す気はないのか舌打ちをし、アノスの様子にフィアナは彼がフィーナのように床に転がされると思ったようでオロオロとし始める。


「言えないと言うか……聞いたら、戻れなくなりますけど良いですか?」


「……」


「カイン、フィアナが泣きそうになっているぞ」


カインは小さくため息を吐いた後、一呼吸置くと視線を鋭くして問いかけた。

彼の変化にアノスは威圧されたのか1歩後ずさり、フィアナは怯えるように身体を震わせる。

ジークはカインがそこまで威圧する意味がわからないと言いたいのか大きく肩を落とすとカインは表情を元に戻す。


「フィアナ、悪かったね。そんなに怯えなくても良いよ」


「は、はい。私こそ、怖がってしまい申し訳ありません」


「……戻れなくなるとはどういう事だ?」


カインに謝られてフィアナは怖がってしまった事が申し訳なく思ってしまったのか頭をさげた。

アノスはカインに威圧されたのが悔しいのか、更に眼光を鋭くして問い返すが先ほど威圧されている事もあり、若干、情けなく見える。


「最後まで付き合って貰う事なるって事ですよ。その上で自分や家の利でこちらを裏切る気になったら……」


「だから、威圧をするな」


「はいはい。アノスはイオリア家と決別して騎士としての本懐を遂げたいかも知れないけど、ここに居るすべての兵達はそうは思っていない。自分の大切なものの方が大義や国より、大切な人間はいるだろうからね。国家転覆とかは考えていないから、無理に首を突っ込む必要はないよ」


カインは笑顔で答えるが、徐々に彼の放つ圧力は大きくなって行く。

その様子にフィアナは後ずさりをして行き、ジークはカインの様子に大きく肩を落とした。

カインは小さくため息を吐くと自分達の話に耳を傾けている兵士達がいる事に気づくように言う。

彼の言葉でアノスは周囲を見回すと兵士達と目が合ったようで聞き耳を立てていた兵士達は気まずそうに視線をそらす。


「……情けない」


「カイン、納得いってなさそうだぞ」


「そうだね。覚悟があるなら、後でフォルムについてきたら良いよ。そこで話そう」


アノスは視線をそらした兵士達をバカにするように舌打ちをすると自分は違うと言いたいのかカインを睨み付ける。

ジークはため息を吐くとカインは本気ならついて来いとアノスを挑発するように笑い、アノスは逃げる気などないと大きく頷く。


「あれ? ジークは反対しないんだね」


「反対も何も腹芸できるような器用な人間じゃないだろ。決めたらまっすぐと進む人間に何か言っても無駄だろうからな。俺はフィーナみたいに周りが見えなくはない」


「そうだね。起きていたら猛反対しただろうね」


アノスをフォルムに誘った事にジークが何も言わなかったためか、カインは首を捻った。

ジークはカインが完全にアノスを共犯者に仕立て上げる気だと判断したようで床に転がっているフィーナを見てため息を吐く。

カインもジークの意見には賛成のようであり、フィーナへと視線を移して苦笑いを浮かべる。


「と言う事で、アノスとフィアナはこの後、フォルムね。セスが戻っていろいろと準備をしてくれているから」


「わ、私もですか!?」


「フィアナはすでに片足を突っ込んでいるからな」


カインはシュミットからの聴取が終わった後のアノスとフィアナの予定を決めるが、フィアナは自分には関係ないと思っていたようで驚きの声を上げた。

ジークは苦笑いを浮かべると隣で寝息を立てているノエルを指差し、フィアナはジークの行動でなんとなく状況が理解できたのか小さく頷く。


「私も行きますわ!! クーちゃんと遊ぶために」


「……いや、カルディナ様にはやる事があるだろ」


「カルディナ様がいなくなると緊急時の連絡ができませんからね」


カルディナはクーに会いたいためか、ジーク達についてくると拳を握り締めて言うが、彼女には彼女の仕事があるため、ジークは大きく肩を落とす。

ジークの言い分がもっともなためか、カインは苦笑いを浮かべて頷くとカルディナは何かクーに会う方法はないかと考え始める。


「……それなら、この男が残れば問題ありませんわ。元々、ルッケルとの連絡係もこの男の仕事ではありませんか?」


「確かにそうなんだけどな。カルディナ様も仕事ってそれだけじゃないだろ?」


「ジークは政治的な話はまるで解りませんから」


カルディナはジークをシュミットの屋敷に残せば丸く収まると考えるが、それは浅慮な考えでしかなく、ジークとカインは苦笑いを浮かべる。

しかし、カルディナは諦めきれないようでジークに突っかかり始め、カインはこのままではカルディナに仕事をさせるために支障をきたすと考えたようでジークに1度、フォルムに戻り、クーを連れてくるように指示を出す。

ジークは仕方ないと大きなため息を吐くとノエルと床に転がったフィーナを連れて1度、フォルムに戻る。


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