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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
716/953

第716話

「……まったくわからない。どう見ても、ただの買い物メモだね」


「本当にただのメモなのか? ……いや、そんなわけがない」


「……お前ら、朝からなんで頭を抱えているんだ?」


セレーネを加えて3人でカインのメモを前に頭を抱えていると大欠伸をしたソーマが現れた。

ソーマは隣のテーブルからイスを1つ引き寄せると同じテーブル席に腰を下ろすと店員を呼んで酒を注文する。

店員の返事にセレーネも自分の分を追加し、店員はカウンターに向かって行く。


「頭痛ですか? ジークさん、お薬は持ってきてないんですか?」


「気にするな。ただの二日酔いだ」


「……それなら、酒を頼むな」


ソーマは頭が痛いのかこめかみを指で押す。

その仕草にノエルはソーマの不調を感じ取ったようで心配そうな表情をする。

彼女の優しい言葉にソーマは体調不良の原因を話し、原因がわかった上でまだ酒を飲むつもりの彼の姿にジークは大きく肩を落とす。


「二日酔いには向かい酒だろ?」


「そうだね」


「……この酔っぱらいども」


その時、店員が酒を2杯運んできて、2人の前に置く。

2人はすぐにカップを合わせて酒をあおり、その様子にジークは呆れたようにため息を吐く。


「それで、朝から何をしているんだ?」


「……朝からって、もう昼だろ。ノエル、何か頼むか?」


「みなさんを待たせていますし、ゆっくりお昼を食べていても良いんでしょうか?」


一気に酒を飲み干したソーマの顔はすっきりとしており、テーブルの上にあったメモを覗き込む。

ソーマがホールに現れたのはすでに昼にあり、ジークの腹は空腹を告げているのかノエルに昼食について聞く。

ノエルもお腹は減ってきたようだが、シュミットの屋敷にフィーナ達を残してきているため、ゆっくりと昼食を食べるのは悪い気がしているようで困ったように笑う。


「良いんじゃないか? カインも買い物デートして来いって言っていたわけだし」


「買い物デート?」


「そう。カインがジークとノエルに買い物デートをして来いって、そのメモを渡したみたいなんだけど、絶対に裏があると思うんだよね」


ジークは気にするなと言うとメニューを広げて彼女が選びやすいように自分から料理を探す。

ノエルは小さく頷くとジークと一緒にメニューを覗き込み始めるとソーマは手にしたメモをもう1度、見て首を捻った。

彼の様子にセレーネはジークとノエルがこの店にいるのはカインが何かを企んでいるせいだと言う。


「……カインだからな。何か企んでいる可能性もあるけど、本当に言葉の通りって可能性はないのか?」


「逆に聞く。あると思うか?」


「……可能性はかなり低いと思うがないとは言えないだろ」


ソーマはメモの内容を吟味してカインの言葉がそのままの意味ではないかと聞く。

しかし、すでに完全に裏があると考えているジークは眉間にしわを寄せて聞き返し、ソーマはカインを疑いすぎているジークを見て大きく肩を落とした。


「かなり低いけど……あるのか?」


「あると思いますよ」


「後はメモには何もないとして、これを買うまでの過程に何かあるかだな」


ジークは首を捻るとノエルは苦笑いを浮かべて頷く。

彼女の言葉にジークはソーマからメモを取り戻すとメモに書かれた物が売られている店で何かある可能性を考え始める。


「……あれだな。ジークがここまでカインを疑う理由がわからない」


「ソーマ、カインの事なんだから、疑って当たり前でしょ。それがわからないなんて相当酔っているわね」


「あ、あの、みなさん、言いすぎじゃないかと、後、お昼から飲む量じゃないと思います」


ソーマは店員に酒の追加を頼みながらジークにカインを信じるように言うが、言っているそばから自分の言葉が嘘くさいと思ったようで大声を上げて笑うとセレーネも同調するように声を上げると店員に向かい樽で酒を持ってくるように注文する。

2人の様子はすでに完全な酔っぱらいであり、ノエルはどうして良いのかわからないようで困ったように笑う。


「とりあえず、ここで考えていても始まらないし、飯を食ったら、このメモのものを探して見るか? ソーマ、セレーネさん、これくらいの値段で買えそうな店って知っていますか?」


「そうだな……なあ、ジーク」


「知っているのか?」


ジークはカインの企みがメモではなく、店の方にあると結論付けたようで2人に良い店を教えて欲しいと言う。

ソーマは少し考え込むと何かあったのか、ジークの名前を呼んだ。

それをジークは店に心当たりがあると思ったようで早く教えろと言いたそうに聞き返す。


「何で、俺は呼び捨てで、レーネはさん付けなんだ? おかしくないか?」


「……どうでも良いだろ」


「いや、なんか気になった。俺の方が年上だぞ。冒険者として名前だって売れているぞ。尊敬しろ。褒め称えろ」


ソーマの口から出た言葉はどうでも良い事であり、ジークは眉間にしわを寄せる。

ジークの反応が不満なのかソーマは口を尖らせ、ジークは年甲斐のない言葉を吐く彼の姿に眉間にしわを寄せた。


「……お前を尊敬するのはなんかイヤだ。だいたい、尊敬して欲しいなら、こんな昼間から酒を飲んでないで働け。住所不定無職の酔っぱらい」


「お前だって、最近は似たようなもんだろ」


「絶対に違う。一緒にするな」


ジークはバカな事を言うなとため息を吐く。

その言葉は相変わらず、冒険者をどこか嫌悪している感じであり、ソーマは嫌がらせなのかジークの怒りを買うように彼に向かい同類だと言うとジークのこめかみには青筋が浮かび始める。


「ソーマ、酒の席でくだらない事を言うんじゃないよ」


「まぁ、冗談だけどな。店はいくつか教えてやれるけど、期待に答えられるかはわからないぞ」


「ありがとうございます。助かります」


ジークの変化にセレーネはため息を吐くとソーマをなだめる。

元々、ソーマもジークをからかう冗談だったようで苦笑いを浮かべるとジークからメモを取り上げて心当たりのある店を書いて行く。

ジークは冒険者扱いされた事で不機嫌そうにしているためか、ノエルは深々と頭を下げる。


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