第717話
「……何をしているんだい?」
「ノエルさん、どうしたんですか?」
「仕方ないだろ……酔っぱらい2人に絡まれたんだから」
ジークはノエルを背負ってシュミットの屋敷に戻ると2人の姿を見つけたカインは眉間にしわを寄せた。
フィアナはジークの背に乗っているノエルに何かあったと思ったようで彼女の顔を覗き込むと彼女は小さく寝息を立てている。
食事の途中でノエルはソーマとセレーネに酒を飲まされたようでジークはため息を吐くと空いているソファーに彼女を下ろす。
「ジーク、買い物はどうしたの?」
「飯の途中でソーマとセレーネさんに捕まった」
「何でよ?」
ジークは手ぶらであり、フィーナは首を傾げるとジークは力なく笑う。
しかし、買い物に行った過程でどうして2人に出会ったかわからないフィーナは更なる質問を返す。
「カインが買い物だけをさせると思わなかったから、メモに裏がないかと思って2人に意見を求めに行ったんだ」
「なるほどね」
「酷いね。せっかく、デートでもしてきて貰おうと思ったのに」
ジークは隠す事無く、カインのメモを疑ったと言い、フィーナはジークの行動は正しいと言いたいのか大きく頷いた。
彼の反応にカインは不満だと言いたげに大きく肩を落とすが、この屋敷に残っていたメンバーはそれが嘘だと知っているためか眉間にしわを寄せる。
「やっぱり、裏があったのか?」
「何もないよ」
「……胡散臭い」
周囲の反応にジークはカインが何か企んでいる事は理解できたようで眉間にしわを寄せた。
カインはため息を吐くが、そんな彼の表情にジークは買い物に行かなくて正解だと思ったようで大きく肩を落とす。
「それじゃあ、ノエルは預かるからジークは買い物してきてよ」
「断る。メモを見たけど、ワームで買う必要のないものだろ」
「今度にするか……」
ジークとギムレットを接触させてみたいカインはジークに買い物に戻るように言う。
メモを見る限り、ワームで購入する利点はなく、それ以外にもカインの様子からおかしな事に巻き込まれるには明白であるため、ジークは拒否するとノエルの隣に腰を下ろす。
その様子にカインは小さく肩を落とすと考えを調節しようとし始めたようで眉間にしわを寄せた。
「……あいつはまた何ろくでもない事を企んでいるんだ?」
「なんか、あんたと爺さんを会わせたかったみたいよ」
「爺さんと?」
カインが考え事をしている姿にジークはイヤな予感がしているのか眉間にしわを寄せているとフィーナはタネバラシをしてしまう。
予想していなかった言葉にジークは首を捻るがギムレットの事は割とどうでも良いようで寝息を立てているノエルの頬を指で突く。
「もしかしたら、爺さんの暴走を止める手段が見つかるかも知れないって」
「……無駄だと思うがな」
「だよな。俺も無駄だと思うぞ」
フィーナは簡単に説明をするとアノスはギムレットがジークと会っただけで考えを変えるとは思えないようでため息を吐いた。
話しに聞くギムレットの情報からはカインの思惑通りにならない事は明らかであり、ジークは頭をかく。
「でも、もしかしたらと言う事もありますし。ジークさんもおじいさんに会ってみたいと思いませんか?」
「いや、まったく思わない」
「……どうしてですか?」
フィアナは家族の繋がりと言うものもあると思ったようで遠慮がちに手を上げる。
しかし、ジークは会った事のない人間にまで情を寄せる気にはならないようで首を横に振り、フィアナはいつものジークと違うと思ったのか首を捻った。
「いや、爺さんって言っても知らない人だしな。村の年寄達の方が身内っぽい」
「……だから、会わせたいって言っているんじゃないですか?」
「身内だからって説得できるもんじゃないだろ。説得できているなら、レギアス様がやっているだろうし、アノスの家だっておかしな事になってないだろうからな」
ジークは改めて、ギムレットには今のところ何も情はないと言い切り、フィアナは力なく笑う。
彼女の様子にジークは苦笑いを浮かべると身内だからと言ってもどうにもならない問題はあるのではないかと答える。
「……身内だからこそ、こじれる問題だってあるだろ」
「それに関して言えば同感ですわ」
「カルディナ様はもう少し、おっさんと仲良くしてくれ。俺達は巻き込まれたくない」
アノスはジークの意見に賛同したようで小さな声でつぶやくと実の父親であるラースを嫌っているカルディナは大きく頷く。
ジークはラースとカルディナの親子の問題に何度か巻き込まれているためか、大きく肩を落とすがカルディナは彼の言葉に頷く事はできないようで舌打ちをする。
「……俺と爺さんの事を考えるより、先にオズフィム家の関係修復の方が先じゃないか?」
「オズフィム家は意見の違いはあるけどハイムの事を考えているからね。強欲爺やイオリア家の現当主とは違うよ」
「そんなものか?」
彼女の姿にジークはエルア家より、オズフィム家の方をどうにかした方が良いと考えたようで大きく肩を落とすと話を聞いていたのかカインはジークの考えを否定する。
ジークはあまり良くわからないようで首を捻り、カインは小さく頷いた。
「そんなもんだよ」
「そう思うなら、俺と爺さんを会わせようとするな。俺はレギアス様と対立したくないぞ」
「ほら、ジークが爺さんをしばけば丸く収まるかなって」
ジークはカインの言っている事がやっている事を違うと思ったようで頭をかく。
カインは口元を緩ませて言うが、その言葉の本心はわからないため、ジークは疑いの視線を向ける。
「……しばかないし、それをやったら、めちゃくちゃにならないか?」
「家族なんだ。時にはぶつかり合う事も大切だよ」
「……お前とフィーナはもう少し腕力じゃなく、話し合いで解決した方が良いと思うぞ」
ジークの疑いの視線を交わすようにカインは笑顔を見せるが、その笑顔に胡散臭いものしか感じないジークはため息を吐いた。
「俺は話し合いをする気はあるけどね。いかんせん。フィーナには言葉が通じないから」
「……バカだからな」
「……あんた達、ブッ飛ばされたいの?」
自分とフィーナの間で話し合いにならないのは全てフィーナが悪いと言い切るカイン。
彼の言葉にはジークとアノスは全面的に賛成のためか、眉間にしわを寄せた。
3人の言葉はフィーナにとっては我慢ならないものであり、彼女は拳を握り締めるがすぐにカインに制圧され、床に転がされてしまう。